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黒竜の生き残りが観た世界  作者: 琶音(ハオン)
6/9

黒竜、初めてを体験する1


黒竜---


四竜の一つに数えられる竜である。

皮膚の色が黒いことから一般的に“黒竜”と呼ばれている。

黒竜は他種族との交流を嫌うため、詳しいことはあまり知られていない。

かつては暗黒の力を有するとされ、恐れられていたという記述もあるが、それも真実であるかは定かではない。



クォーツはレダ城の図書館で黒竜に関するの本を調べていた。

しかし、どの本にも黒竜に関する記述は詳しく書かれておらずに思わずため息が出た。


「黒竜どころか、黒竜以外の四竜すらも詳しくは記されていないか…」


ふと何気なく窓の外を見ると、日が傾きかけていることに気づいた。


「もうこんな時間か…。今日はこのくらいにして休むかな」


クォーツは立ち上がると本を片付け始めた。






***





謁見の間を出たザクロとシエル。


謁見の間を出るとジェードが立っていた。

ジェードはシエルの姿を確認すると、頭を下げた。

どうやら彼はシエルを待っていたようだ。


「ジェード、準備は出来ているか?」


シエルがそう尋ねるとジェードは「はい」と言って頷いた。


「そうか。俺は部屋に戻っているから後は頼んだぞ」

「かしこまりました」


二人の会話が分からないザクロは首を傾げていた。


すると突然、ジェードはパンッパンッと手を二回叩いた。

次の瞬間、どこからともなくメイド服を着た若い女子が四人現れた。

突然現れたメイドたちに驚くザクロ。

ザクロの驚きはそれだけではなかった。

メイドたちはザクロに近づき、手足を掴み持ちあげた。


「なっ!!一体なんのつもりだっ!」


どうにか解放されようと暴れたが、思いのほかメイドたちの力は強く、拘束は解けなかった。


「毎日お仕事で鍛えてますからね」

「あまり見くびらないでくださいまし」


暴れるザクロに対してメイドたちはそう言った。

簡単には解放されないと知りつつもザクロは何をされるか分からない不安に暴れるのをやめない。


「悪いようにはしないから安心しろ」


シエルは暴れるザクロを見て、安心するように言ったがそれでも暴れるのをやめなかった。

ため息をついたシエルはジェードに

「あとはまかせた」

とだけ言うとその場を立ち去った。


立ち去るシエルの背中を見つめながらジェードはかしこまるとメイドたちの方を向く。


「では頼む」

「おまかせください」


メイド達はザクロを掴みあげたまま移動を始めた。


しばらくメイド達に拘束されたままザクロはとある部屋につくとようやく解放された。

やっと安心できると思ったザクロだったが、そう思ったのは一瞬だけだった。


「では、お覚悟くださいまし」


メイドの一人がそう言うと、メイド達がジリジリと近づいてくる。

それに恐怖したザクロは逃げようとしたが、逃げるより早く両腕を掴まれた。


「ひっ!」

「大丈夫ですわ。何も心配いりません」


怯えているザクロを安心させようと口にした言葉だったが、ザクロにはそれが余計に恐怖を覚えた。


次の瞬間、メイドはザクロの着ている服を無理やり脱がせた。

その後、メイド達に

やられた事に対し、ザクロは思わず悲鳴が出たそうな…。






***




体を清め、着替えたシエルは自室で報告書をまとめていた。

すると、コンコンと扉を叩く音がする。

筆を走らせる手を止めると、顔を上げてから「開いている」と言って入室ゆ許可する。


「失礼します」


扉を叩いた主はジェードだった。

ジェードは部屋に入るとシエルに一礼をした。


「彼女の準備が出来ました」


ジェードがそう言うと、ザクロが部屋に入ってくる。

すると、ザクロの姿を見たシエルは思わず目を丸くした。


袖にフリルのついた白いロングワンピースに赤いヒールのついた靴を身に付け、ボサボサだった髪は綺麗に清め整えられていた。

長い髪は後ろで一本の三つ編みにされて赤いリボンで結ばれている。


少し前のみすぼらしい姿の面影は全くなかった。


「いかがですか?」


ジェードの声にハッとしたシエルはそっぽを向きながら顔を赤らめてギリギリ相手に聞こえるぐらいの声で「悪くない」と言った。



しかし、ザクロは別に貶されているわけでもないのにどこか不機嫌そうだ。

明らかに表情に出ていた。


「せっかくシエル様が褒めているのです。もう少し嬉しそうな顔をしてはいかがですか?」

「褒めているのか、それは?」


自分の主人が褒めているのに明らかに不機嫌な顔をしているザクロに対し、少しイラついたジェードは少し口調を強めに言った。

それに対してザクロは果たして“悪くない”というのは褒めているのか疑問に思い、思わず言い返したのだった。


「何が不満なのですか?シエル様のお陰で身を清めれただけでなく、そのような高級品を身にまとうことが出来だのですよ。もう少し喜びなさい」

「この衣服は値が張るのか」


ジェードの言葉に改めて自分の着ているワンピースを見た。

しかし、今までこういったことには興味を示さなかったザクロには、このワンピースの価値観は全く分からない。


「で、何が不満なんだ?」


シエルの声にワンピースを観察していたザクロは顔をあげた。


「こんな格好をさせられたことに不満がある。あと、先ほど無理やり体の隅々まで洗われたことも不服だ」


そう不満を口にしたザクロは、少し前のことを思い出した。


湿気た部屋まで連れてこられたザクロは無理やり衣服を脱がされ、ぬるま湯をかけられた。

そして、ハーブの香りのする白い液体を頭や体に付けられたら、それを隅々まで塗られた。

やがて泡がたつと、またぬるま湯をかけられた。


今まで身を清める行為は、川や湖で水をかけるぐらいだったザクロにとっては多少の恐怖を感じていたようだ。


それを5回くらい繰り返されるものだから、ようやく湿気た部屋から出された時は緊張と恐怖で疲れ切っていた。

濡れた体をフワフワと触り心地の良い布で体中の水分を拭い去ると、今度は見たこともない、無駄に小綺麗な服を沢山、着させられた。

それが終わると、髪を整えられ、結わされた。

キラキラとした耳飾りやら首飾りも付けられそうになったが、流石にそれは邪魔になるので断った。


…今考えれば、洗ったり着飾ったりした下働きした4人の女達は終始、楽しそうだった気がした。



「この服は動きにくい。私が着ていた服に着替えたいのだが、どこにあるんだ?」



ザクロは、着せられた服に不満があるようで、もともと着ていた服を要求した。


「あの汚い服なら処分いたしました」

「処分した?」


ジェードが服の行方を答えたが、服は既に亡き物になっていたようだ。


「ボロボロで、着られる物ではなかったのでね」


ザクロは一瞬だけ残念そうな顔をしたが、すぐに「仕方ない」とため息混じりに呟いた。


そんなザクロの反応が意外だったようでジェードはキョトンとした。


「意外ですね。もっと食いついてくるのかと思ったのですが…。ああなるまで着込んだのですから気に入っていたのでは?」

「気に入っていたかと聞かれれば多分そうなんだろうが、既に無いものを求めても仕方ないからな」


ザクロはあっさりと服は諦めた。

しかし、着ているワンピースを着替えたいという要求は諦めていないようで、再び替えの服を要求した。

それだけではなく、シエルを睨みながら更に文句も口にしたのだった。


「だいたい、なぜこんな動きにくい服なんだ?もっと他にあるだろう」

「服の選択はジェードに任せていたから、俺は知らないぞ」


どうやらシエルは、“着替え”を命令しただけで、細かいところは全てジェードに一任していたようだ。

ザクロはジェードがワンピースを選択したと知ると、今度はジェードを睨んだ。

しかし、ジェードは首を横に振って否定した。


「私もメイド達に命じただけなので、服は選択していません」


シエルでもジェードでもないとすれば…


「あのメイド4人のようですね」

ザクロを着替えさせた4人のメイドは、ザクロを着せ替え人形のように楽しみながらワンピースを選択したのだった。

ザクロはワンピースを選んだ人物が分かると深くため息をついた。


「明日には別の服を用意するから今日のところはそれで我慢してくれ」


シエルにそう言われ、ザクロはとりあえずは…ということで渋々納得した。


すると、コンコンと部屋の扉を叩く音がした。

部屋の主であるシエルが返事をすると、扉が開き、メイドが頭を下げながら入室した。


「お食事の準備が整いましたが、今日はどちらで召し上がりますか?」

「今日は食堂で食べる」

「かしこまりました」


メイドはそれだけを確認すると再び頭を下げてから退室した。


「それじゃあ行くぞ」


シエルはそう言って、席から立ち上がった。

どこかに行こうとするシエルにザクロは首を傾げる。


「行くってどこに?」

「今の話、聞いてただろ。食事の時間だから食堂に行くぞ」

「食事?」




投稿が遅くなってすみません。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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