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黒竜の生き残りが観た世界  作者: 琶音(ハオン)
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黒竜、レダ王国へ

投稿が遅くなってすみませんでした。


黒竜ちゃん、レダ王国に入国です。

レダ王国---

中央大陸の南東側に存在する大国。

過ごしやすい気候で自然に恵まれており、食べ物や水が豊富である。

一方で鉱石には恵まれていない為、レダ王国は同盟国のミディア公国から鉱石を取り入れている。

現在、レダ王国を治めているのは【リベリオン=フォン=レダ=アルフォーツ】である。





ザクロはレダ王国の中心部にある首都に向かう馬車の中で同じ馬車内に座っているクォーツからレダ王国の説明を簡単に聞いていた。

クォーツの隣にはシエルも座っていてザクロは二人とは向かい合って座っていた。

彼女は手枷や魔力を抑える魔力制御装置の首輪はちゃんと外されていた。


「そのリベリオンという王がシエルの父親ということか」

「そうなるね」


クォーツは馬車についている窓から外を眺めた。

すると、木々の間から城の外観が見えてきた。


「城が見えてきた。そろそろ首都に着くよ」


クォーツがそう言ったので、少し気になったザクロも窓から外を覗いた。


ザクロの目に映るのは、緑豊かな大地に建つ大きく美しい城。

まだ城とは距離があるはずなのに、遠目からハッキリと城を見れることからその城の大きさをより一層、思い知らされる。

彼女はその外観に目を奪われ、しばらく城を眺めていた。


「昨日いた城よりも随分と立派だな。首都にあるからか?」

「昨日いた城?」

「私を地下牢に閉じ込めたあの建物だ。あれは城だろう?」


ザクロはそう言いながら昨日のことを思い出す。

ザクロの言葉に少し疑問を抱いたクォーツだったが説明を受けて何か気付いたようだ。

軽くクスッと笑うと口を開いた。


「昨日滞在していた建物は城というよりは要塞だよ」

「城ではないのか?」


ザクロは城をちゃんとしっかり見たのはこれが初めてだった。

黒竜の谷にいた頃は谷から出ることはなかったし、黒竜王様を捜していた頃は気にすることもなかった。

帝国に捕らわれていた頃はそれどころではない。

城とは随分と大きいのだな。

竜化した自分なんかよりも随分と大きい…。

しかし、人は竜に比べて小さいのにあんなに大きな建物に住む必要があるのだろうか?

人とは不思議な生き物だ。


「どころで、さっきからずーっと考えこんでいるようだけど、どうした?」


ザクロが城を眺めていると、突然クォーツは隣に座っているシエルの方に顔を向けて言った。

クォーツの言うとおり、シエルは先ほどから一言も言葉を発せず何か考え込んでいるようだ。

気になったのかザクロも顔を外からシエルの方に向ける。

クォーツに言われてシエルは口を開いた。


「帰還命令が出たがら仕方ないとはいえ、ヴェッツ山脈をあのままにして良かったのだろうか…」

帝国を追い返したとはいえ、きっと帝国はまた攻めてくるだろう。


「だけど、しばらくは帝国も攻めてこれないはずだ」

「確かに帝国は攻めることはないだろう。


---お前が土砂崩れを起こしたおかげでな!」


シエルは怒っていた。


昨日、ヴェッツ山脈の要塞にて帝国が再び攻めてくる時に備えて警戒していたシエル。

だが、城に帰還するように上から命令が下ってしまったのだ。

いつ帝国がまた攻めてくるか分からないなか、このまま帰還するのが心配だった為にシエルは悩んだ。

すると突然ザクロは黒竜の姿になるとヴェッツ山脈の一番高い場所まで飛び、魔法で大量の水を出した。

すると当然土砂は流れる。そのせいで唯一安全に通れる道を土砂崩れを起こして塞いでしまったのだった。


半端ない土砂崩れな為、土砂を片付けるのには時間がかかってしまう。

他の道は獣道や傾斜がキツい道だったりと危険である。


それゆえに帝国は攻めてくることは出来ないのだ。



「道を無くせば帝国もヴェッツ山脈から攻めてくることはない」


勿論、ザクロに悪意はなかった。


「確かにそこから帝国が攻めてくる可能性は低くなったが、俺たちも使えなくなっただろ!」

「山脈から帝国に攻める予定があったのか?それは悪いことをしたな」


ザクロの返しにシエルは表情が固まり、モゴモゴと声を小さくして呟く。


「こちらから攻める予定はないけど…」


その呟きはザクロの耳には届かず、ザクロは頭に疑問符を浮かべた。

シエルは都合の悪いことをかき消すかのように首を横に振り、ザクロを指差した。


「とにかく、いざという時に困る!」

「分かった。次からは相談してから実行しよう」

「やけに物わかりがいいな」


シエルに悪いところを指摘され、素直に反省するザクロだった。


二人のやりとりをすぐ隣で微笑みながら見ていたクォーツは少し恐れていた。


---簡単に土砂崩れを起こしてしまえる黒竜の力に。


「(黒竜の力はまだまだこんなものではないはず。少し黒竜…いえ、について調べますか)」



一呼吸おいて落ち着いたシエルは「そういえば…」と言ってザクロにはなしかけた。


「黒竜の力は使わないんじゃなかったのか?」


先日の会話でザクロは“黒竜の力は使わない”と言っていたが、ヴェッツ山脈の土砂崩れに黒竜の力を使っていた。

言っていることと行動が矛盾していた。

それに疑問を抱いたシエルはザクロにそのことを問いかけた。


「私は“戦争には使わない”だけ」


その言葉は逆を言えば、“戦争以外には使う”と考えられた。

それを確認しようとシエルはザクロに問おうとしたとき-。


「まもなく城に到着致します」


外から声が聞こえた。

馬車を走らせていた御者が城にまもなく到着することを知らせてくれたようだ。


その声によりシエルはタイミングを失い、問いかけることは出来なかった。



しばらくして馬車の揺れがなくなった。

どうやら到着したようだ。

御者がシエルたちが乗っている荷台の扉を開けた。

シエルが最初に降り、続いてクォーツが降りる。

二人に習いザクロも降りようとしたとき、クォーツがザクロに手の平を向けて手を差し出してきた。

なぜ、自分に手を差し出すのか分からないザクロはキョトンとした顔をしてその手を見つめた。


「降りるのを手伝うよ」


ザクロの様子を見て、この手の意味を理解していないと分かったクォーツは付け足すようにそう言葉にした。

その言葉で理解をしたザクロは

「必要ない」

と冷たく断り、一人で馬車から降りた。

クォーツは残念そうに微笑むと手を下ろした。


ザクロは外の光に一瞬まぶしそうにしたが、すぐにその光に慣れると周囲を見渡す。


目の前には城の無駄に大きい入り口。

その左右には槍を持った兵士一人ずつが立っている。

背後を振り向くと、無駄に広い庭園があり城の頑丈な鉄の門が遠くに見える。

勿論、門の方にも見張りの兵士が門を挟むように左右に兵士が一人ずついる。

顔ゆ上に上げると、当然、視野には入りきらない程の大きな城が佇んでいる。

「(何もかもが無駄に大きい…)」


ザクロはその大きさに感心はしたものの同時に呆れてもいた。

ザクロがこの城に対し、そんな感想を抱いていると、執事服を身に付けた若い男がシエルに近づき、頭を下げた。


「お帰りなさいませ、シエル様」「ジェード、今戻った」


ジェードと呼ばれた男は挨拶を済ませると顔を上げた。


「シエル様、国王陛下が“黒竜を連れてすぐに謁見の間に来て欲しい”とのことです」

「すぐに、か…」


シエルは顔をザクロの方に向けるとザクロの体を隅々まで見回した。


薄汚れた体に着ている服もサイズの合わない一般的な庶民の服を着ていてそれもまた薄汚れている。

とても国王陛下へ謁見するには失礼な姿だ。

しかし国王はあくまで“すぐに”とのことなのでこのまま向かうしかないのだろう。


「仕方がない。

一応、謁見する前に汚れていることを伝えておくか」


そう言ってため息をつくとシエルはこれからの事を知らないザクロに近づき、


「これから陛下の所へお前を連れていく」


と端的に説明をした。

しかし、ザクロは嫌そうな顔をして「なぜ?」と問い返す。


「陛下にお前の事を伝えたら“一目見たい”らしくてな…」

「それで帰還した訳か」


ザクロとしては、あまり黒竜じぶんを人目には晒したくはなかった。

何故なら黒竜じぶんは嫌でも目立ってしまうのだから、人目に晒す機会は少なくしておきたい。

しかし、この城にいる以上、国王との対面は避けられない。

早いか遅いかの違いだ。

それに、これから世話になるのだから挨拶ぐらいはしておかないと失礼だろう。


ザクロは数秒の間に考え決めた。


「分かった。あまり気が進まないが国王と対面しよう」


そう言ったザクロの顔は相変わらず嫌そうだ。

ザクロの了承を得たシエルは次にクォーツの方を向いて話しかける。


「クォーツはどうする?一緒に来るか?」


シエルはクォーツのことも誘おうとするが、クォーツは首を横に振り断った。


「私は先に休ませてもらうよ」


クォーツはそう言って城の扉を開けて中に入って行った。


クォーツが城内に入ったのを確認すると、次にシエルはジェードに人差し指を自分の二回、自分の方に動かす。

その動きだけで察したジェードはシエルに近づき、自身の左耳を差し出した。

シエルはジェードにだけ聞こえるように耳打ちし、伝えたいことを伝えるとジェードから離れた。

ジェードはシエルの言葉を受け取ると「かしこまりました」と笑顔で言った。


最後にシエルは再びザクロの方へ顔を向けた。


「待たせたな。陛下の所まで案内するからついてこい」


シエルのその言葉にザクロが頷くのを確認すると、シエルは城への扉を開けた。


城内へと入っていくシエルに続いてザクロも中へと入って行った。





ここまで読んでいただきありがとうございます。


次回のお話はまだ執筆中です。

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