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黒竜の生き残りが観た世界  作者: 琶音(ハオン)
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黒竜の目覚め2

投稿が遅れて申し訳ありません。


私たち黒竜は多種族に対し警戒心が強いためか基本的には多種族と関わることはなかった。

黒竜が住まう谷で平穏な毎日を過ごしていた。


しかし20年前のあの日、魔族が我々黒竜に襲い掛かってきた。


基本的に魔族は魔族が住まう北の大地から出ることがないと聞いていた為、魔族が現れたときは驚いた。


私たちは必死に戦ったけど相手の数は多く、同族たちは一人また一人と倒れていった。私もここで倒れるのかと思ったが、仲間と共に死ねるならそれでもいいと思ってた。

だけど、黒竜王様はそれを許さなかった。

私を洞窟に連れてくると

「事が終わるまでここで隠れていろ」

と、私に言った。

当然、私はそれを嫌がった。

同族が戦っているのに私だけ安全な場所に隠れていることは出来ない。

戦場へと戻ろうとする私に黒竜王様は眠りの魔法をかけた。


それから…どうなったか分からない。


目が覚めた私はまだ覚醒しきっていない意識を無理やり目覚めさせ、急いで同族たちが戦う戦場へと戻った。


でも、既に事は終わっていた。

戦場は黒竜たちと魔族の亡骸しか残っていなかった。


私はこの場所で黒竜たちと死のうと考えたがあることに気付いた。


--黒竜王様の亡骸だけがなかった。


黒竜王様はまだ生きているのでは…?


私は黒竜王様が生きていると信じ、黒竜王様を捜すことにした。


それから20年--。


黒竜王様は未だに見つかっていない。

休むことなく、黒竜王様を捜していた為に体は弱まっていた。


それ故、油断していた。


竜の姿を帝国の人間に見られてしまった。


帝国は全力で私を捕まえにきた。

万全な状態なら逃げ切ることも容易かったが、弱り切った体ではマトモに飛ぶ事さえ出来ず、私は帝国に捕まってしまった。


帝国に捕られていた間はつらかった。

戦場で人を殺す事を命じられたが私はすぐに断った。

すると私を地下牢に閉じ込め、私を操る為、呪術をかけ始めた。

最初のうちは抵抗できたが、毎日のように呪術をかけ、死なない程度の拷問で私の精神と肉体は弱り切っていた。

逃げようにも魔力を封じられ竜の姿になることもできない。

次第に呪術にも抵抗できなくなっていき、呪術に完全にかかり操られた。





***




「後はお前たちの知る通りだ。

私は最後の抵抗で呪術に抗い、お前たちに救われた」


ここで黒竜の少女の話は終わった。

竜魔戦争を体験した少女の話を聞いてもシエルとクォーツの二人は特に驚くことはなかった。

なぜなら、伝え聞いた話と殆ど一緒だからだ。

四竜が魔族を監視しているという事も有名な話だった為、当然二人もそれを知っている。

話を聞き終った後、最初に言葉を発したのはシエルだった。


「魔族や帝国には随分と酷いことをされたようだが、復讐をしようとか考えていないのか?憎いとは思わなかったのか?」


シエルが少女の立場ならば魔族や帝国は憎いと思うだろう。

同族の敵を討ちたい。

自身を酷い目に合わせた帝国に復讐したい。

そう思っても不思議ではない。

しかし、少女は戦うことを拒んでいるようだ。


「憎くないと言えば嘘になる。だが、黒竜たちを殺した魔族は一族と共に死んだ故に敵討ちする相手がいない。

それに黒竜王様を捜さなければならないから、帝国にかまっている暇などない」


少女は解放されたらまた黒竜王を捜すつもりだった。

早く捜しに行きたい。

早く黒竜王様に会いたい。


「だが、お前は20年捜して見つからなかったんだろう?残酷なこと言うが黒竜王は死んでいるのではないか?」


少女には残酷な言葉ではあるが、シエルは多少辛い表情をしながらもはっきりとそう言った。

そして、少女の様子が気がかりなのか目を少女に向ける。

しかし、シエルの予想に反して少女は表情を変える様子はなかった。


「確かに20年前のあの日に黒竜王様は他の黒竜と共に死んでしまったのかもしれない。

でも、私は黒竜王様は生きていると信じている。

そうでなければ私の生きる意味がない」


少女は既に20年前のあの日、生きる意味を失ってしまっていた。

でも黒竜王の生存を信じることで生きる意味を見出していた。


「だから、私は黒竜王様を捜し続ける」

「もし、黒竜王が死んでいたら?」


「…死ぬつもりだ」


シエルの問いに処女はハッキリとそう答えた。

その言葉に嘘偽りはないだろう。


少女の言葉を聞いた瞬間、今まで静聴していたクォーツはいきなり優しく抱きしめた。

突然のことに少女は勿論、それをすぐ傍で見ていたシエルは目を丸くして驚いた。

シエルはバンッと机を叩いて立ち上がり、クォーツを指差す。


「クォーツ、何してるんだ!?」


突然のことにシエルは少し混乱している様子だった。

クォーツはシエルを無視し、少女を抱きしめたまま少女に言う。


「君は仲間がいないから寂しいんだね。だから黒竜王を捜し続けているんだ」

「さびしい…?」


少女はクォーツの言葉に困惑した。

自分は寂しいかったのだろうか?だから黒竜王様を捜しているのか?

考えたこともなかった。


「レダ王国においで」

「行かない。私は戦いの道具にされるつもりはない」


少女はクォーツの胸に埋まっていた顔を上げ、クォーツを睨みながらそう冷たく言い放った。

少女の言葉にクォーツは首を横に振った。


「君に戦いを強要しない。私は君を一人にしたくないだけだ」


クォーツの言葉に少女は再び目を丸くする。

クォーツは自身の腕に閉じ込めている少女を腕から解放すると少女に右手を差し出した。


「だからレダ王国においで」


そう言ったクォーツの右手を少女は見た。

その手を取るでも払うでもなくただただ見つめている。


「ちょっと待て!」


いつの間にか二人の近くまで来ていたシエルは少女に差し出しているクォーツの右腕を掴んで二人の会話に割り込んだ。

そしてクォーツの方に顔を向けて口を開いた。


「クォーツ、俺を無視して勝手に話を進めるな」

「シエルだって彼女には王国に来て欲しいだろう?」

「それは…」


シエルは先ほど、少女のことは“諦める”と口にはしたが、本心は王国に来て欲しかった。

黒竜の力は勿論のこと、人間では持ちえない知識もあるはずだ。

その知識も欲しい。

だけど、無理やり連れて行くのはシエルの本心ではない。


「正直に言えば黒竜であるお前にはレダ王国に来てほしい。

お前の持つ力や知識は我が国にとってプラスになるはずだ」


その言葉を聞いた瞬間、少女は今までよりも鋭くシエルをにらみつけた。

そしてシエルは「だが…」と続けた。


「無理やり連れていくのは俺の本心ではない」


その言葉を聞いて少女は目を丸くする。

しかし分からない。

来てほしいが無理やり連れていくことはしたくない。

レダ王国第二王子の言っていることは矛盾しているような気がする。


「お前の言っていることはよく分からない」


正直、少女は少し悩んでいた。

この二人は帝国の人間とは違う気がする。

――この人間なら信じてもいいのかもしれない。

だが、少女は帝国で受けてきた数々の悲惨な仕打ちを思い出すとどうしてもだめだった。


少女が悩んでいると突然、クォーツは名案が思い付いたようで右手の上に拳を握った左手を乗せた。


「こういうのはどうだい?君は私たちを利用すればいい」

「え?」


“利用する”とはどういうことなのだろうか?

何を利用しろというのか?

クォーツの言葉の意味を理解していない少女に説明するようにクォーツは続ける。


「見たところ君はかなり弱っているね。黒竜の本来の力ならその魔力を抑える首輪なんて簡単に壊せるはずだ」


クォーツはそう言って少女の首についている首輪を指差す。

指を差されたことで反射的に少女は自身の首についている首輪に触れた。


「だけど君は弱っているせいかその首輪を壊すことはできない。違うかな?」


確かにクォーツの言っていることは正しい。

本来の自分ならば、この程度の魔力制御装置など抑えきれないほどの魔力を注いで壊せる。

だが、今の自分ではしたくてもできない。

体が弱っているせいかあまり力が出ないのだ。


「お前の言っていることに間違いはない。だが、私が弱っていることがなんだというんだ?」


少女はまだクォーツの言っていることの意味を理解できていない。

すると、シエルは「そういうことか」と呟いた。

どうやらシエルはクォーツの言っていることを理解できたようだ。

クォーツの代わりにシエルが少女の問いに答える。


「帝国はお前をまた捕まえにくるかもしれない。帝国にお前が一人でいるところを見つかった時、弱っているお前ではまた帝国につかまってしまうだろう」


シエルの言ったことは少女も考えていた。

帝国は自分を諦めることはないと思う。

この弱った体で帝国から逃げ切ることは難しいだろう。

そこまで考えて少女はようやくクォーツの言ったことを理解した。


「私の体を休めるために、レダ王国に滞在しろということか。

確かに、王国にいれば帝国とて簡単に手出しはできない」


“ヴェルズ帝国から逃れるためにレダ王国を利用する”


クォーツの言った意味はこういうことだった。


「私にはメリットがあるが、お前たちにはあるのか?私は王国の為に戦うつもりはないが?」

「まあ、私たちとしては君に王国に来てもらうことが目的だから。後のことは後で考えるよ」


クォーツの言葉にシエルも同意のようで頷く。

少女は一瞬だけ目を閉じて考え、再び目を開く。

どうやら決心したようだ。


「分かった。お前たちを“利用しよう”」


その言葉で二人には伝わったようだ。

そして、シエルは少女に手の平を見せるように右手を差し出した。


「なら、お前の名前を聞きたい」


少女は枷で繋がっているため、右手だけを差し出すということはできない。

仕方がないので両手を差し出し、なんとかシエルの右手に自身の右手を乗せ答えた。


「名は“ザクロ”。お前たちについてはいくが、信用した訳ではないからな」


黒竜の少女――ザクロのその冷たい言葉にクォーツは苦笑いをしたのだった。




【おまけ】


ザクロ

「そういえばこの服のことだが…」

シエル

「か、勘違いするなよ///お前の服があまりにもボロボロだったから着替えさせただけだ///

着替えさせたのも女だし、俺たちはお前の裸は見ていない///」

ザクロ

「いや、別に体を見られたことは気にしてないが…。

?なぜ、顔を赤くしている?」

シエル

「お前、女だろ!少しは気にしろ!!」


ザクロは異性に裸を見られても平気なようです。





ここまで読んでいただきありがとうございいました。

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