これが私の幸せ
君たちにとって、極上の時間というものはどのようなものであるか。それは、趣味のときであったり友人とあっているとき、または家族と一緒にいるときかもしれない。
人によって、それは様々だ。それが個性であるしあたりまえのことである。
しかし、それは果たして誰かと共有できるものであるか。yesかnoのどちらで答えてほしい。
yesと答えた人はきっと幸せものだ。しかし、この物語の主人公は、noと答えるだろう。
これは、そんな人物の物語である。
_______あぁ、幸せだ。
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「マー君ご飯よー。降りていらっしゃーい。」
閉まりきったカーテンから漏れる朝日に目もくれず、目の前にあるキャンパスに夢中で色とりどりの世界を描いていたその人物は、母親の自分を呼ぶ声で、ようやく意識を現実に引き戻した。
そして、壁に掛けてあった時計を見て、目を見張った。
「.......うそだろ。」
時計の針は短いほうが7を指し、長いほうは8を指していた。その人物は一瞬、テレビ番組によくあるドッキリの仕掛けられたような感覚を覚えたが、すぐにまたやってしまったと、画材道具などを急いで片付け始めた。
(また、やっちまったなー。)
だいたいのものをあるべきものをあるべき所へ戻し、まぁいいだろうと自分を納得させ、下で冷めきっているであろう朝食を求めて階段を降りた。
「もぅ、マー君ってばやっと降りてきた。」
「......おはよう。お母さん。」
予想通り見るだけで熱気を失ったであろうことが分かる自分の朝食と、洗い物をしながら少し機嫌の悪い母親を眺め、その人物、沢口守は目を細めた。
(あぁ、また来てしまった。朝が。)
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この物語は、まだまだ序論である。俺の手によって、この物語の「終わり」は、ハッピーエンドかバットエンドのどちらかになるのだろう。そして、どちらが選ばれるのか。そもそもどんな「終わり」なのか、またどんな物語なのか。君たちに、ワカルカナ?