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「ウゴウゴ!」
突進してくるゴブリンを待ち構え、槍を構える。
ゴブリンの動きは直線的で突けば簡単に当たる、しかしまだ恐怖で腕が震えていた。
ゴブリンは俺の震えを見てニタリと笑ったように思えた。
「うっ!」
勇気を振り絞り、腕をめいいっぱい伸ばした一撃は、切先がゴブリンの腹を掠めた所で止まり、致命傷には至らない……
はずだった……ゴブリンは俺が抜いていた地面の野草にスリップし、自ら槍を腹に受けた。
ズブズブと生々しい感触が槍から腕に伝わってくる。
「ギャッ!ギギャッ!」
ゴブリンは苦しそうに槍から抜けようと悶えて吐血している。
「ごめんよ……」
左手に持ったショートソードでゴブリンの首をはねる。
一撃でゴブリンの首は地面に落ち、槍に伝わる振動も止まった。
血飛沫を浴びた俺は槍を抜き、血を払う。
……やってみると思ったよりアッサリしていた……良心の呵責もそんなには無い……
『お見事です Master』
ウーゴが背後に控えていた。
……もっと経験を積まなくちゃな
「いや……そうだな、ゴブリンを送ってくれる?」
『Yes. My Master』
それからはウーゴが草を刈り、俺はゴブリンの相手をするようになった。
ゴブリン達は人間にはウーゴ程、恐怖を感じないようで次から次へとやってくる。
次第に射程距離の感覚もわかってきた。
『Master そろそろ袋が積み終わります』
「わかった……まだ昼か……こいつらをやったら一旦帰って飯にしよう」
三体のゴブリンが走ってくる。
横一線の一撃が、避け損ねたゴブリン二体の首を半分割いた。
一体は槍の間合いの内に入ってきた。
俺の一撃を棍棒で避けようとするが、木材と鋼鉄では勝負にならなかった……俺のショートソードは棍棒と共にゴブリンの脳天を叩き割った。
「よし……帰ろう……くっ!……うご……かないぃぃ!」
ウーゴの人力車を引いて南に向かって歩こうとしたが、流石に140袋もあると、重くて全然動かない……
『Master 及ばずながら、お手伝いいたします』
ウーゴが自走して、俺が押してやっと動いた。
身体中が震える……だが恐怖ではなく、身体を酷使したからだ……俺は本当の意味で冒険者の一員になれたような気がした。
冒険ギルドは朝とは打って変わって、活気を取り戻していた。
「お帰りなさいジャイロさん」
「ただいま」
「おう、ファンタジスタ!……なんだぁ?今日は一段と汚いじゃねーか!ギャハハ!」
酔っ払ったオッさんは肩を叩いて笑っていた。
「当たり前だろ?そんな毎日上手くいってもらっちゃあ、俺らの立場がねーだろ?」
「それはそうとジャイロさん、野草はどうしました?」
「ああ……今持ってきます」
俺は袋を次から次へとカウンターに運んでいく。
最初は「ヒヒヒ……新人にしてはとったなぁ」と笑っていたオッサン達が袋50を超えたあたりからギョッとしだした。
「おいおい……嘘だろ……」
「な……なんだよ……これ……」
オッサン達はビールの白ひげを生やしたまま唖然としていた。
「ここにも置いていいです?あと半分で……」
「ちょっと待ってください」
受付は応援を呼び三人がかりで重さを測り倉庫へ運んでいく。
「……全部で……うそ……700kg……報酬の5600sです」
「やったぁ!」
「いや、やった…じゃなくてジャイロさん……いったい……ちょ…」
「じゃあちょっと腹減ったんで飯行ってきます」
俺は商店街の定食屋で三人前の飯を平らげた。
オッサン達は脇腹を突き合う。
「おい、700kgを草原から街まで引けっか?」
「道ならな……草原からは出れねーよ」