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「ふぅ……さぁやるぞ!」
気合を入れて冒険ギルドのドアを開ける。
「いらっしゃいませ……登録ね?」
受付のお姉さんは俺の姿を確認して登録紙をカウンターに置いた。
「はい、お願いします」
「じゃあ…ここと、ここと、あとここに署名をお願いします」
「あの……文字が書けなくて……」
「承知しました、それでは名前を教えて下さい」
「ジャイロ」
にこやかに笑うとお姉さんは白紙を取り出しその上に文字を書いた。
「今回はこれの真似をして書きましょうか……」
「はい!」
俺はその文字を真似して指定された場所に署名した。
「はい、これで良いでしょう……ではこの紙は差し上げますので次回以降は自分で署名出来るようにして下さいね……あそこに見える掲示板から受けたい依頼紙を探したら破って持ってきてください」
「わかりました、ありがとうございます」
良い人だなぁ……俺はお辞儀して掲示板へ向かった。
「よう!……身なりがマシになったじゃないか、蝶々屋に行ったみたいだな……ハハハハ」
「先程はどうも……」
「パーティを組むのか?それともソロか?」
俺の肩に手を置き男はビールを一口飲んだ。
「ソロで行こうと思います」
俺はドルチェの忠告を守り、極力パーティを組むのは避ける事にした。
「そうか……まぁいきなり組んでくれる奴もそうそう見つからんと思うからなぁ……これか、これか、これが今のお前でもやれるんじゃ無いか?」
「ぐらぁ!ボルア!油売ってんじゃねぇ!なんだぁ?若造に今夜の相手でもさせる気か?作戦会議だ!さっさと来い!」
「アハハハハ!今行きますってぇ!じゃあ頑張れよジャイロ!」
男はテーブルで待っていた仲間達の元へ戻って行った。
「この野郎!」
「いや〜さっき話してた小僧がそこに居たんでねぇ」
「ああ…まぁさっきのヌケサクか、まぁいい……それより次回の依頼で……」
ヌケサクと言われたのが俺は恥ずかしくて……オススメされた依頼の内一つを選んでカウンターに渡した。
「山菜摘みですね……それではお願い致します」
受付は判子を依頼書に押すと手渡してきた。
街を歩きながら依頼を確認する。
どうやら北の森から平原に生息する野草を摘む仕事みたいだ……なんだ、冒険っても普通の労働と大差無いんだ……
俺は戦闘がなさそうな依頼に安堵した。
「すみません!冒険者のお兄さん!新人ですか?」
「え?」
まだ幼さが残る少女がゴザを敷いて座っている……無視しようとも思ったが、娘さんの不安そうな表情を見るとそれは可哀想だから話だけでも聞くことにした。
「そうだけど?」
「もしかして野草摘みですか?」
「そう、野草積みだよ」
「あの……お母さんが作った、これ……一枚でも良いので、如何ですか?」
少女の荒れて震える手に爺さんを思い出し、俺は心を突き動かされる。
うしろの露天商も声を掛けてきた。
「お兄さん!なんだ新人か!そんな丈夫かわからない手作りの袋よりこっちには良い袋が沢山あるよぉ!」
よく見ると腕や足がガリガリに痩せている……少女に対する同情もあっただろう、でもそれ以上にしばらく露天商とは関わりたくないのがあった。
「じゃあ何枚か貰おうかな……いくら?」
「あ!ありがとうございます!一枚50bです!」
麻袋はウチの村でも作っているので分かる……相場は75bはするはずなのに……おかしい!ほとんど原価だ!
しかしその子の表情は嘘をついてる様には見えなかった……たとえ騙されても良いか……
「じゃあ三枚頂戴」
「ありがとうございます!」
笑顔の少女に見送られ、北の門を出て平原に行くとすぐに荒れ放題で背の高い野草を見つけたので採取していく。
夢中になって積み歩いていると野草を掻き分けて現れた三体のゴブリンと遭遇したので俺は震える手で槍を構えた。
「う……うわ……」
『Master お任せを!』
首の箱が地面に落ちて岩のユーゴは形成された。
ユーゴはギョッとしているゴブリン達を全て叩き潰す。
「ありがとう、ユーゴ」
俺は叩き潰されていくゴブリンを尻目に野草積みに夢中になる。
心配してた麻袋はパンパンにしても破れること無く大丈夫だった。
ゴブリンは次第に現れてもユーゴを恐れて逃げる様になり、ユーゴも野草積みを手伝ってくれた……依頼書にはできるだけ多くと書いてあったので喜んでもらおうと俺達は袋はもちろん、ポケットや鎧に一杯に詰めた。
「もう全部パンパンだ!帰ろうユーゴ」
『Yes. My Master』
「あ……どうしようユーゴ……」
ふと気が付いた、大麻袋三杯、鎧一杯……この大量の野草をどうやって運ぶか考えていなかった。
『Master 考えがあります』
「これ……全部あなたが?……この短時間で?」
ドッサリと取れた薬草に受付は驚いていたが、何をそんなに驚くのだろう?
「はい……」
「そ、そうですか……今の相場は10g当たり800bです……約18kgですね……それでは報酬の14s4000bです」
「ありがとうございます!」
俺は報酬をポケットに詰め込む
「それと宿を探しているのですが……」
「ああ……あなたの収入なら宿街があるので……これが地図です……地図は5000bで買えますが?」
「それください」
俺は最低でも1日5sの宿代に仰天しつつ、仕方がないので個室のベッドに寝そべる。
「なぁユーゴ何だかこの部屋落ち着かないよ……俺が住むには高級過ぎる……あしたも……よろ」
『おやすみ Master』
ギルドではジャイロの話で持ちきりだった。
「いや〜不思議なガキだぜ……ビギナーズラックか?」
「ああ、初仕事であれは異常だ……ゴブリンに邪魔されて普通なら1kgが良いとこなのによ」
「ああ、カウンターに居た時確認したが、血飛沫もほとんど浴びてねぇ、剣は草汁ついたくらいで綺麗、槍も綺麗、多分全く戦っとらんぜ?」
「いつの間にか木の人力車も用意してたしな」
「普通に考えて初仕事で人力車を用意して行くか?ラック過ぎてこえーよ」
「ある意味バケモノだぜ」
「ちげーねぇな!ギャハハ!」
一晩のうちにジャイロは『野草ファンタジスタ』という異名を得ていた。
ユーゴのストック
岩………8立方
粘土……10立方
くず鉄…微量
所持金8s9000b