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「ごちそうさん」
「ありあした〜!」
腹が膨れたので定食屋を後にする、誰かに冒険者になる方法を聞かなくては……
「あの……」
「じゃま!」
「すいません……」
「どけっ!こら!」
道行く人に声を掛けるがみんな迷惑な顔して無視される……街にはなんて心のない人が居るんだろう……
「お兄さん、そんなところに突っ立ってどうした?そこにいると往来の邪魔だからこっちへおいで」
露店商人が話しかけて来たので言われた通りにする。
「村から出てきて……冒険者になりたいんだが、その方法がわからなくて……」
「ハハハッ!それで聞いてたのかい……いいだろう!オッチャンが教えてやる!」
「本当ですか!」
「おうよ!いいかい?冒険者になるにはギルドに入らなくちゃいけねぇ……登録料は確か100sだが、にいちゃん……手持ちはいくらあるんだい?」
「今、9000s程なら……」
「そうか!それは良かった!なんだよぉアンちゃん!意外と金持ちだなぁ……だが、アンちゃん……冒険者になるのに武器も防具もないのかい?」
「はい……何を買ったら良いかわからなくて……」
「水クセェじゃねぇか……オイラが見繕ってやるからよ!」
「ありがとうございます!」
「そうだなぁ……これなんてどうだい?鉄製一式の装備だ!少し重いが丈夫だしな!初心者にはぴったりよ!」
……少し触らせてもらったが、確かに丈夫そうな鎧と兜だった。
「確かに!」
「それにこの装備はこのベルトを巻いて……ほらね、こうすれば水筒も掛けれる……これで砂漠もヘッチャラだわな」
「なるほど〜じゃあそれも……」
「よし、それと戦利品を入れる皮袋…これもなきゃあなぁ!」
「えーと、じゃあそれもください……」
この人は俺の事を考えて色々アドバイスしてくれてありがたいなぁ
おじさんは長い剣をテーブルに置く
「それとアンちゃん……剣はこの買うとして得意な武器はあるかい?弓とか得意だと安全に狩りが出来らぁな」
「それが……あまりやった事なくて……すいません」
「大丈夫、大丈夫!……そんならこれがオススメだ!」
「何ですか?これは」
「これはなぁ……ぶーめらんって言う、投げても手元に帰ってくる武器だよ、これなら外してもいいからな」
「え!そんな武器が!?」
おじさんは次から次へと便利アイテムを持って来てくれた。
「おおーこれは凄い冒険家になるわ!アンちゃん……ああ、あと沼にはまった時用にロープもなきゃな!それと虫取り用の網と魚取り用の網もだ……こんなもんかなぁ〜」
「いくらになりますか?」
「1G2000sだなぁ」
「え!9800sしか……」
「無い袖は振れ無いもんなぁ……くぅ〜値切るのうまいねぇ〜仕方ねぇ!冒険の門出だ!オマケしてやるよ!持ってけ泥棒!」
「やったぁ!」
俺が代金をテーブルに置き、その道具達を掻き集めようとした時、後ろから笑い声が聞こえてきた。
「クッ……クフフ……」
後ろを見ると大きな樽を肩に乗せている、頬に傷のある冒険者らしき人物が空いた手で口を押さえて笑っていた。
露店のおじさんはその男を睨みつける。
「グゥ…………ふぅ…………クフフックック……ガハハアッハハ!ダメだ!我慢出来ねぇ!」
「何ですか?」
「お前さんは砂漠用の水筒と森林用のロープとオモチャの虫取り網……それに漁業用の網を持って一体どこに行くつもりなんだぁ?ギャハハハハハ!だいたいそんなものレンタルでいいしな!おっさん!お前は大したアドバイザーだよ!それに9800だって?ギャハハハハハ!」
「え?……え?」
俺はおっさんを二度見した。
「いやぁ〜」
おじさんは頭をボリボリと掻きむしっていた。
「それによぉ〜、その鎧は初心者には重くて大変だぞ?剣も長すぎるしなぁ……アハハハハ!同じ9800s掛けるならよぉ〜それなりに業物のショートソードともっと軽量で安い鎧にしな……それに餅は餅屋だぜ?こんな露店で武器と防具買うなんてよ、バカのする事だぜ?……おっさん、出せよ……しまった金をよ!」
その男の眼光におっさんはブルリと震えて一度テーブルの下にしまった金をテーブルに出し、商品を全て引っ込めた。
「おい……お前もよ、ボーッとしてねーで金がちゃんと返金されたか確認したらどうだ?……ここでは自分の事を全て他人に任せるような奴は生きていけないぞ?」
「はい……」
確かに9800sあった。
「この道をずーっと行くと蝶々屋っていう武防具がある……そこの主人は必要以上に御節介だ……そのさらに先には冒険ギルドがあるからよ……気が向いたらくるといいさ……まぁあんまり騙されんようにな……しかし、森と海の網か……クフフ……」
男は人混みに消えてしまった。
「……なんだ、アンちゃん……まぁ頑張ってな」
「……ありがとうございます……」
思う所は色々あるけど……街って怖え……
また騙されてるかと思うと少し怖かったが、
道を歩いて紹介してくれた蝶々店に入る事にした。
「おう……」
いかにも強そうな主人がカウンター越しに睨み付けてきた。
「いらっしゃいませ!何かお探しでしょうか?」
棚に品物を並べていた女性スタッフがにこやかに笑顔を見せる。
心臓の鼓動を受けてユーゴが喋り出した。
『Master 大丈夫、私が護ります……どんな道具だろうと……どんな相手だろうと貴方を護りきる』
「ふぅ……」
気合を入れて騙されないようにしよう!
「なんだテメェ?突っ立ってるだけか!?」
「武具を買いに来た」
「はぁ?お前、金はあんのか?」
「資金は9800sあります」
「ほぅ……冒険者になりたいって口か?」
「はい!」
「そうか……何も知らない奴相手すんのは面倒なんだがなぁ!」
「お父さん……じゃあ私がやりましょうか?」
「お前は品出ししとれ!仕方ねぇ!おい小僧!こっちに来い!採寸するぞ!」
主人がカウンターから出て手招きする。
カウンター越しには分からなかったが、主人は片足が義足だった。
俺の身体を測り終えると右往左往ヒョコヒョコと動き回り、剣や盾や槍の部品を集めてカウンターで組み立てた……他には額当てやら腕当て、胸当て、革製の服を持ってカウンターに戻る。
「お前みてぇな貧乏で未熟者に扱える武具は!このぐらいしかウチにはねぇよ!剣を軽く降ってみろ」
思ったよりも軽い……それにこの小振りな剣のグリップはすごく手になじむ感じがする……
「あとこの槍はよ……普段はこんな風に二つ折りにしてよ……戦うときはこうやって振って!「カチャッ」……な?槍にするんだ……戦うときは悠長やってられんからな……0.2秒くらいで展開できるよう練習しとけよ?あと接合部には絶対指を乗せるな!挟まれたら簡単に飛ぶからな!」
「はい……」
「基本的に森を切り分けて進むときにはこの剣を鉈代わりに……戦闘になった時、展開する余裕があれば槍を使えよ?リーチが長いってのはそれだけで有利だ……よし!着てみろや!」
俺は言われるままに防具を着て武器を付けていく……主人はしっかりハマっているか叩いたり引っ張ったりして確認していた。
「よし、大丈夫そうだな!9800だ!置いてさっさと失せろ!」
俺はまた騙されてるのかもしれない……
「なんだあ?金が無いとか言うんじゃねぇよな?」
「あっ!」
『Master!いつでも命令を!』
主人は俺の持っていた布袋を奪うと中身を確認する。
「9700……9800っと……あるじゃねぇか!さっさと行けよ!出て右を真っ直ぐで冒険ギルドだ!」
騙された確証は無いし確認もできない……相場も分からないし……俺は半ば強引に外に出されてしまったので仕方なく冒険ギルドに向かって歩いていく……しかし鎧を着ていると自分が強くなった気がするのは何故だろう?
新人冒険者が出て行き、店内で娘は文句を垂れた。
「父さん!業物の刀身にハンドメイドのグリップにワンタッチ変換式の槍まで!それに当て具はどれも新品!どう見ても赤字よ!私なら格安の武具を高値で売って……」
「うるせぇ!ごちゃごちゃぐちゃぐちゃ!うるせぇな!そんな事よりちゃんと品物並べとけ!こっちばっかり見て手が止まってたぞ!」
主人は不機嫌にカウンターの奥に入っていった。
ユーゴのストック
木………微量
岩………10立方程
粘土……15立方
くず鉄…微量
所持金100s150b