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「おーい大丈夫か?」
「ああ、いったい何が起きたんだ?」
ホテルの従業員と宿泊客が瓦礫を退かして救助活動を行っている。
奴は何者なのか……そしてなんの目的でmasterを滅ぼそうというのか……
ユーゴは大破したホテルの瓦礫の上に箱として落ちていた。
そろそろ核の修復が終わる……終わり次第追わなくては……
ーーーーーー2時間前
遅過ぎる……もしや何かに巻き込まれたのか?
探しに行くか……?だが、待機との命令だ……
感情と命令で心が揺れ動く……
ユーゴはジャイロが出て行った時と同じ位置でジッとしていた。
「カチャッ」
カギを開け、masterがドアを開けようとしている。
即座に立ち上がり、鍵が開いた瞬間、駆け寄った。
『……Master!やっと帰って来た!』
次第に姿を表す人物は黒装束だ……
masterの首にかけられていた時に見た覚えがある。
『武具屋の?』
手の甲からアサシンブレードを突き出したと認識した瞬間、私の額に突き刺さる。
私はとりあえず状況確認の為、倒れておく事にした。
その女性は部屋を見回り、ベットやタンスを確認している。
「血は……無しか……いないようね……ジャイロはどこ?」
女性はベットの方を向き、背中越しに話しかけてくる。
「あなた普通じゃ無いわね……死んだフリしても無駄よ……手応えが違うわ……刺した時の刃から伝わる振動が不自然だもの……」
静かに立ち上がり、彼女を警戒する。
「私の目的はジャイロよ……おとなしく居場所を教えて貰えない?」
やはりか……
『……貴様、敵だな……』
ユーゴが右腕に岩を纏った瞬間、アサシンブレードがその腕を切り落とした。
「拷問は得意じゃ無いのだけど……仕方ないわ……〈ポイズンダガー〉」
もう片方のアサシンブレードから液体が染み出し、ユーゴの肩を突き刺した。
「さぁ……ん?」
『パキッ…ブン…』
ユーゴはアサシンブレードを体内で捉えて、右腕を再生し、攻撃を繰り出すが、女性はブレードをバラしてそれは空を切る。
「厄介ね……」
彼女の両手のブレードの歯がバラけ、鞭のような形状になり、腕を振りユーゴの体を切り裂き、バラバラになる。
バラバラになった側からゴーレムの姿になったユーゴは鉄の鎧をまとって攻撃を試みる。
「ガキッ!」
鞭が鉄に弾かれ彼女は距離を取って窓を突き破るがユーゴは既に手を回し、部屋の周りを岩で覆っていた。
ここで止めねば、masterが!
ユーゴは走り出す。
女の刃が遠心力を得てユーゴの喉、胸、腹に正確に突き刺さっていった。
それでも突進をやめないユーゴを見て効果は無いと判断した女は鞭で私を切り刻む。
彼女の一撃が核をかすめた。
『グゥ!』
私が少し怯むと彼女はニタリと笑う。
「ガキッガキッガキッガキッガキッガキッ」
彼女が核へ、猛攻繰り出し、私は体内で生成した鉄の盾で防いだ。
「ガキッガキッガキッ……直なら!……ドスッ」
彼女は左手の鞭で牽制しつつ、右手をブレードに戻して鉄ごと核を貫いた。
「ブシュッ!」
私は怯むことなく彼女の顔面目掛けて先程の毒を散布した。
「くっ!……ドスッ……」
私の棘が彼女の脇腹をえぐる。
「グゥ……」
行かせるわけにはいかない!
私は核に残ったほぼ全ての材料を使い、体を生成して部屋を満たしていく。
「まさか遅れを取るなんてね……油断したわ」
潰れろ!
「〈ディープシャドー〉……」
「ズンッ!ドゴッ!」
私の肉体は部屋を潰すだけでは止まらず、窓やドアを破壊して突き出した……その衝撃と重みで柱が割れて床は落ち、ホテルを大破させた。
しかし彼女が私の肉に潰される直前……影に染み込み黒い液体となって肉体の割れた隙間から出て行った。
ーーーーー
masterが無事ならば良いが……
やっと核の修復が完了し、余った肉体でツギハギだらけの身体を生成する。
しかしmasterは遅すぎる……彼女もまた探している様子だった……
『master!』
私は街を彷徨い歩き、藁にもすがる思いで入った冒険者ギルドで情報を入手した。
何故masterは一人で依頼を受けたのか?
そして命を狙われる意味とは……不可解な点が多すぎる……
兎に角、合流を目指してダンジョンに向かいながらゴブリンを喰らい続けた。
ーーーーーダンジョン入り口
「ヒュー……ヒュー……解毒は間に合わないわね……」
情報を集めて全力疾走し、一足先にダンジョンについたマルカは応急処置を施した身体でダンジョンに入る。
ユーゴのストック
粘土……0.2立方
木材……0.7立方
鉄……0.3立方
肉……12立方
所持金32G2032s8000b
ジャイロのスキル
鴉突き
ダブルピアース
チャージ
シュトロームランス




