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今頃ユーゴはどうしているのだろうか……
そんな事に思いを馳せていると目の前に小さな影が動いているので目を凝らしてみた。
「ん?」
「パラピエ……ピピポ?」
全長は俺の腰ぐらい……そのピンク色お猿が俺を指差して首を傾げながら話しかけてくる。
「キミ……どうしたんだい?」
穴から顔を出して辺りを見回すが、他に気配は無い……
俺は穴から出てお猿に近付いた。
その瞬間背後に巨大な何かが落ち、俺は背中を何かで殴られ、頭だけは守ったが壁に激突した。
「キャッキャッキャッ〜!」
小さなお猿は手を叩いて喜んだ。
「くそっ……なんだってんだ……」
俺は立ち上がり、霞む目を必死に細めて確認した。
「パンッパンッパンッ……ホォ〜!ギャーギャー」
「ゴレロア……ガバンダラァォォァ!」
大きな猿が威嚇してくる。
小さなお猿はテンションを上げて手を叩き、首をフリフリ降りすぎて興奮し、クルクル体を回転させている。
こちらが構えると大きな猿は突進して来た。
猿の動きはかなり速い!
猿はすぐに俺の間合いに入った。
俺は槍で腹を突くが猿は体を捻りながらジャンプして避けた。
俺は横に飛び、猿の足は地面を割る。
俺は少しもバランスを崩さない猿の運動神経に驚愕した。
俺はショートソードを投げつけて飛翔した。
「〈鴉突き〉!」
猿は俺の動きを見切り、ショートソードを手で弾いた後、脳天を狙う槍を寸止めした。
槍を突こうとしたが、猿の力は強力で全く動かない。
「クソォ!」
猿は肩に乗る俺を空いてる手で殴りつける。
落ちたら……殺される!
そう感じた俺は猿の首を足で挟み殴られながら必死に抵抗した。
幸いここなら猿の攻撃も最初のような威力はなく、耐えていられる。
猿は両手で槍を掴み、俺を剥がそうとする……
「うぉぉぉ!うぉぉぉ!!千切れ……るぅぅ!」
俺は全身の力を総動員させて必死に耐えていたが、徐々に引き剥がされつつあった。
その時、俺の脳裏にはスクロール屋で聞いた言葉が思い起こされた。
《戦争だ……俺は徴兵されて血を踏み台に生き延びていた……才能や運の無い仲間はみんな死んでしまった……戦いで生き延びるのにも慣れてきたが……俺の運も遂に尽きたようだ……俺の国は敗北し、敗走する俺は追撃部隊と戦闘を余儀なくされた……フルプレートを着込んだ奴らは大抵隙だらけだが、一人だけは少し違った……技量は俺が格上なのは明らかだが、こいつに致命的と言えるほどの隙はなく、俺の槍は鎧に弾かれてしまう……他の奴らに囲まれて逃げる隙すら無い……やがて雨が降り、俺はそいつと打ち合った……不覚にも俺は足を泥に取られて死を覚悟した時だ……雷鳴が轟き、俺を含めた全員の身体に地面から電気が走り、硬直する……間合いの中でスタートが同時なら遅れは取らない……俺は痺れが切れるなり即座に目の前のフルプレートの頭を跳ねた……この雷は天啓だ……周りで見ていたものがにじり寄ってきたが恐れはなかった……俺がひねり出せる量はたかが知れている……隙は一瞬だが十二分!シュトロームランス!この我が槍を受けてみよ!》
そうか……忘れてた……
「〈シュトロームランス〉!」
「ギャギャギャァァォァ!」
俺の全身から放たれる電流が猿を硬直させた。
硬直した腕を槍はするりと抜け、猿の脳天に刺さり大猿は倒れる。
「ギャ!」
小猿は驚き、奥の穴へと逃げようとしたが、俺は槍を投げてその背中を射止めた。
「はぁはぁ……」
初めて使ったシュトロームランスだが……一発で全身がだるい……他のスキルに比べてかなり魔力を消費するようだった。
ワッツ達が起きたのはそれからしばらくしてからだ。
「なんや!これは!」
「やるじゃねーか!ハンターエイプじゃねーか!」
「本当、一人で倒すなんてすごい!」
「やけど、ジャイロはん……次はみんなを頼ってもええよ?」
「ああ……次は何かあったら起こしてから行動するよ……」
この猿達はハンターエイプという魔物で小さな雄猿が獲物を誘き寄せ、雌猿がトドメを刺すモンスターらしかった。
「じゃあ出発するか!」
「せやな!」
「ジャイロくん大丈夫?」
「ああ……行こう……」
俺は立ち上がってワッツの後について行く。
連戦か……けど得るものもあった……なんとなく魔力の限界は解ってきた気がする。
おそらくシュトロームランスならあと二発……他なら十発が限界って所だろう……
しばらく歩くとダングが何かを発見したようだ。
「この先……レッドカーペットがあるで……引き返すか?」
「レッドカーペット?」
「他の冒険者達の亡骸が沢山ある所をそう呼んでるのよ」
シェルビは俺に耳打ちして教えてくれた。
「そうや、多くの冒険者達が血に塗れて倒れた場所やから皮肉を込めてそう呼んでるんや……もちろん、そこにな倒れる理由があるっちゅうこっちゃ」
「俺たち冒険者の死亡理由の一つがそれだ……夢を求めて進むか……諦めて戻るかだ…………進もう」
「マジか?どうなるかわからへんで?」
「ああ……今回はジャイロも居る、それに俺達もそろそろ冒険しないと……だろ?」
ワッツはシェルビとダングを交互に見た。
「ジャイロくんはそれでいい?死ぬかもしれないよ?」
「俺は……」
『Master! そちらに暗殺者が!申し訳ありません!止められませんでした!』
なんだって!どういう状況なんだ?
『私は破損が甚大で……少し時間はかかりますが、必ず守ります!』
被害が甚大!?大丈夫なのか!ユーゴ!……帰ろう!今すぐに!
「一旦帰ろう……」
「ワッツ!避けぇぇぇ!」
「なんだ!切れねえ!くそぉぉぉぉぉ!……」
突然ワッツの足に糸が絡まり、ワッツは咄嗟に剣で糸を斬ろうとしたが、
それは叶わず、叫びながら穴の奥、暗闇へと引きずられていった。
再び糸が飛んできたが、俺は槍でそれを切断する。
「ジャイロ!お願いや!ワッツを一緒に助けに行ってくれぇ!」
「ジャイロくん!お願い!」
「分かった!行こう!」
ユーゴ……ごめん!すぐに終わらせて戻るから……少しだけ寄り道させてくれ!
俺達は糸に注意しながらワッツの引きずられた方向へ走って行った。
ユーゴのストック
粘土……0.2立方
木材……0.5立方
鉄……0.1立方
肉……0.1立方
所持金32G2032s8000b
ジャイロのスキル
鴉突き
ダブルピアース
チャージ
シュトロームランス




