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血まみれのMasterは苦しそうに息をする。
Masterの生命危機を認識……命令形態の再構築……
Masterを見つめて柄にもなく思考する……
Masterの苦痛は例外的に私の空虚な心に刺激を与える……
現状を何とかしなくてはならない……これは私の責任だ……
オーク達の肉を搾取……
人体の生成……
人間を真似て適当な布で体を包む。
急がなくては……
Masterを抱えて急いで街の門へ向かった。
「ちょっと待て……検問だ!止まれ!」
三人の衛兵はジャイロを抱えて走るウーゴを身を呈して止めようとした。
『急を要する!通せ!』
立ち塞がる邪魔者め……
ウーゴは右手に岩を纏う。
「なんだこいつ!」
「うっ!魔導士か!」
衛兵達はウーゴの所作に身構えている。
『消え失せ……』
いや、こんな事……Masterの本意では無い。
ウーゴは振りかざした腕を下ろして表皮を剥がして岩を地面に落とした。
二人の衛兵は槍でウーゴの動きを止めて、残りの一人は近寄って確認する。
「な……何なんだ貴様!……ん?負傷者か……ギルド証……冒険者…名はジャイロ……」
ギルド証の表と裏を確認し、ジャイロの身分を確認する。
「確かに負傷者の身分は確認出来た……だが、貴女を入れる事は出来ない!身分証が無いなら作成して……あっ!」
こんな事をしている暇は無い……
ユーゴはジャイロを含んで岩の筋肉を纏って衛兵の槍を潜り抜ける。
「待て!誰かそいつを捕まえろ!」
兵舎から出てきた衛兵をジャンプして飛び越え、兵舎の屋根から街の壁へと飛び移る。
ウーゴは手から無数のトゲを出して壁をよじ登っていく。
「侵入者だ!追え!……それと特徴を各ギルドに連絡!」
ウーゴは壁を越えると屋根に降り立ち、ジャイロの鞄から地図を取り出し、確認した。
既に字はほぼ覚えた……よし、ここが診療所か……
屋根から屋根へとユーゴは飛び移って診療所の門を叩く。
白衣を着た男が対応する。
「何だねぇ?……いまは昼時だよ?」
『Masterを救ってくれ!』
血まみれのジャイロを抱いて、ユーゴは無言で必死に訴えた。
白衣の男は溜息をつくとユーゴを中へ通した。
「はぁ〜……美人には逆らえないよ、そこに置いてくれ」
長椅子に置かれたジャイロを見て、男はポケットから瓶を取り出し、液体を掛けて傷を確認した。
「腹に受けた傷……これは良くないねぇ……かなり金と時間がかかるよ?……下手すると数ゴールド……その他にも意識回復まで入院費も掛かる……無理に救う事はないが、どうするね?」
『御託は良い!Masterを救え!』
ユーゴの目を男は見て溜息をついた。
「はぁ〜怖いねぇ……失敗したら殺されそうな目だ……こっちは何とかするから君は金を何とかしなさい……後払いで良いから……」
金だな……
ユーゴはジャイロの鞄を持ち出して診療所から出て行く。
ちょうど行き違いに看護婦達が帰ってくる。
「先生、ただいまー」
「あれ?患者ですか?お昼なのに受け入れるなんて、珍しいですねぇ」
「ああ……至急、このリストにあるポーションを持って来なさい」
「はぁーい」
ーーーーー冒険ギルド
ユーゴは乱暴にドアから入り、テーブルに魔菅と依頼書を置いた。
「あ……あなたはどなたでした?……これは、ジャイロさんの!」
不思議に思いながらも依頼書のサインを確認した。
「どうしたのだね?」
「ギルド長!この女性がジャイロさんの依頼書をお持ちになって!」
「なんだと?」
ギルド長が睨むがユーゴは微動だにしない。
「よぅ!帰ったぜぇ!」
「街じゅう騒ぎになってんなぁ」
「お!ねぇちゃんも冒険者かぁ?」
「ヒヒヒ!ねぇちゃん……俺達とあそばねぇ?」
新たに入ってきた冒険者達はユーゴの肩をペタペタと触り、髪の毛をいじる。
こういう輩に対しての実力行使はMasterに許可されている……
『邪魔だ!』
ユーゴは岩を纏い、裏拳で冒険者を叩き飛ばした。
「ぐぉ!がっああぁぁ……」
一人の冒険者は顔面を抑えてうずくまりる。
「だいじょ……ひでぇ!くっ!魔導士か!」
冒険者達は睨むがギルド長に比べてひどく弱々しい。
ユーゴは拳から肩に掛けて岩を纏い、ゆっくりと近づいていく。
『早々に……消えろ!』
「報告のあった魔導士か!それにこの筋力!……君!……ぜひ、ウチのギルドに登録を!」
「ギルド長!何言ってるんです!彼女を止めてください!」
「そこまでだ!」
ギルドに衛兵が雪崩れ込み、ユーゴを囲んだ。
「こいつで間違いないな?」
「はっ!確かに先程の侵入者です!」
ギルド長はユーゴの前に立って、衛兵長と対峙した。
「ちょっと待つのだよ衛兵長……一体何なのだ?」
「ギルド長……この魔導士は先ほど連絡した……身分証明を拒否し、壁を越えて侵入した者です……」
「そうか!それは申し訳なかった衛兵長……彼女はウチのギルドに所属したばかりの新入りなのだよ」
「新入り?」
「そうだ、この者の身分は保障するから不問にしてくれないか?」
「ギルド長……いくらなんでもここまで大事になって……」
ギルド長はポケットに手を入れて衛兵長の手を固く握った。
「ほんと〜に!申し訳なかった!」
衛兵長は自分の手の中身を確認する。
「……ま、まぁギルド長が保障するなら……しかし報告書はそちらで作って下さいよ?」
「それはわかっているのだよ」
「よし!緊急事態終了!通常業務に戻るぞ!」
衛兵長は衛兵を連れてギルドから出て行った。
「君は口が利けないのかね?……なぁに隠す事はない……魔導士にはよくあることなのだよ」
この機を利用するか……
ユーゴは静かに頷いた。
「やはりな……魔力が変換されている分……声帯に異常があるのだな……いや失礼……後は頼んだよ?ランクはFだ……くれぐれも丁重にな!」
「かしこまりました……」
ウーゴは登録を済ましてギルド証を受け取ると、直ぐにギルドから診療所へ向かった。
スタッフルームでギルド長は電話を掛けた。
「やぁ!ジェイクか?……俺だ、セスなのだ!……おいおい連れないのだよ……甘く見ているな?だが、うちのギルドにもやっと期待の新人が……そうなのだ、さらに魔導士なのだ!……また嘘だって?いや違うのだよ!確かにこの前の新人はスキル持ちではなかったが……おいジェイク!切ったか……まぁ見ているのだジェイクよ」
魔菅を置きに来た受付が不思議がり、声をかける。
「ギルド長?どうかしました?」
「いや……なんでもないのだ……」
ギルド長は椅子に座りながらにやける口元をギュッと握った。
ユーゴのストック
岩………16立方
粘土……8立方
鉄…1立方
木材……1立方
肉……1立方
所持金1G2542s8000b




