13
洞窟からオーク二体がユーゴに激突した、ユーゴはその二体を両手に抱えて踏ん張っている。
オークリーダーが最後まで残した部下だけあって、その牙は的確にユーゴの鉄の鱗を避け、岩肌を砕いて刺さった。
「グォォォォォ!」
ユーゴはオーク達の肩を掴み、指を肉に食い込ませて骨を砕いたが、オーク達の勢いは止まる気配がなかった。
「ガァァァ!」
一足遅れて俺の方にオークリーダーが突撃して来る。
猪を思わす突進で荒々しく突っ込んでくる。
オークリーダーからは《お前には遅れは取らんよ!》という感情が伝わってくるように思えた。
……こんな所で引く訳には行かない!
「うぉぉぉ!俺は引かねぇ!」
覚悟を決め、槍を構えながら突進する。
確かに単純な押し合いでは負けてしまうが、オーク達は鼻が柔らかく弱点だ……
鼻から槍を滑り込ませれば刃は脳に達する……カウンターで脳に叩き込んでやる!
勢いを付け、オークリーダーの豚鼻目掛けて槍を繰り出す。
俺が槍を繰り出した瞬間、オークリーダーは仰け反り腹で刃を受ける。
普通のオークなら、それでも勝利を収めていただろう…オークと俺の勢いでオークの皮膚は簡単に切り裂かれる。
オークリーダーの皮膚は岩のように硬く、その勢いを持ってしても槍の刃は半分しか刺さらない。
オークリーダーは地面を割って踏ん張り、反らしていた状態を起こして頭突きをかまして来た。
中距離というのが幸いした……牙の衝撃は真芯では伝わらず、ブレストプレートを凹ませて俺を吹き飛ばすに止まった。
背中から樹木に激突し、俺は膝をついて吐血した。
衝撃を受けてベルトが弾け、凹んだブレストプレートは地面に落ちる……次は無い……
「ぐ……あぁぁ!」
槍を離さなかったのが不思議なくらいだ!
激痛でそんな苦痛の声しか出せなかった。
「グォォォォォ!」
オークリーダーの追撃を横っ飛びで避けた……オークリーダーは背後の樹木を叩き倒して勢いを止め、こちらを睨みつける。
「がっはぁ!」
少し飛んで地面に落ちただけで身体中に痛みが響く。
「グォォォォォ!」
さらにオークリーダーは巨大なファルシオンで荒々しく斬りつけてくる。
俺はそれを右へ左へと槍で打ち流してオークリーダーの腹を斬りつけたが、薄皮一枚切られたくらいではオークリーダーの斬撃は止まらなかった。
腹をいくら斬りつけてもダメだ内臓を出すほどのダメージは……かといって3メートルの巨体の頭を槍で貫く程の余裕も無い!
次第にオークリーダーの勢いに押されて斬撃をを処理するので手一杯になっていく。
突撃して来る!
気が付いた時には既に至近距離で槍では対応出来なかった。
牙を槍で受け止めショートソードを左手に構える。
オークリーダーはファルシオンを捨てて俺の左手を捕らえて突進した。
「アギャギャギャギャ!」
「バキバキッ!」
「!!!!?!」
樹木に軽く叩きつけられ、腹に激痛を感じて確認する。
オークリーダーは俺の腕を握り潰して、樹木に抑えつけながら腹に食いついていた。
……死ぬ!……何とか!
見る見るうちにオークリーダーは下地に着ていた革の服と表皮を食い破って行く。
「ぐあああああ!」
「バキバキッ」
右手に持つ槍でオークリーダーの頭を叩くが効果は全く無い。
……どうしようもなくて……俺は死んだ……
諦めかけた時、俺は無意識の内に槍のスイッチを押していて槍が二つに折れた。
これだ!……
沸々と闘志が湧いてくる……
「うぉぉぉ!」
槍の片棒を樹木に引っ掛け、片棒を右手に……そして接合部をオークリーダーの鼻に付けて思いっきり閉めた。
「ガチャンッ!」
オークリーダーは鼻を切り裂かれて怯み、俺から口を離して鼻を押さえている。
槍を支えに立ち上がろうとしたが……
どんなに頑張っても立てない……そもそも足に力が入らない……
「クソォォォ!」
『Master!』
二体のオークを始末したウーゴが走って来る。
オークリーダーは鼻を押さえて睨んでいたが、ウーゴを確認すると逃げて行く。
『Master!』
「ウーゴ……ごめん、足が動かないんだ……一度だけ手助けしてくれ……」
『Yes. My Master』
ウーゴは俺を持ち上げ、オークリーダーに投げ飛ばした。
「うぉぉぉ!」
背後から近寄る声に振り向いたオークリーダー。
空を切り、俺は顔面を槍で貫く……乱暴に扱われた槍は貫いた後に接合部からポッキリ折れてオークリーダーと共に俺は地面に落ちた。
全身の痛みを押さえて……オークリーダーに這い寄り魔力を回収する……
「ぐぅ〜」
激痛に耐え……三本目の魔菅が一杯になったのを確認したところで俺の意識はプッツリ途絶えた。