7話 剣霊アルム
「ん…?ここは…」
桜華が目を覚ますと漆黒に塗り潰された部屋、いや、空間と言った方がいい場所にいた。
「暗いな…てか灯りが1つも無いって、ちょっと不気味だな…」
「うわっ、なんでこんな暗いんじゃ!?」
「え?」
すると声が聞こえる方がいきなり明るくなった。そこには顎に無精髭を生やした気の良さそうな老人が立っていた。
「ふうむ…次の儂の使い手はお前か?」
「あんた…誰?」
「おいおい、人生の先輩にあんたは無いじゃろ…あ、儂、人間じゃなかった」
さらっと訳の分からないことを言いながら髭を弄りながら少し考えるような仕草をすると
「儂の名前はアルム、精霊王の弟でお前さんの剣に封印されてる者じゃ、これからよろしく頼む」
「ちょっと待てじいさん、言ってることがじいさんの名前以外何一つ理解出来ないんだが」
このじいさんが、サリアの弟?いや、それはまだ理解出来る、問題はそのサリアの弟がサリアから貰った剣に封印されてることだ、サリアはこのことを知らなかったのだろうか?
「なぁじいさん、1つ聞きたいことがある」
「何じゃ?あと、儂のことはお兄さんと呼ぶといい」
「んなことはどうでもいいんだよ、じいさんは何で俺が精霊王から貰った剣に封印されてるんだ?」
「それは儂があの姉に封印されたからじゃよ」
「は?」
いい加減、頭が痛くなってきた、何故サリアはアルムを封印した?そしてアルムが封印された剣を俺に渡したんだ?…ダメだ、情報が少なすぎる、今全てを判断するのは難しいな…
「さて、じゃあ儂からも1つ質問するが、いいじゃろ?」
「ん?あぁ、いいぞ」
「ここはお前さんの精神世界、言うなれば心の中なわけだが、何故こんなに暗いのじゃ?儂もここまでのものは初めて見たぞ」
「それは俺がそういう人間だからだろ、人は見かけによらないという言葉を知らないのか?」
「ふうむ…覚えておこう」
するとアルムはまだ納得いかない、という顔をしていた、その時桜華の頭に新しい疑問が浮かんだ
「なあじいさん、精霊って魔力から生まれるんだよな?なのに何でじいさんはサリアのことを姉って呼んでいるんだ?」
「その通り、精霊は魔力から生まれる、だが必ずしも単体で生まれるというわけではない、稀に2体以上の精霊が同時に発生することがあるんじゃ、それは擬似的な兄弟の様なもの見れるからそう呼んでいるだけじゃよ」
「へぇ〜」
「お?そろそろ夜が明けるようじゃぞ、お前さんも起きないとアリスとかいう精霊に怒られるじゃろ」
桜華はまだ聞きたいことが大量にあるんだが、という言葉を胸にしまい込んで、ため息を1つついて
「てかどうやったら起きられるんだ?」
「そんなもの、起きるぞ!と強く思えば起きられるじゃろ」
その一言を聞いて、目を瞑り、念じた。
桜華は長い夜を超え、異世界で初めての朝を迎えた。