9話 一文無しの初仕事 前編
ヒロイン登場は次話にします
ギルド内部はイメージとは裏腹に清潔な状態に保たれていた、魔法かなにかでこの状態を維持しているのだろう。桜華はいい空間だと思った。…ただ酒臭いという一点を除けば、異世界の換気設備はそこまで発展していないらしい。こんな昼間から飲んでないで働けよ!と叫びたくなったが、生憎、金なし、仕事なし、宿無しの桜華には出来ないことであった。
辺りを見回してみると、カウンターの出窓のところに気のよさそうなおばちゃんが立っている。きっとあそこで身分証明書を発行してもらえるのだろう。
「すいません、身分証明書ってここで発行してもらえるんですか?」
そう問いかけるとおばちゃんは驚いたような表情を見せた。
「できるとも、それにしてもお兄さんの歳で持ってないのは珍しいねぇ」
「ずっと旅をしてきたからな、あと俺は今金を持ってないからこの後日雇いでもいいから仕事して宿をとらないといけないから早くしてもらえると助かる」
「そうかい、じゃあいくつか質問に答えてもらおうかねぇ。あぁ、そんなに時間とらないから安心してくれていいよ」
「そうか」
それから名前、歳と出身地を聞かれた、出身地については異世界と答えるわけにはいかないので、極東の都市と答えておいた。
「はい、これで発行できるから二日後には出来ていると思うから、それまではこの仮のものを使ってくれていいよ、ちなみにそれを無くすと身分証明書が発行できなくなるからきをつけるんだよ」
「ありがとう」
仮身分証明書を受け取り、依頼の紙が無造作に張られている掲示板に歩き出したところでおばちゃんに呼び止められた。
「まだ一つ質問があるから答えてくれないかねぇ」
「なんだ?」
桜華はその口から投げかけられた問いにすぐには答えられなかった。
桜華の頭を白く染めるその問いが耳を、脳を支配していく………
『お前は日本人なのか』、と……
ありがとうございます




