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円卓のヴェリタブル  作者: 宗園やや
第三章
87/333

16

二日続いた雨が上がり、晴天の朝となった。


「雨の後は雑草がニョキニョキ生えるから注意してね」


リビングで朝食を摂っている仲間の三人に注意点を伝えて庭の畑を任せたイヤナは、露でビチョビチョの丘を降りる。

慎重に歩かないと草で滑って転びそうだ。

村に入ったイヤナは、農家の人に挨拶する前に畑を回る。

とても広い農地に無数の野菜が植えられている。

殆どが売り物で、村の外にも運ばれて行くらしい。

だから細心の注意を払って育てなければならないのだ。


「あ、イヤナちゃん。おはよう」


農家のおばさんも畑の見回りをしていたらしく、質素なドレスを着た赤毛少女を見付けて近寄って来た。


「おはようございます。結構強い雨だったから水没とか心配してたんですけど、大丈夫みたいですね」


「ああ」


二人で畑を回る。

あちこちに水溜りが出来ているが、特に何かをする必要は無い様だ。

鳥や虫の被害や病気等の目に見える異常も無い。


「イヤナちゃんが手入れをしている畑は、妙に育ちが良いんだよね。イヤナちゃんは『緑の手』の持ち主じゃないのかな」


「緑の手?」


おばさんが言うには、植物を育てるのが上手い人の事を緑の手の持ち主と呼ぶらしい。

逆に、どうやっても植物を枯らす人は『赤の手』と言うそうだ。

豆知識を得たイヤナは自分の両手を見詰めてみた。

もちろん見慣れた肌色。


「私には他に出来る事が無いってだけですよ。野菜をちゃんと育てないと飢え死にですしね」


「ははは。まぁね」


見回りを終えたら、大きなビニールハウスで育てている物凄い量の苗に水をやる。

これの余りを貰う為に手伝いをしている訳なので、慈しんで世話をする。

そうしていると他の人も起きて来て、複数建っているビニールハウスと用水路を大勢で往復して水を運ぶ。

苗達は太く元気に育っていて、早く広い場所に移りたそうにしている。


「もうそろそろ植える時期ですね。みんなにも声を掛けるので、予定日が決まったらを教えてください。お師匠様の許可も取らないといけませんし」


「ああ。分かってるよ」


やる気満々なイヤナに笑顔で頷いてくれるおばさん。

そして仕事が終わり、蒸し暑いビニールハウスから出た。


「じゃ、お疲れさまでした」


額の汗を拭いながら頭を下げたイヤナは、ここで農家の人達と別れた。

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