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広い農舎の掃除を終えたイヤナは、捲くっていた袖を直した。
「これで良し、と。――じゃ、今日はこれで帰ります」
一緒に掃除をしていたウェンダがおや?と言う顔をする。
「もう帰っちゃうの?いつもみたいにお昼を食べて行けば良いのに」
「今日から魔法の修行が始まるんです。しばらくの間、午前で仕事は終わりです。おばさんにもそう伝えてありますから」
「そっか。残念だけど、また明日」
「はい。また明日」
小さく手を振って別れの挨拶をしたイヤナは、小走りで農家を後にする。
でも、残念ってどう言う意味だろう。
まぁ良いか。
気になるけど、考えても分からないし。
封印の丘を登って遺跡に戻ると、三人の少女がリビングで朝の残りのパンを齧っていた。
「ただいま。お師匠様は?」
訊くと、セレバーナが応える。
「おかえり。部屋だ。いつも昼は自室で取っている。らしい」
サコが罰ゲームを受ける原因になったお出掛けの間、イヤナは一人で留守番をした。
その時は、朝昼晩と、食事の準備が整ったら呼んでいた。
だから三食欠かさず降りて来たし、二人で食事を取った。
三人が帰って来た今は、イヤナ一人が下の村に手伝いに行っていて昼に居ないから、誰も呼んでいない様だ。
お師匠様は呼ばれないと降りて来ないらしい。
「そう。ちゃんと食べているのかな」
「それは確認のしようがないから分からない。子供じゃないから大丈夫だろう」
「そうだろうけど……。まぁ、残り物しかないから呼ばなくても良いか」
自分の椅子に座ったイヤナは、みんなと同じメニューであるパンと湯冷ましの昼食を摂った。




