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円卓のヴェリタブル  作者: 宗園やや
第二章
56/333

18

豪華な夕食をたらふく食べた三人の少女は、サコの自室で眠る事になった。

その部屋も畳が敷かれていて、床に直接布団を敷いて横になった。


「ふぅむ。これが布団か。寝る時に視点が低いのは奇妙な感覚だな。落ち着かん」


「サコのお部屋って、物が少ないですわね」


新鮮な体験に胸を躍らせていたセレバーナとペルルドールだったが、疲れていたせいで一瞬で眠ってしまった。

そして、翌日。

サコが子供の頃に着ていた服を借りたセレバーナとペルルドールは、道場の隅に用意された椅子に座って見学した。

お忍びなので王女だとは紹介されなかったが、居るだけで周りの空気を変える金髪美少女はかなり目立っていた。

ワザと顔を隠していないので、分かる人には正体がバレているだろう。


「泊りでの道場生は約三十名。通いは約百名でございます」


サコの母親の説明を受けながら組み手の稽古を眺める。

男臭い怒号が渦巻く暑苦しい空間かと思っていたが、実際は綺麗に整列しての練習だった。

下っぱ騎士の訓練の方がよっぽど泥臭い。


「女性も大勢いらっしゃいますね」


「はい。若い女性向けの健康と護身の為の稽古風エクササイズも、週三回のペースで行っておりますので」


「それは素晴らしいですわ」


「山奥だからもっとハングリーな感じだと思っていたんですが。進んだ考えをお持ちの様ですね」


ペルルドールと並んで座っているセレバーナも感心する。


「師範代であるトハサのアイデアです。王都にも道場支部第一号を作る計画もございます。数年先の話ですけれども」


「王都にも。それは楽しみです」


ペルルドールは、小首を傾げながらふんわりと微笑んだ。

セレバーナからすれば猫を被っている様に見えるが、遺跡に来たばかりの時はこんな感じだった。

良い物を食べてのんびりとした時間を過ごせば王女らしくなるのか。

侵入者が絶対に入れない遺跡の中でセレブを気取っても無意味だから、自然と地が出て来たんだろう。


「その師範代は、今どちらに?」


出された緑茶を啜ったセレバーナは、一息吐いてから質問する。


「あちらで若手の指導をしているのがトハサです」


セレバーナは、サコの母親が示す方を見た。

そこには二十代半ばの男性が居た。

頭は丸刈りで、手足が太く胸板が厚いのは勿論、首が頭周りと同じくらい太い。

背も高く、遠目で見ても強そうだ。

セレバーナとペルルドールが二人がかりで襲い掛かっても、子猫がじゃれて遊んでいる程度にしか受け取らないだろう。


「ふむ」


真面目そうな人だなと思ったセレバーナは、視線を悟られない様に注意しながら師範代に注目した。

金銭トラブルの場合は事業拡大を図っている人物が怪しいのが定石だが、サコの悩みの内容は何も知らない。

この話が無関係の可能性も有る。

だから黒髪ツインテール少女はペルルドールと共にサコの母親の言葉に耳を傾けた。

何かしらのヒントを聞き逃さない様に。

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