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三人の少女を包んだ黒い煙はすぐに晴れた。
「うむ。見事な瞬間移動だ」
セレバーナは、目の前に広がる緑の森を確認してから安堵の鼻息を吹いた。
先程までの街並みは綺麗さっぱり消えている。
「確かにハサランガム山の麓だ。こんな瞬間移動がマジックアイテムで出来るなんて。魔法って凄いな」
幼い頃から慣れ親しんで来た風景を前にしたサコは、自宅が有る中腹の方向に顔を向けた。
一ヵ月ぶりの故郷だ。
「何ですの?さっきの人達は何ですの?説明してください!」
ペルルドールは、麦わら帽子のツバを上げながら興奮している。
「落ち付け、ペルルドール。もう安全だ」
「安全なのは分かっています!だから訊いているんです!」
「なに、簡単な事だ。さっきの服屋がチンピラを使い、生意気な小娘を懲らしめようとしただけだ。なにせ、金貨七十一枚も取られたんだものな」
「しただけって……。犯罪じゃないんですの?」
「犯罪だ。金を奪われ、ドレスは帰って来ず、私達もどこかに売られる。トリプル犯罪だ」
セレバーナは自分の懐を軽く叩いた。
ドレスを売って得たお金は無事。
「彼等に泣かされた罪の無い人は大勢居るだろうな。何とかしたいのなら、第二王女の名前を使って街に抗議でもしてみれば良い」
「それは出来ません。だって、わたくしはお城を出ていますから。抗議するには、わたくし本人が証拠を持って行くしかありません」
「そうだ。彼等の事は警察に任せるしかないし、彼等の存在は我々の人生には全く関係が無い。関係有ったら困る。今、私達がやるべき事は」
目の前の山道を見上げるセレバーナ。
「サコの実家に行く事だからだ」




