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円卓のヴェリタブル  作者: 宗園やや
第二章
47/333

9

三人の少女は、見送るイヤナに手を振りながら封印の丘を下った。

そして村の役場に向かう。

最果ての村は農業が盛んなので、朝早くから畑に出る人が多い。

そんな人達が不自由無く仕事が出来る様に、役場はすでに開いている。


「おはようございます。予約しておいた郵便隊の同乗許可証をお願いします」


セレバーナが代表してカウンターに手を突くと、役場のお姉さんが立ち上がった。


「おはようございます。郵便隊は村の入り口で貴女達を待っている筈です。すでに出発準備は整っているらしいので急いでください」


カウンターから出て来たお姉さんは、三枚の許可証を旅支度姿の少女に渡した。


「貴女達がこの村から出る時は、特に許可は必要ないそうです。これは帰りの通行手形です。これを示せばこの村に帰って来れます」


「ふむ。封印の丘はこの村に含まれていない、と言う事ですか?」


「国の特例で、あそこは国外となっているそうです。その上、貴女達は全員村人ではありません。この村からの通行手形を持っている方が不自然だそうです」


「分かりました。――少し遅刻している様だ。みんな、走ろう」


手形の料金を払ってから役所を出た三人は、走って村の入り口を目指す。

荷物は軽いが嵩張っているので走り難い。


「セレバーナ。郵便隊って何ですの?」


ペルルドールが走りながら訊く。


「この村の様な僻地に郵便や生活物資を届けるキャラバンの事だ。その帰りに、この村の野菜を都会に運んだりもする。お金を払えば人間も運んでくれる」


「あ、それで旅をするんですのね」


「うむ。私はそれでここまで来た。女の足では、徒歩での旅はきつい」


「私は歩いて来たけど。って、私と二人を比べちゃダメか」


「サコを基準にされたら、大の大人でも敵いませんわ」


三人は走りながら笑う。


「お、見えて来た。あれがそうだな」


セレバーナが指差した先には、大きな幌馬車が何台も停まっていた。

駆け寄る少女達に気付いた一人の中年男性が手を振る。


「君達が同乗者か?」


「はい」


「おう。もう少し遅かったら出発していたところだ。三人で良いんだな?許可証は?」


「必要無いとの事で、有りません」


「無いのか。冒険者、って歳じゃないよな。余所者か。なら、一人銀貨四枚。三人で十二枚だ」


「お高いですね」


「住所不定な奴ばかりの冒険者料金だからな。保障とか保険とか色々有るんだよ」


「なら仕方が有りませんね」


セレバーナが纏めて料金を支払い、最後尾の幌馬車に三人で乗り込む。

幌馬車の中は厳重に封がされた荷物で一杯だった。

他の人は居ない。


「わたくしの馬車とは大違いですね。座る所が有りませんわ」


「王家の乗り物を基準にされてもな。床に座ろう。汚れても良いドレスを着ているしな」


荷物を下すと、郵便隊はすぐに出発した。

揺れる荷台の中で、各々が座り心地の良い場所を探した。

落ち着いてからサコとペルルドールが自分の分の料金をセレバーナに返す。


「朝食を食べられなかったな。仕方ない。弁当を二回に分けて食べよう」


絶え間無く揺れる幌馬車の中で物を食べたり雑談したりシャーフーチの悪口を言ったりしている内に夕方が訪れた。

周りが夕焼けで真っ赤になった頃、やっと幌馬車が停まる。


「到着かな。降りる準備を始めよう」


セレバーナの言葉に従い、自分達の荷物を持つ三人。

ペルルドールは大き目の麦わら帽子を深く被る。


「着いたぞ、お嬢さん達。郵便物を盗んでいないか、簡単に調べさせて貰うよ。決まりだから従ってくれ」


「はい」


後部ステップから荷台を覗いた中年男性は、中が荒らされていないかをチェックした。


「ええと、良し。荷物を固定しているロープはそのままだな。オッケーだ。さぁ、降りてくれ」

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