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円卓のヴェリタブル  作者: 宗園やや
第一章
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30

苗植えが終わったのは夕方になってからだった。

少女達は一時的に解散し、身体に付いた土を落とした。

待ちに待った魔法の勉強がついに始まるので、キビキビと動いてリビングに集まる。

セレバーナはいつもの制服に、ペルルドールは可愛らしいピンクのワンピースに着替えている。

イヤナは着替える服が無いのでそのまま。

サコも着替えたが、ラフな見た目は全く変わっていない。


「全員揃っていますね。なら、すぐに始めましょうか」


二階から降りて来たシャーフーチが、少女達を自分の席に座らせた。

リビングの入り口を覆っていたカーテンはすでに取り払われていて、木の窓も開けっ放し。

その窓から夕日が差し込んでおり、リビングは真っ赤に染まっている。


「日暮れも近いですし、畑仕事でお疲れでしょうから、今日は基礎のお話だけをしましょう」


円卓の上座にシャーフーチが座り、正面に座っている少女達に向けて語る。

昼間とは違い、師匠は厳かな雰囲気に包まれている。

なので少女達の背筋が自然と伸びる。


「魔法には七つの属性が存在します」


世界。

生命。

時間。

空気。

地面。

光線。

汚穢。


「この七つの属性に従って、この世の中は形造られています」


シャーフーチは声のトーンを上げて言葉を続ける。


「世界魔法とは、心。自分以外の存在を知る事。自分の中の存在を知る事。知らない事を知る事」


胸に手を当てるシャーフーチ。


「生命魔法とは、生。産まれる事。生きる事。先へ進む事」


窓の外を指差すシャーフーチ。


「時間魔法とは、流。風の流れ。水の流れ。人の流れ」


弟子達全員を見渡すシャーフーチ。


「空気魔法とは、有。どこにでも存在する物。水に溶ける物。形の無い物」


両手を広げるシャーフーチ。


「地面魔法とは、萌。芽吹き。腐敗。力強さ」


円卓を軽く叩くシャーフーチ。


「光線魔法とは、光。太陽の熱。月の満ち欠け。星の瞬き」


ペルルドール、自分、セレバーナの順で指差すシャーフーチ。


「汚穢魔法とは、死。息を吸って吐く事。物を食べて排泄する事。生命の終わりを迎える事」


目を瞑るシャーフーチ。


「この七つは、混ざり合ったり、独立して存在したりしています。その理を読み、自分の意のままに操る。それが魔法を使うと言う事です」


「その七つは、曜日の元になっていますね」


セレバーナがそう言うと、サコが感心した風に手を打った。


「なるほど。だから一週間は七日なのか」


月火水木金土日、とゆっくり言うシャーフーチ。


「月曜日は世界。日曜日は光線。曜日に合った属性の魔法の効果が上がったりします」


時が進み、外が段々と薄暗くなって行く。

そこでシャーフーチが指を鳴らすと、風が吹いて木の窓が閉まった。

リビングが暗くなったが、すぐに暖炉の上に置いてある太いロウソクに火が付いた。


「水曜日に風魔法が強くなり、火曜日に火魔法が強くなる。この法則を忘れて魔法を使うと、窓が壊れたり、一瞬でロウソクが燃え尽きたりします」


「逆に、上手く使えば小さな火種でも生木に火が点けられる、と言う事ですね?」


そう言うセレバーナに頷くシャーフーチ。


「これらの法則を使う魔法の正式名称は『女神魔法』と言います」


「そんなに一杯魔法が有るんですか。じゃ、お師匠様の得意な魔法は何ですか?」


イヤナが訊く。


「全てです。それが魔法使いとして一人前になると言う事。ですが、それとは別に潜在能力と言う物が存在します」


「わたくしのアンロックですね」


ペルルドールは、自分の手に出来た血豆を見ながら言う。

それの違和感が気になって仕方が無い。


「はい。女神魔法が神の力なら、潜在能力は人の力。その人の才能です」


「潜在能力を持っていない人も居るんですか?」


シャーフーチは、首を横に振ってセレバーナに応える。


「生きている人間なら、必ず持っています。基本的には魔法ではなく、何かしらの技能と言う形で」


「じゃ、お師匠様の潜在能力は何ですか?」


「残念ながら、イヤナの質問には応えられません。秘密です。今回のお話にも関係有りませんしね。そう言う能力も有ると言う事だけ覚えておいてください」

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