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円卓のヴェリタブル  作者: 宗園やや
第九章
294/333

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神学校から離れた通りなのに、若者向けの食べ物屋は意外と沢山有った。

安価で満腹になれるハンバーガーを平らげた二人は、デザートのクレープ頬張りながら歩を進めた。

繁華街から離れると街灯も人出も極端に少なくなる。


「冒険者ギルドの隣に魔法ギルドも有ると言う話だったな。今は関係無いが、位置と規模の確認をして置こう」


「えっと、ここに有るのは地方支部って奴なのかな。マジックアイテムが飾られてて、お師匠様がドラゴンを育ててるアソコが本部で」


「そうなるな。私達が利用する事は無いだろうが、絶対に無い事は無い。本部に緊急連絡したくなったりするかも知れないからな」


全く活気の無い魔法ギルドの存在を確かめた二人の少女は、その隣で入り口を開けっ放しにしている冒険者ギルドに入った。

内装は普通の飲み屋だが、クエスト等の手続きをする派手で大きなカウンターが有るので、一般人が間違えて入ったとしてもここがどこだか一目で分かる。

制服を着た若い娘が現れたと言うのに、酒を飲んでいる冒険者達は誰も反応しない。

背が低いセレバーナはともかく、割と胸が目立つイヤナが酔っぱらいの興味を引かないのは少々不自然だ。

なぜかと思って周囲を見渡してみると、神学校の校章を付けた大男がカウンターの向こうで睨みを効かせていた。

セレバーナが来ると連絡を受けていた訳ではなく、部活等で学生が来る事が有るから、若者を護る為に常駐しているんだろう。


「さて。どこに行けば勇者の動きが分かるんだろう。冒険者はここで情報収集をするはずだから、それ用の何かが有ると思うんだが」


「あそこじゃない?」


イヤナが指差す方に総合受付と書かれたカウンターが有った。


「そうだな。行ってみよう。――すみません。勇者様の動向を探っているのですが、何か情報はございませんか?」


二人の少女が着ている制服を一瞥した総合受付のおばさんは、無愛想ながらも真っ直ぐ向き合って応えてくれた。

この街には冒険が少ないのでヒマなんだろう。


「勇者の情報は、そんなには無いよ。それでも良い?」


「構いません」


そんなに無いと言う割りには、結構詳しい情報を提供してくれた。

普通の冒険者なら余程目立たない限りは大した情報は集まらないが、勇者と言う称号を掲げた有名人だから動く度に話題を振り撒いている様だ。


「ありがとうございました。助かりました」


得た情報を持って冒険者ギルドを後にする二人の少女。

そして適当な小道に入って人目を避ける。

もうすぐ日が沈むので、未成年がウロウロしていると補導員に声を掛けられてしまう。


「参ったな。魔物に襲われた人が複数人居たとは」


魔物に襲われた人は、クレアを含めて三人。

全員が街中で襲われている。


「クレアが寮の近くに有る食べ物屋付近で襲われたのは、二番目の事件か。彼女が行くとしたら、あの店かな」


セレバーナは街の地理を頭に思い描く。

他の二人は公園と河原で襲われていて、襲われた状況も時間はバラバラ。

性別年齢職業は三人ともバラバラ。

三人とも赤の他人で、今の時点では何の共通点も無い。

手掛かりらしい物が一切無いので、勇者は魔物が潜んでいそうな所を虱潰しに当たっているとの事。


「今の状況から推理すると、犯人は個人的な恨みで動いている感じではない。依頼されて魔物を使う専門家の恐れが有る」


「専門家?どういう事?」


「つまり、クレアの親に恨みを持つ者が実行犯ではなく、金で頼まれて犯罪を犯した奴が犯人だと言う事だ。もしもプロだったら尻尾は出さない」


「勇者様は犯人を見付けられないって事?」


「素人捜査では、まず無理だな。捜査のプロである警察を引かせたせいで、余計に状況が悪い」


「どうするの?」


「どうするかな。クレア以外の二人の方は警察の捜査が続いているかも知れないが、関係無い我々に情報を漏らす訳が無いしなぁ」


小道が完全に暗闇になる。

大通りに出ればまだ夕日が残っているだろうが、今日はもう時間切れとしよう。


「仕方が無い。勇者の虱潰しに付き合っていたらいつ会えるか分からない。明日の朝、マギに勇者が居る方向だけを教えて貰おう。良いかな?」


「良いよ。今すぐでも良いけど」


「今の位置が分かっても意味が無い。神学校の街だが、夜が安全だと言う保証が無いからな」


「そっか。人が多い都会は悪い人が多いんだっけ。明日にするしかない訳か」


「うむ。だから今日は宿に戻ろう」


頷き合った二人の少女は、転移魔法を使って小道から姿を消した。

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