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年長者であるブラックを上座にして、少女三人もソファーに座った。
「セレバーナが学校から出て行った丁度その頃、お父様がこちらにいらしたそうです。入れ違いだったんですね」
クレアが満面の笑みで言う。
セレバーナは幼い頃から神学校の寮で暮らしていて、一度も里帰りをしていない。
家からの差し入れも無かったので、家族との再会は数年ぶりとなる。
それを知っているので感動の対面だと思っているんだろう。
ブルーライト親子の詳しい事情と成り行きはユキ先生と学校上層部しか知らないので、友人が勘違いするのも仕方がない。
「ほほう。私が神学校に在籍していた頃は、まだここに居なかったと。偽名を使っているのは、私に存在を悟らせない様にしているのでは?と思ったんだが」
無表情で腕を組み、黒タイツを履いている足も組んでいるセレバーナが顎を上げる。
物凄く偉そうな座り方だ。
「ハハ、何を言ってるんだ。セレバーナが神学校に居る事を知らなかったんだぞ、俺は。偶然入れ違ったんだ」
対する父も見た目は偉そうに座っているが、表情が委縮している。
冷や汗が凄い。
「私を避けていたとかではなく、偶然ですか。私の存在はそこそこ有名だと思っていたのは自惚れだったと言う訳ですね。いや、お恥ずかしい」
金色の瞳に睨まれているブラックに笑顔を向けるクレア。
「お父様がこちらにいらしてから、教団への寄付金が倍増したそうです。彼の功績は素晴らしいんですのよ」
「ほう。俗っぽい言い方で申し訳ないが、自分の力で組織に貢献出来るほどのお金を集められるのなら大した物だ。見直しましたよ、お父さん」
「ハハ……」
「私はてっきりどこかの企業か大学で機械の研究開発をしているんだと思っていましたけどね。お爺さんの息子で私の親ですから」
ツインテール少女は無表情で父親を凝視し続ける。
その眼力は、粋がっている若者が敵対するグループにガンを飛ばしている様子に似ているな、とイヤナが思うほど強かった。
「まさか、こんな教団の幹部をなさっていらっしゃるとは。――まぁ、私も魔法の修行を始めてしまったので、人の事は言えないんですがね」
「そうだな。ハハハ……」
セレバーナは、愛想笑いしか返さない父から友人に視線を移す。
「クレアも寄付をしているのか?」
「私は学生だから寄付は出来ないの。神学生は入信出来ない決まりも有るし。それに、私の親はケチなので、そちらからも寄付は出来ません」
表情が暗くなるクレア。
「ああ、すまない。君の怪我は親のせいだったな」
「ううん、良いの。結果的にこの様な素晴らしい会に参加出来る様になったから、その部分だけは感謝してるし」
「気持ちは分かるぞ。なにしろ、私もお父さんに殺されかけたのだからな。クレアと同じく、親に不信感を持っている、と言う訳だ」
衝撃の事実を知って驚くクレアとイヤナ。
相変わらず無表情なセレバーナは、金色の瞳で再び父を見詰める。
「そのせいで私は親元を離され、神学校の寮に入れられた。だから私も結果的には感謝している。お陰で神学校主席になれたから」
さすがのクレアも場の空気を感じ取り、居心地悪そうに身動ぎした。
セレバーナがふんぞり返り、ブラックが委縮していたのはそう言う訳か。
「その時の動機は……私の保険金でしたか。今はここの幹部になれるほどの資金を集められる様になったのですから、もう私の命はいりませんよね?」
「あ、あの。ここは取り敢えず解散しましょうか。私、そろそろ寮に帰らないといけませんので」
一旦父娘を離そうと考えたのだろう、クレアが立ち上がりながらそう言う。
遠慮して別の椅子に移った他の大人達が空気の重さに居心地悪そうにしているので、そちらにも気を使った様だ。
「おっと、もうそんな時間か。折角の再会ですが、ここでお暇しましょう」
友人を困らせるつもりがないセレバーナも立ち上がり、イヤナに顔を向ける。
「サコを父親と戦わせたくなかったのは、私自身にこう言う事情が有ったからだ。父と娘がいがみ合うのは愚かな事だからな」
顔を上げる父。
その表情は救いを求める信徒の様だった。
実の娘にそんな顔を向けるとは、みっともない。
「だから、私は父を憎んでいない。結果的にではあるが神学校でクレアと言う友達が出来たから。そして最果ての地でも信頼出来る仲間が出来た」
ソファーから外れたセレバーナは、無表情で父に背を向ける。
「父が私をどう思っているかは分からないが、私は父に怒りを感じていない。もっとも、育てられた訳ではないから尊敬も感謝も無いがな」
声高に言って立ち去るセレバーナ。
しかし部屋の出入り口は鍵が閉められているので、クレアが奇妙なテンポのノックをした。
それがドアの鍵を開ける合図らしく、直後、自動ドアの様に細長い廊下が口を開いた。




