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片目を失ったクレア・エスカリーナは授業に復帰しているが、怪我が完治している訳ではない。
だから、朝、昼、夕方に必ず保健室に顔を出して薬を塗る。
と、ユキ先生が教えてくれた。
なので、セレバーナとイヤナは保健室で待機しつつ給食をご馳走になった。
「懐かしい味だ」
固いパン。
室温の牛乳。
うすっぺらいハムの揚げ物。
ほうれん草とニンジンの和え物。
そして、フルーツポンチ。
セレバーナは満足気に先割れスプーンを付けているが、イヤナは不満そうな顔をしている。
「不味い訳じゃないんだけど、美味しくないね。何て言うか、味の統一感が無いって言うか」
「うむ。だから不人気だった」
言葉とは真逆に美味しそうに食べながら話すセレバーナ。
給食は申請制なので、嫌なら食べなくて良い。
その場合は、自分で材料を買い、寮で弁当を自作する。
財布の中身に余裕が有れば、神学校前での営業を許可されている食堂や屋台で食べても良い。
だから半分くらいの生徒は弁当持ちだった。
「私は食に興味が無かったしお金も無かったから、タダで食べられる給食の方が良かったがな」
「そうなんだ。でも、自分で作れるならお弁当の方が良いよ、コレ」
イヤナは給食がお気に召さない様だ。
しかも、かなり。
しかし産まれが極貧な為、残す事はしない。
「イヤナが食べ物にそこまで言うのは珍しいな」
「だって、あんまりなんだもん。出来立てじゃないのはしょうがないけど、もうちょっとやりようが有ると思うんだ」
「遺跡でイヤナの料理を食べて思ったよ。給食、美味しくなかったなって。だから君の言葉に同意する」
「うふふ。ありがと」
そんな話をしていると、保健室のドアが静かに開けられた。
「失礼します」
大人しそうな声の持ち主は、くすんだ金髪の少女だった。
保健室に通うのが気だるいのか、視線を床に落としている。
そのせいで顔に影が掛かっていて表情が見えない。
「来たな」
セレバーナは先割れスプーンを置き、おもむろに立ち上がる。
普段とは違う気配に顔を上げた金髪の少女は、妙に量が多い黒髪をツインテールにしている少女の存在にようやく気が付いた。
「セレバーナ!」
「久しぶりだな、クレア。怪我をしたと聞いたんだが、大丈夫なのか?」
少女の頭に鉢巻の様に巻かれている包帯は、彼女の左目を覆い隠している。
様子だけは大怪我風だが、傷が見えないので判断し難い。
無事な右の瞳は宝石の様な緑色だった。
「大丈夫、とは言えないけど、何とか。セレバーナの方は元気そうね。そちらの方は?」
「彼女はイヤナ。魔法の修行を一緒にした同窓だ。訳有って共に行動している。その訳の流れで君の身に起きた事件について訊きたいのだが」
「良いわよ。でもその前に、ガーゼの交換をしても構わないかな」
自分の左目を指差すクレア。
その為に来たのだ。
「勿論だ。その間に食器を片付けよう。保健室前の廊下で待っている」
「分かったわ」




