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円卓のヴェリタブル  作者: 宗園やや
第九章
285/333

15

片目を失ったクレア・エスカリーナは授業に復帰しているが、怪我が完治している訳ではない。

だから、朝、昼、夕方に必ず保健室に顔を出して薬を塗る。

と、ユキ先生が教えてくれた。

なので、セレバーナとイヤナは保健室で待機しつつ給食をご馳走になった。


「懐かしい味だ」


固いパン。

室温の牛乳。

うすっぺらいハムの揚げ物。

ほうれん草とニンジンの和え物。

そして、フルーツポンチ。

セレバーナは満足気に先割れスプーンを付けているが、イヤナは不満そうな顔をしている。


「不味い訳じゃないんだけど、美味しくないね。何て言うか、味の統一感が無いって言うか」


「うむ。だから不人気だった」


言葉とは真逆に美味しそうに食べながら話すセレバーナ。

給食は申請制なので、嫌なら食べなくて良い。

その場合は、自分で材料を買い、寮で弁当を自作する。

財布の中身に余裕が有れば、神学校前での営業を許可されている食堂や屋台で食べても良い。

だから半分くらいの生徒は弁当持ちだった。


「私は食に興味が無かったしお金も無かったから、タダで食べられる給食の方が良かったがな」


「そうなんだ。でも、自分で作れるならお弁当の方が良いよ、コレ」


イヤナは給食がお気に召さない様だ。

しかも、かなり。

しかし産まれが極貧な為、残す事はしない。


「イヤナが食べ物にそこまで言うのは珍しいな」


「だって、あんまりなんだもん。出来立てじゃないのはしょうがないけど、もうちょっとやりようが有ると思うんだ」


「遺跡でイヤナの料理を食べて思ったよ。給食、美味しくなかったなって。だから君の言葉に同意する」


「うふふ。ありがと」


そんな話をしていると、保健室のドアが静かに開けられた。


「失礼します」


大人しそうな声の持ち主は、くすんだ金髪の少女だった。

保健室に通うのが気だるいのか、視線を床に落としている。

そのせいで顔に影が掛かっていて表情が見えない。


「来たな」


セレバーナは先割れスプーンを置き、おもむろに立ち上がる。

普段とは違う気配に顔を上げた金髪の少女は、妙に量が多い黒髪をツインテールにしている少女の存在にようやく気が付いた。


「セレバーナ!」


「久しぶりだな、クレア。怪我をしたと聞いたんだが、大丈夫なのか?」


少女の頭に鉢巻の様に巻かれている包帯は、彼女の左目を覆い隠している。

様子だけは大怪我風だが、傷が見えないので判断し難い。

無事な右の瞳は宝石の様な緑色だった。


「大丈夫、とは言えないけど、何とか。セレバーナの方は元気そうね。そちらの方は?」


「彼女はイヤナ。魔法の修行を一緒にした同窓だ。訳有って共に行動している。その訳の流れで君の身に起きた事件について訊きたいのだが」


「良いわよ。でもその前に、ガーゼの交換をしても構わないかな」


自分の左目を指差すクレア。

その為に来たのだ。


「勿論だ。その間に食器を片付けよう。保健室前の廊下で待っている」


「分かったわ」

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