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円卓のヴェリタブル  作者: 宗園やや
第八章
244/333

7

二十分ほど待つと、手と足だけに赤い鎧を着けたプロンヤが現れた。

見苦しくない様に薄いポンチョの様な物を羽織っている。

少々寒そうな格好だが、身体を鍛えているから平気なのだろう。

格闘家のサコも薄着だったし。


「セレバーナさん。イヤナさん。お久しぶりです。どうされました?何か良く無い事でもございましたか?」


最果てに引き籠っているはずの顔ぶれの登場に慌てている女騎士。

その様子を見た門番は、無礼な小娘が怒られると思っていた当てが外れて戸惑っている。


「お久しぶりです。まずはお礼を。私が入院した際、便宜を計らって頂き、本当にありがとうございました。助かりました」


門番が見ている前で、ツインテールの頭を深く下げるセレバーナ。

ついでにイヤナも下げた。


「いいえ。セレバーナさんの助けになったのなら、それは私の喜びにもなります。どうぞお気になさらずに」


姿勢を正したセレバーナは、肩に掛かったツインテールを手で払って雰囲気をリセットした。


「では本題に。ペルルドールに用事が有るんです。会えますでしょうか」


「そうですね。ええと――」


プロンヤは懐中時計を取り出し、時間を確認する。


「一時間後にお勉強の時間が終わります。その後の休憩時間で良ければ。二十分、と言ったところでしょうか」


「それで結構です。テレパシーが通じればすぐ終わると思ってここから試したのですが、やはり魔法防壁に邪魔されて届きませんでした」


「王城の警備は万全ですから当然です。ではこちらへ」


女騎士に先導され、門の中に入る少女二人。

王城の敷地は広く、姫城まで十分以上も歩かされた。

その間を埋める様にプロンヤが雑談を始める。


「セレバーナさん。お身体の具合はいかがですか?姫がとても心配しておられます」


「健康です。時折発作の気配がするので無茶は出来ませんが。逆に言えば無茶をしなければ問題は無い、と言った感じですね」


「なるほど」


「この後、病院に行って検査の予約をする予定です。もっとも、ペルルドールとの話が順調に行けば、ですが」


「難しい話ですか?」


「いえ。一国の王女に会える保証が無いので、病院に行く時間が無くなる事態もあり得るかと。こうして門内に入れただけでも奇跡ですし」


「確かに。ですが、貴女達がお見えになられたのなら、姫がお会いになられない訳がございません。イヤナさんもお変わり無い様で」


「はい。プロンヤさんも。――その格好は、お寛ぎの最中でしたか?もうしそうなら、ごめんなさい」


「姫がお勉強をなさっている時は退屈ですから。お気になさらず」


「なら良かったです。ペルルドールは元気ですか?」


「お元気です。ただ、貴女達との修行の日々を思い出されているのか、時折ボンヤリとなさっておいでです」


口の端を上げるセレバーナ。


「フフ。一国の王女が貧乏暮しを懐かしむなんて、随分おかしな話だ」


イヤナも笑みながら冬の空を見上げる。


「でも、また四人で暮らせたら楽しいだろうね。無理だけど」


「無理だが、な」


王女と同じ様な表情をする二人の少女。

それを見てプロンヤは思った。

この子達は、まだ姫と心が繋がっている。

姫と同じく、過去を懐かしみ、仲間との別れを悲しんでいる。


「では、こちらでお待ちください。必ず、必ず姫をお連れ致します」


姫城に入った二人の少女は、調度品の豪華さが眩しい応接間に通された。

妙に意気込んでいるプロンヤに不思議そうな視線を向けたセレバーナは、すぐに表情を和らげて頭を下げた。

二度と会えない覚悟をして別れた事を知っているのならば、この再会はペルルドールが喜ぶと思っているのだろう。


「宜しくお願いします」

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