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円卓のヴェリタブル  作者: 宗園やや
第一章
23/333

23

それから一週間が経った。

魔法使いの弟子となった四人の少女は、下の村に毎日通い、無事に農作業をやり遂げた。

体力が有るイヤナとサコが土を耕し、手先が器用なペルルドールとセレバーナが種や苗を植え、と言う感じで役割分担したそうだ。

貰えた給金はスズメの涙ほど。

喜んでいるのはイヤナだけで、懐の寂しさが露骨に食事の質の低下に繋がった。

今朝の食事は、しなびた大根を塩水で煮た物だけ。

食べ盛りな少女達の不満が募る。

特に大柄なサコは一番空腹に悩まされている。


「シャーフーチ。野生動物を捕まえて食べても良いですかね」


髪を切り、ショートカットになったサコが言う。

防寒の為に冬の間だけ伸ばしていたらしい。


「構いませんが、外で行動する時は四人一緒でお願いしますよ」


「それより、魔法の修行はいつから始めるんですの?」


ペルルドールが唇を尖らせて言う。

来たばかりの時は人形の様だった金髪美少女は、この一週間で性格が変わり、普通の女の子みたいになって来た。

空腹と疲労で余裕が無くなり、上品ではいられなくなったせいだろう。

扇子を持つ事も無くなった。


「栄養失調と言う状態をご存じですか?シャーフーチ」


目の下にクマを作っているセレバーナが言う。

疲れ過ぎで眠れない日が有るらしい。


「これくらいなら、まだまだ大丈夫だよ。エヘヘ。限界までお腹が空くと違う世界が見えちゃうから、そうなってから慌てよう」


イヤナだけは、ずっと変わらず笑顔でいる。


「別に食べ物が無くなった訳じゃないんだし。頑張る頑張る!――で、お師匠様。今日から何をしますか?」


シャーフーチは、少女達の様子を眺めながら考える。


「まだ農作業は終わっていないんですよね?」


「はい。半分くらいかな?区切りが良かったので予定通り止めましたが、もう一週間くらいはやって欲しいって言われました」


ペルルドールとセレバーナが血走った眼でイヤナを睨む。

余計な事は言うな、と念を送りながら。


「じゃ、一週間延長しましょうか。出来れば、お給金を増やして貰って。空腹を訴えれば色を付けて貰えるでしょう」


「ちょっと待ってください!魔法のお勉強はどうなりますの?わたくしは野菜を植えに来た訳ではありませんのよ!?」


藤椅子を鳴らせて立ち上がったペルルドールが当然の抗議をする。

しかしシャーフーチは涼しい顔で応える。


「魔法の修行は焦ったら危険なのです。先は長いので、慌てず騒がず、のんびりと体力作りをしてください。これくらいでへばる様では魔法は使えません」


頬を膨らませてイラ付いたペルルドールだったが、イヤナからも仕事をしないとご飯が食べられなくなると説得され、渋々下の村に出掛ける。


「気持ち悪い……、大嫌い……、気持ち悪い……、大嫌い……」


壊れた蓄音器の様に同じ言葉を呟いているモンペ姿のペルルドールは、サコとイヤナが耕した(うね)に指を突き刺してほじくっている。

それで出来た穴にセレバーナが春キャベツの苗を植えて行く。

金髪美少女の仕事が一番楽だが、等間隔で穴を掘らなければならないので、意外と気を使う。

そうしているとお昼休みになり、いつも通り農家の縁側で昼食をごちそうになる。

これが有るお陰で命が繋がっていると言える。


「今日のゴハンも美味しいね!」


イヤナが明るく言うが、セレバーナとペルルドールは無言で頷くのみ。

仕事中に喋る体力は、まだ付いていなかった。

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