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面倒なので昼食も食べないで読書をしていると、日の光が弱くなって来た。
今日が終わりを迎えようとしているのだ。
そう言えばあの子達はどうなったのかなと思って顔を上げると、夕焼けの中、四人の弟子が丘を登っている姿が見えた。
「おや?何か有ったんでしょうか」
マンガを下したシャーフーチは、開けた窓から身を乗り出して弟子達を見下ろす。
ペルルドールはサコに背負われ、セレバーナはイヤナに背負われている。
背負われている二人はワンピースと制服を着て出て行った筈なのに、今はモンペを着ている。
土弄りをする服装ではなかったので、手伝いに行った農家の人が貸してくれたのか。
「おかえりなさい。その子達はどうかしたんですか?」
気になったシャーフーチは、一階に下りて弟子達を出迎えた。
「大した事は有りません。この二人の体力が圧倒的に無かっただけです」
サコが苦笑しながら応える。
藤椅子に座らされたペルルドールと、円卓に突っ伏しているセレバーナは一言も喋らない。
「王族と神学生だから体力が無いのは当然だ、と本人達は言い訳してましたけどね。――じゃ、お夕飯の準備をしますね」
イヤナは笑顔でキッチンに向かう。
「サコとイヤナはさすがに平気ですね。ペルルドールとセレバーナは体力作りが必要ですか」
へばっている二人は無反応。
凄く疲れている様だ。
「知力、体力、精神力。魔法を使うには、このみっつがとても重要になります。体力が無いのを当然だと思って貰いたくはないですね」
円卓の上座に座ったシャーフーチは、突っ伏しているツインテール少女のツムジを見ながら言う。
この子は身体が小さいので、力仕事が向いていないのはしょうがない。
でも、一人前に育てるつもりなら、そんな言い訳を許してはいけないらしい。
新人師匠向けの本にそう書いてあった。
「知力は自信無いなぁ」
可愛い声のサコがザンバラ頭を掻く。
こちらは逆に身体が大きいので、体力に不安は無さそうだ。
しかし、魔法使い向けの性格ではない様に見える。
まぁ、本人のやる気次第で向き不向きはどうにでもなるから、くじけずに頑張って貰うしかない。
「課題は多い様ですねぇ。さてさて」
「あ、そうだ、お師匠様ー!」
「はい、何でしょうか、イヤナ?」
「手伝いに行った農家で余った種や苗を貰える事になったんです。ここの庭に畑を作っても良いですか?」
「ええ、勿論良いですよ。四人で力を合わせて頑張ってください」
それを聞いたペルルドールが藤椅子からずり落ちた。
「帰って来てからも、農作業をするんですの……?」




