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円卓のヴェリタブル  作者: 宗園やや
第七章
214/333

9

不意に周囲が暗闇になった。

自由に身動き出来ない状態にある四人の少女が驚くと、不安を感じさせない様になのか、ギルド長が優しい声で喋る。


『こうして装備集めを依頼された穂波恵吾は、金の卵を産む青いとさかのニワトリと共に下界に降りた。

女神の為に働く勇者は下界の人間に尊敬されるし、資金は無限に産み出されるから、戦力集めには苦労しなかった。

その様子を少しだけ覗いてみよう』


視界が明るくなり、絶景が広がる。

どこかの山道の様だが、道のりは険しくなく、周囲の木々が程良く日陰を作っている。

ピクニックに丁度良いと思える様な風景の中で、冒険者らしい装備で身を固めている五人の人間が歩いている。

その中の一人はあの穂波恵吾だ。


『多少の入れ替えは有ったが、彼等が装備集めの主要メンバーだ。

何か気付く事は無いかな?』


全員が真っ先に気付いたのは、黒髪の男性。

次に、白髪の少年。


『そう、君達の師匠、シャーフーチが居るね。

彼は魔法剣士だ。

僕にも気付いた様だね。

僕は魔法使い。

先頭を歩くでかい彼が剣士コーヨコ。

現在の勇者の先祖だよ。

唯一の女性が見えるかな?

彼女は薬師で、神学校の設立者マイチドゥーサだよ』


少女達は現在の勇者と面識が有る。

体格の良い男性には、確かに現在の勇者の面影が有る。

唯一見覚えの無い薬師の女性は、何とも気弱そうな顔立ちをしている。

しかし大きな鞄を持っているのに歩くスピードは四人の男性に引けを取っていないので、見た目に反してかなりの体力を持っている。


『彼等は世界中を旅し、魔物を倒し、ダンジョンを攻略して行った。

そして女神に装備を送り続けた。

この時の彼等は知らなかったが、穂波恵吾の送った装備は女神の役に立っていた。

当然だ。

なにせ、「こんなアイテムが有れば便利だろうな」と彼が思えば、都合良く手に入るんだからね。

役に立たない訳が無い』


場面が代わり、穂波恵吾達は薄暗い洞窟の中で異形の魔物と戦っている。

彼等の装備は豪華に、そして強そうになっていた。

そりゃそうだ。

魔物と戦うのなら、彼等も強くならなければならない。

愚直に装備の全てを女神に送る事はせず、自分達が使える物は自分達で使うのは当たり前だ。


『彼等が見付けた装備を支給された勇者は他の女神の勇者を圧倒し、破竹の勢いで勢力を伸ばして行った。

穂波恵吾が想像し、ダンジョンの中で具現化していた最強装備は、七人居る女神達の想像の斜め上を行っていたから。

何がどう凄かったかの説明は、下界の僕達には出来ない。

僕達は世界全体の戦況を知る事が出来ないからね』


激しい戦闘の末、穂波恵吾達は魔物を倒す。

シャーフーチと穂波恵吾はその場に座り、難儀そうに溜息を吐いた。

黒髪の魔法剣士はこの頃からやる気が無い。

異世界人は戦闘能力が無い荷物持ちなので、緊張から解放されて気が抜けるのはしょうがないだろう。

コーヨコ、テイタートット、マイチドゥーサの三人は、魔物が守っていた宝箱を開けている。

白髪の魔法使いが魔法罠を、気弱そうな薬師が物理罠を調べ、腕力の有る戦士が蓋を開ける。

宝箱の中には冷気の白煙を湛えた剣が入っていた。


『後から女神目線に立って見てみれば、女神でさえも説明出来ない状態だと分かるんだけどね。

古い世界神が造って放置していた世界で育まれた発想なんて、新しい世代の神は知らなくて当然だからね。

たった今彼等が見付けたアイスソードも、他国の勇者は誰も持っていない武器だ。

魔法が籠っている装備が一般的なら、魔法使いや魔法剣士なんかいらないからね。

下界の常識を完璧に無視していたから、女神ストーンマテリアルの陣営は無敵だった。

そんな穂波恵吾が無責任に便利な物を欲したせいで、装備以外の物もどんどん進歩して行った。

普通なら生まれないはずの機械や活版印刷などの新技術も、何の脈絡も無しに普及して行った。

そんな感じだったけど、女神ストーンマテリアルは細かい事は気にせずに常勝ムードに包まれていた』

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