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朝食が終わると、寝起きのまま放置されていたペルルドールとセレバーナの髪が整えられた。
ペルルドールの金髪はストレートに。
セレバーナの量の多い黒髪はツインテールに。
「イヤナの言う通り、大きな農家に行ったら仕事が有ったんです。春野菜の苗を植えたり種を蒔いたりする仕事です。ぜひ手伝ってくれと言われました」
長髪な二人が髪を弄っている間に、サコが師匠に報告した。
「では、それに決定しましょう。この仕事は、あくまでも四人が仲良くなる為の物です。それを心得て、怪我の無い様に」
「はい」と返事をする四人の少女。
「畑に行くなら、そのドレスじゃ動き難いから着替えようか」
ペルルドールの金髪にクシを入れているイヤナが言う。
昨日の昼、メイドの手によって縦ロールにされていたせいで、そのクセが取れない。
素直で柔らかい髪なので、ちょっとくらい乱れていても見苦しくないか。
髪の直しを諦めたイヤナは、高価そうな材質で出来たクシをペルルドールに返した。
「動き難いと不都合が有るのでしたら、その様にしましょう」
イヤナと共に衣装部屋に移動したペルルドールは、黒いワンピースに着替えた。
赤いドレスを一人で脱ぐ事はまだ出来なかったが、ワンピースはさすがに一人で着れた。
「セレバーナも着替える?ペルルドールから借りて。その服が汚れたら困るでしょ?」
脱いだドレスを頑張ってハンガーに掛けている王女を残してリビングに戻ったイヤナが訊く。
「この制服は、多少の汚れなら自然に取れる魔法の布地で出来ているから大丈夫だ。一ヵ月着た切りでも臭わない優れ物なのだ」
「そんな服が有るんだ。まぁ、ワンピースも農作業向けの服じゃないから、セレバーナが良いなら良いか。じゃ、行って来ますね、お師匠様!」
「はい、いってらっしゃい」
四人の少女は、横一列に並んで元気に丘を降りて行った。
玄関まで出て弟子達を見送ったシャーフーチは、ドアを閉めながら大きな溜息を吐く。
「やれやれ。多感な少女と言うのは姦しいですねぇ、全く」
でも、四人とも良い子だ。
それがせめてもの救いか。
「さて。私も勉強しなければ」
自室に戻ったシャーフーチは、窓際の揺り椅子に座って師匠になる為の心得を読んだりマンガを読んだりした。




