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円卓のヴェリタブル  作者: 宗園やや
第六章
187/333

15

虎の巻を間違えずに読む事に必死なシャーフーチの話は続く。


「続いて魔力の込め方の説明をします。まず精神を集中し、自分の中に有る願いを魔力に変換します」


「願いを魔力に変換?仰っている意味が良く分かりません。それはどの様にして行うのでしょうか」


小首を傾げるペルルドールに応えるシャーフーチ。


「どうやって魔力を変換すれば己の願いが叶うか。それは自分で考えましょう。貴女の願いの形は貴女にしか分からないのですから」


「わたくしにしか、分からない……」


そんな事を言われてもイメージ出来ない。

困り顔の弟子に構わず、師は虎の巻を読み進める。


「そして、変換した魔力を逃がさず保ったまま箱を開け、魔力の全てを月織玉に込めてください」


「全て、ですか?それは例えですか?本当の意味で全てですか?」


サコが訊くと、シャーフーチはページを捲って正確な答えを探る。


「魔力が尽きて気絶する一歩手前まで。ですが、気を失ってはいけません。無意識、もしくは夢と言う名前の悪い魔力が入ってしまいますから」


「ハードですね。痛み、も良くないんでしょうか」


セレバーナは自分の胸に手を置く。

そこには手術によって付けられた大きな傷跡が有る。

傷は完全に塞がっている筈なのだが、時々無性に痛む。


「良くないでしょうね。魔力込めに集中して痛みを忘れられているのなら問題は無いでしょうが、痛みにイライラしていたら確実に良くない」


黒髪少女の仕草の意味を察しながら言うシャーフーチ。


「十分な魔力を込める自信が無い日は休んでも構いません。悩みが有って雑念が入りそうな日も休んで良いそうです。勿論、その分、変化が遅れます」


師の言葉を聞いたサコが口の端を上げる。


「今までならセレバーナが一番にクリアしていたけど、これなら大きな差が付けられる事はないだろうね。四人の魔力の強さは大体同じくらいなはずだから」


「うむ」


セレバーナは感情が読めない顔で頷いた。

こう言う時は大体が照れている。

なぜ照れたのかは分からないが。

仲間達と足並みを揃えられるのが嬉しいのだろうか。


「人生が掛かった修行ですから慎重に。これを一日一回行ってください。セレバーナは月一の定期検診で転移魔法を使うので、それも計算に入れてください」


「はい」


「魔力を込める時は、必ず素肌で月織玉を持ってください。箱越し、衣類越しは厳禁です。願いの種類によっては、口の中や、せ……あぁ?」


文字を追っていた目を本に近付けた後、顔を横に向けて咳払いするシャーフーチ。


「失礼。セクハラ的な表現が有ったので、そこは飛ばします。とにかく、自分の素肌から直接魔力を込める事。良いですね」


揃って返事をする少女達。

どんなセクハラがあったのかを訊く者は居ない。

詳しく説明されても実践する事は無いだろうし。


「魔力を込めた後は、自身の魔力を回復してください。慣れない内は手間取るでしょうが、慣れたら短時間で魔力の回復が出来る様になるそうです」


本を閉じるシャーフーチ。


「枯渇と回復を繰り返し、貴女達の魔力も一緒に成長させましょう。畑仕事で身体を鍛えて来た貴女達ならイメージ出来るでしょう?」


頷く少女達。

毎日運動を行う事によって、より強い身体を手に入れる事が出来る。

身体が小さいセレバーナが大手術に耐えられたのも、畑仕事で体力が増えていたからだ。

魔力もそれと同じ、と言いたいのだろう。

それについては今更な情報だが、説明に必死な師の邪魔をしない様に誰もツッコミを入れない。


「最後に。自分の月織玉は決して他人に見せてはいけません。他人の魔力が入ってしまうので。この修行中は他人を部屋に入れない方が良いですね」


少女達はお互いの顔を見合う。

そう言えば、仲間の部屋に遊びに行った事が無い。

イヤナだけはペルルドールの部屋に入った事が有るが、それだけだ。


「月織玉の魔力が満タンになったな、と感じたら、私に知らせてください。その際は貴女達の部屋に入って月織玉の状態を見ますので、そのつもりで」


「はい」


「では解散。月織玉を部屋に持って帰って貰いますが、持つ時は無心で。魔力遮断処理が施されていますが、箱越しで魔力込めが行われると不純物が入りますから」


「分かりました」


少女達は深呼吸して頭の中を空っぽにした後、目の前に置いてある小箱を持って自分の部屋に戻って行った。

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