8
「さて。『試しの二週間』の二週目です。体調と気力は万全ですか?」
師に訊かれ、門前で整列している少女達は一斉に頷いた。
ここ数日の気温は微妙に高めで不快だが、具合が悪くなるほどではない。
「セレバーナ。貴女は特に体力が心配されます。大丈夫ですね?」
「はい。何の問題も有りません」
「宜しい。では始めましょう。月曜日は何の魔法が強くなりますか?サコ」
いきなり名指しされた茶髪少女は驚き、思わず背筋を伸ばしてしまう。
「はいっ!世界魔法です!」
「そうですね。しかし、強くなる一方で弱くなる魔法も有ります。それは何だと思いますか?イヤナ」
「え?えーっと。えーっと……」
赤髪少女は口を半開きにして考える。
何も思い付かなかったので分からないと言おうとしたが、イヤナが言葉を発する前にシャーフーチが助け舟を出す。
「世界魔法は心でしたよね?心の反対に位置する物が弱くなるんです。それは何でしょう」
「こ、心の反対、ですか?うーんうーん……。心が無い物。生きていない物、でしょうか?」
「そうですね。ペルルドールは何だと思いますか」
「世界魔法は物を知る事でもありましたわ。となると、知識を得ようとしない事、でしょうか」
「それも正解ですね。知識を得ようとしない魔法とは何でしょうか。セレバーナ」
「物を腐らせる汚穢魔法。ただの現象である光線魔法。このふたつが候補でしょうか。時間、生命、地面は学ぶ所がありますね。空気は、どちらでしょう」
頷いたシャーフーチは、少女達を見渡す。
「結構。――みなさんに試して貰う魔法は、強くなっている魔法と弱くなっている魔法の同時行使です」
「同時行使?」
小首を傾げるペルルドール。
「そうです。複数の魔法を混ぜれば、より高度な魔法を使う事が出来ます。七つの属性に縛られる事もなくなります」
シャーフーチはペルルドールに視線を向ける。
「ただし精霊魔法を混ぜるのは禁止です。魔法の系統が違うので当然ですね。今後も絶対に女神魔法と精霊魔法は混ぜない様に。何が起きるか分かりませんので」
「はい」
「同時行使が出来ない事が失格の条件なので、自由に組み合わせてください。固定概念に囚われてはいけません。これからは貴女達の発想力を見せて貰います」
灰色のローブに包まれている両手を広げ、笑むシャーフーチ。
「世界魔法の真逆が汚穢魔法だと思うのならば、そうしてください。光線魔法だと思うのなら、そうしてください。では、どうぞ」




