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月曜日。
朝食を終えた一人の男性と四人の少女は石門の前に集合した。
「では、『試しの二週間』を始めます」
重みのある声で宣言したシャーフーチは、灰色のローブの中から四通の封筒を取り出した。
緊張した面持ちの弟子達は、それを注視する。
「月曜日は世界魔法が強くなります」
言うなり、四通の封筒を門の外に投げ捨てるシャーフーチ。
屋外なのに風に煽られる事も無く下り坂になっている草原に落ちる。
「今日の試験は、封筒の中身を世界魔法で知る事です。しかし、門から出てはいけません。世界魔法で解決してください」
修行の場である遺跡の正面を守っている石の門を見る少女達。
木で出来ている門扉は開いているが、そこから出てはいけないとなると封筒には手が届かない。
「質問、宜しいでしょうか」
右手を上げたセレバーナに発言を促すシャーフーチ。
「世界魔法とは、具体的にはどう言った物なのでしょう」
「それは各々で考えてください。ですが、間違った魔法を使った場合は失格となります。良く考えて行動してください」
次に手を上げたのはイヤナ。
シャーフーチは頷きで発言を許可する。
「みんなで相談しても良いですか?」
「ええ、ご自由に。その為に全員の足並みを揃えたのですから」
四人の少女達は円陣を組み、相談する。
「ごめん。私、どうして良いのか、検討も付かない」
申し訳なさそうに言うイヤナの肩に手を置くサコ。
「私も全く分からないよ。世界魔法って何だろうね」
二人の視線がセレバーナに向く。
それを受け、金色の瞳を白い雲に向ける黒髪少女。
「最初の授業でシャーフーチはこう言った。『世界魔法とは、心。自分以外の存在を知る事。自分の中の存在を知る事。知らない事を知る事』と」
「さすがセレバーナですわ。良く覚えていますわね」
ペルルドールは素直に感心する。
何ヶ月も前に聞いた言葉がそのままスラリと出て来るなんて。
「だから『封筒の中身』を『知る事』が試験になるのだろう」
視線を仲間達に戻すセレバーナ。
「そして、テレパシーを習った時にシャーフーチはそれを世界魔法と言った。しかし手紙は心を持たないからテレパシーは通じない」
「そうですわね。一体どうすれば……」
ペルルドールは考え込む。
イヤナとサコも考え込む。
しかし、セレバーナは一人だけ封筒に目をやる。
「ここは消去法で行ってみよう。取り敢えず案を出し、間違っていると思われる方法を消して行くのだ」
「どう言う事?」
キョトンとするイヤナに金色の瞳を向け直すセレバーナ。
「では、試しに私が案を出してみよう。魔法で風を起こして封筒のみを切り裂けば、中身を見る事は出来る。だが、これでは失格だ」
「どうして?」
「風を起こす魔法は、間違い無く空気魔法だからだ。なのでこれを廃案とする。――こうやって正解を探って行くのだ」
「なるほどー」
「早速、案をみんなで出してくれ。下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる。考えよう」
セレバーナの冷静な声に頷いた仲間達は、口をへの字にして思案を巡らせた。




