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円卓のヴェリタブル  作者: 宗園やや
第五章
153/333

12

昼食の後片付けを終えた少女達は、師匠の言い付けに従って再び円卓に着いた。


「さて。セレバーナが病院に行く事になりました。そこで打ち合わせをしましょう。まずは付き添いを誰にするかです」


上座に座っているシャーフーチが少女達の表情を見渡した。

ツインテール少女以外はいつも以上に真剣な目付きになっている。


「王都には神学校の行事で何度か行った事が有ります。ここからでは気軽に行き来出来る距離ではないので、私一人で行きます」


セレバーナは無表情で言う。

しかしシャーフーチはそれを認めなかった。


「いえ。病人に一人旅をさせる訳には行きません。病人でなくても、貴女は非力な方ですし。お守りの紙片を複数持たせるのもルール違反ですし」


「この遺跡に来る時は一人旅だったんだが。まぁ、弟子の身を案ずるのも師匠の義務と言う事で納得しましょう」


肩を竦めたセレバーナを見て、ペルルドールも肩を竦めた


「わたくしが一緒では逆に迷惑になるとの事なので、イヤナかサコでしょうね」


それを聞いたイヤナが元気良く手を上げる。


「はいはい、私が行きます。王都に行ってみたいです!」


「観光ではないんですよ、イヤナ。付き添いは……えっと、何をするんですの?」


病院に行った事が無いペルルドールが仲間達に訊いたが、誰も答えなかった。

シャーフーチも知らない。

石造りのリビングが微妙な空気に包まれたところでサコが思い付く。


「多分、私の両親みたいな事をするんじゃないの?」


サコの父親は、訳有ってベッドから降りられない身体になっている。

なので、サコの母親がその世話をしている。


「ああ、なるほど……。アレは大変そうですわね……」


深刻な顔のペルルドールに金色の瞳を向けるセレバーナ。


「あそこまでにはならないだろう。私は自分で動ける訳だから、ちょっと身の回りの世話をする程度だと思う。主に洗濯だろうな。他にも病院外への買い物とか」


「私、サコのご両親の事、知らない……」


イヤナは唇を尖らせ、拗ねた風に言う。

他の子達は知っているのに自分だけ知らないのは仲間外れ的な感じ。

だが、瞬時に機嫌を直す。


「ま、いっか。でもそうなると、ご両親の看護を知っているサコが行ったら良いのかなぁ」


「なら、三人で行ったらどう?私とイヤナが付き添い。帰りも一人旅にならないし」


サコが提案すると、ペルルドールがおもいっきり顔を顰めた。

綺麗な顔が不細工に歪んでいる。


「そうすると、わたくしとシャーフーチの二人きりになってしまいます。そんなの嫌ですよ気持ち悪い。それに、畑の世話も有りますし」


「うん。収穫をペルルドール一人に任せるのは可哀想だよ。手間取って化けたら勿体無いし」


イヤナの言葉に全員が首を傾げた。


「化ける?庭の野菜がか?妖怪変化の昔話の事か?」


早口で言うセレバーナ。


「違うよぅ。収穫時期を過ぎて育ち過ぎる事を化けるって言うんだよ。形が変わったり花が咲いたりするからそう言うんじゃない?」


「ああ、例えか。なるほどな」


ホッとするセレバーナを見て思い出すペルルドール。


「そう言えば、セレバーナはお化けが苦手でしたわね。……うん」


いたずら心で病院の怪談話でもしてやろうかと思ったのだが、喉元まで出掛かった所で止めた。

折角病院に行く気になったのに、怖がって行くのを止めたら困る。

もしかしたら、入院を嫌がっていたのも、それ関係のせいかも知れない。

病院と学校は怪談の定番だし。


「分かりました。セレバーナの付き添いはサコにお願いしましょう。それなりの知識も有るみたいですし」


黙って話を聞いていたシャーフーチが決定する。


「人の多い王都は治安に不安が有るので、二重にサコが適任でしょう。畑の世話も有りますので、残って貰う方はイヤナが良いでしょう」


「はーい……。しょうがないですね。王都に行くのは諦めます」


ションボリするイヤナを慰める様に笑みを向けるシャーフーチ。


「王都なら、その内に行く機会も有るでしょう。さて。出発は早い方が良いでしょうから、明日の早朝にしましょう。準備をお願いします」


「分かりました。責任持って付き添います」


サコが力強く頷いた事で、話はそれで纏まった。

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