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遺跡に戻った少女達は、早速昼食の準備を始めた。
診療所に行ったせいで時間が遅くなったので全員で動く。
イヤナとサコがキッチンで下準備を始め、ペルルドールが水汲みをする。
そしてセレバーナは、キッチンの手前に有るリビングでマンガを読んでいたシャーフーチの前にA4サイズの封筒を置いた。
「シャーフーチ。これが診断書です。そしておつり」
ツインテール少女は、使わなかった金貨と、銀貨と銅貨に崩れたおつりを師匠に手渡した。
「はい、ご苦労様でした」
しおりを挟んでマンガを閉じたシャーフーチは、早速封筒の中身を確認した。
その様子を眺めながら無表情で口を開くセレバーナ。
「ところで。ひとつの法則に気付いたんですが、これも口に出してはいけないんでしょうか」
「あ、わたくしも気付きました」
水が入ったバケツを持ったペルルドールがリビングを通ってキッチンに行く。
「私も、もしかしたらって思ってた。だから心配なんだよ」
イヤナも、キッチンでジャガイモの皮を剥きながら大声を出す。
同じくキッチンでタマネギを切っているサコは気付いていなかったが、一人だけ分からないのは恥ずかしかったので、黙って下拵えを続ける。
涙が止まらない。
「うーん、そうですねぇ。それが分かったところで対策は出来ませんから、気付いていないフリをしていてください。そうするのが一番無難でしょう」
「はい。そうします」
師の言葉に頷いて見せたセレバーナは、薪を取りに表に行った。
一人リビングに残されたシャーフーチは診断書を読み始める。
イヤナ、サコ、ペルルドールの三人は健康で問題無し。
細かい不調は有る様だが、それは人として生きているなら有って当然の不具合なので、各々が気を付ければ良いだろう。
問題のセレバーナは……。
シャーフーチが眉を顰めている間に、ジャガイモとタマネギの塩スープとパンが円卓に並んだ。
パンは朝に焼いた物を出すだけなので、スープが煮える時間で準備が整った。
少女達が席に着き始めたので、シャーフーチは診断書を封筒に戻し、食事の邪魔にならない様に椅子の下に落とした。




