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円卓のヴェリタブル  作者: 宗園やや
第一章
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15

初めての全員揃っての食事。

これからこの風景が当たり前の修行の日々が始まる。

共通の話題が無いので全員が無言で食べているが、将来は賑やかになるだろう。


「さて。今日は皆さんお疲れでしょうから、自室に戻って休んで貰います。ですが、その前に皆さんの自室に結界を張ります」


夕飯が終わりそうになった時、シャーフーチが言葉を発した。


「結界とは何ですか?お師匠様」


イヤナは、牛肉をしつこいくらいに噛み締めている。

美味しい肉なので、飲み込むのが勿体無い。


「これから貴女達は魔法使いになる為の修行をします。つまり、未熟ながらも魔法が使える様になる訳です」


セレバーナとペルルドールは小食なので、すでに食べ終わって寛いでいる。

イヤナとシャーフーチはそろそろ食べ終わりそうで、サコは残さず食べるぞ!と言う勢いでまだまだ食べている。


「そうなると、ひとつの問題が発生します。昔、夢の中で魔物と戦った若者が師匠の家を半壊させた事件が起こったらしいんです」


「寝惚けて魔法を使ったと言う事ですか?」


そう言うセレバーナに向け、シャーフーチは力強く頷いて見せる。


「それからは、弟子の部屋に魔法封じの結界を張る事が鉄則になりました。それを行います」


イヤナとシャーフーチはほぼ同時に食べ終わり、新品のスプーンを置いた。


「それと、緊急時に必要な『目』を設置します」


「目とは?」


相槌を打つのはセレバーナの仕事の様になって来た。


「魔法避けの結界を張る為、何かが有った時に中を透視する事が出来ません。ですから、予め目を置いておくのです」


「透視?早速セクハラですか?」


「違います。セレバーナはすぐ下ネタに行きますね」


「おっと、すみません。そんなつもりではなかったのですが、シャーフーチの佇まいや言動がそれっぽいので、つい」


セレバーナは真顔で師をバカにする。

何なんだろう、この子は。

わざとなのか無自覚なのか分からないので、シャーフーチは大人の対応として無視をする。


「魔法の修行と言うのはとても危険なのです。家を壊すくらいならどうにでもなりますが、自分の身体を壊してしまう場合も有るんです」


全員の動きが止まる。


「身体が壊れたらどうなりますか?」


サコが可愛い声で訊く。


「当然、命は有りません。ですから、結界に異常が生じた場合、すぐに中を覗きたいのです。異常が有る度にドアを蹴破りたくないですから」


シャーフーチは「私、ひ弱なので蹴破れないかも知れませんし」と恥ずかしげも無く言う。

一転、表情を引き締める。


「良いですね?」


「事情は理解しました。ですが、覗く前に一言知らせて頂けませんか?私の場合、全裸で実験をしている場合も有るので」


黒髪ツインテール少女は無表情で言う。


「な、何の実験ですか?」


「乙女の秘密です。静電気が大敵、とだけ言っておきましょう」


「うーん。結界に異常が出た場合、そんな余裕は無いと思いますけどねぇ」


シャーフーチは少し考え、妥協案を思い付く。


「では、目と連動する口笛を設置しましょう。ピューと音が鳴った十秒後、目が作動する様にします。これでどうですか?」


「ありがとうございます。十分です。普段から手元にバスタオルでも置く事にします」


「では、行きましょうか。いつまで食べているんですか、サコ」


「もう少しで終わります」


「後片付けが有るので、私の部屋はどうぞ自由に入ってください。目も気にしません」


イヤナは、空になった食器を重ねながら言う。

無くなって困る物は何ひとつ持っていないので、ドアに鍵を掛けていない。


「いえ。師である私が魔法を使う姿を見るのも大切な修行です。後片付けはそれが終わってからにしてください」


「はーい」


手を止めたイヤナは、サコが食べ終わるのを待ちながらリビングを見渡した。

こうして改めて見てみると、朝とはまるっきり様子が変わっている。

石床の冷たさを遮断する絨毯が敷かれ、新品の椅子が沢山並び、廊下から回収されたロウソクが暖炉の上で山積みになっている。

格段に暮らし易くなっている。

だからこれからは楽しい日々を過ごせるだろう、と根拠無く確信した。

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