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円卓のヴェリタブル  作者: 宗園やや
第四章
135/333

28

「セレバーナとサコはどこに行ったのかしら?」


旅に出てからずっと同じワンピースを着た切りにしてしまっているペルルドールが小声で訊く。

ここは安い宿の一室。

壁が薄いので、大声を出すと隣どころか階下にまで聞こえる。


「さぁ?連絡が無いから心配だよね」


窓から顔を出しているイヤナは、下の道路を観察しながら応える。

人通りは少なく、見知った顔も無い。

高級ホテルなら広場全体を見下ろせるらしいが、別に祭に用が有る訳じゃないからそこまで気にする必要は無い。


「お腹が空き過ぎて、ちょっと辛いですわ。でも、先に頂く訳にも参りませんし……」


小さな丸椅子に座っているペルルドールは、溜息交じりで言う。

一昨日に族長の家でケーキと紅茶を食べた切りなので胃の中は空っぽだ。

朝の暴走時は興奮状態だったので気付かなかったが、落ち着いたらエネルギー不足で眩暈がした。

透明化の魔法を長時間使った後に床が固い収納スペースで眠らされたりしたので、精神と肉体の両方の疲労も原因になっているだろう。


「辛いなら先に食べちゃえば?食べ物屋さんは結構有るよ?」


外を見続けているイヤナは、建ち並んでいる建物に視線を向ける。

旅人用のレストランの他にも、街の人向けの定食屋が何軒か見える。


「セレバーナも同じ様に空腹の筈ですから待ちます。ですが、我慢出来なかったら先に頂いちゃいます」


「うん。あ」


短く声を上げたイヤナの動きが止まる。


「どうしましたの?」


「セレバーナからのテレパシー。宿の場所を教えてくれって」


「むー。どうしてわたくしには聞こえませんの?」


ペルルドールは不機嫌そうに頬を膨らませる。


「お腹が空いてるからじゃない?セレバーナからの声も聞こえ難いし」


数分後、イヤナが窓の下に向けて手を振った。


「ほら、セレバーナ来たよ。下でご飯食べないかって。行って来たら?この子は私が見てるからさ」


ベッドを顎で指し示すイヤナ。

薬で眠らされている金髪少女が寝息を立てている。


「イヤナは空腹ではありませんの?」


「勿論空いてるよ。でも我慢出来るから。二人が帰って来たら私の番ね」


「分かりましたわ。お先に行って来ます」


二階に有る部屋から出たペルルドールは、麦わら帽子を無くしてしまったので顔を晒したまま宿の外に行く。

出てすぐのところでセレバーナとプロンヤが待っていた。


「プ、プロンヤ?何ですの?その格好は?」


青い目を剥くペルルドール。

金髪の女騎士は、イヤナの様な一般女性が着る質素なドレスを身に纏っていた。

しかし袖と裾が短く、胸元が大きく開いている。


「どうしてそんなセクシーな格好をしているんですの?」


笑いを堪えているのか、ペルルドールの頬が痙攣している。


「よ、余所者とバレない様に行動するには、この服を着るしかなかったんです……!」


プロンヤは顔を真っ赤にして言い訳する。

確かに、周りに居る女性達はプロンヤと同じ様な生地の少ないドレスを着ている。

昼が近くなると急激に気温が上がる地域なので、普段着が涼しげな格好になるのは自然な事だろう。

しかし女騎士はサコと同じレベルで身体を鍛え上げている為、女の格好が激しく似合っていない。


「はー。サコの普段着がシャツとズボンの訳が分かりましたわぁ。あ、そのサコはどこに行っていますの?」


「護衛団の他の騎士達と共に一仕事して貰っている。君の名前を使ってこの街の警察を動かしたが、許してくれ」


目の下に薄らとクマを作っているセレバーナが悪びれずに詫びる。


「それは構いませんが、一体何を?」


「まずは腹ごしらえだ。腹が減って仕方が無い」


妙に量が多い黒髪をツインテールにしている少女は、目星を付けていた店に身体を向けた。

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