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ワンピースを着た金髪美少女が夜明けの街を全力で走っている。
追い駆けろと言われたので追い付いてみたイヤナがそれに並走する。
朝食の準備の為に早起きしている奥様方が、砂煙を上げて駆け抜けて行く少女二人を不思議そうに見送る。
「えーっと、ペルルドール?どこ行くの?」
「殲滅部隊のところですわ。直接乗り込み、真実を訊き出します!」
「えー?それって危ないんじゃないの?」
「わたくしは、すでに一度死にました!もう恐れる物は何も有りませんわ!」
ペルルドールの青い目は血走っており、冷静さを失っている様に見える。
セレバーナに助言を求めたいのだが、走っていて集中出来ていないのか、それとも遠くに離れたせいなのかは分からないが、テレパシーが繋がらない。
「うーん。止めた方が良いんだろうなぁ、やっぱり。――ねぇ、ペルルドール、戻ろうよ。一旦集まって、全員で相談しよう?」
「今わたくしを止めたら、本気で抵抗しますよ。わたくし、イヤナを殴りたくありません」
「えー?私だって殴られたくないよう。仕方ない、最後まで付き合いますか」
「いいえ、イヤナは隠れていてください。これは命懸けの行動です」
「危険だと分かってるところにペルルドールを一人で行かせられないから、私も行くよ」
二人並んで街の入り口の門を出る。
直後にスピードを落とし、歩きながら呼吸を整える。
「誰も居ないじゃないですか。殲滅部隊が来たんじゃないんですの?」
ペルルドールは、乱れた金髪を手櫛で整えながら周囲を見渡す。
後先考えずに何キロも走ったので肺が苦しい。
「んー……。サコにテレパシーで訊いてみようかと思ったけど、返事が無いなぁ。かなり遠くに居るみたい。セレバーナも遠くだしなぁ」
少しだけ息が上がっているイヤナも辺りを見渡す。
荒野と森と草むらしかない。
「まだ作戦が始まっていないのかも知れません。兵が潜んでいそうな場所を探ってみましょう」
「うん」
二人の少女は、適当な森を目指して歩き出した。




