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「さて。これからヴァスッタの街に突入する。そこで二手に分かれようと思う」
街の門の近くに生えている大木の影に隠れている四人の少女がこそこそと相談している。
物凄く平和な地域なのだろう、見張りは居ない。
だから堂々としても良いのだが、ペルルドールが訪れた事が噂になると危険が有る事を説明する。
「殲滅部隊の先遣隊、ですか。確かに居ると考えた方が自然ですわね」
ペルルドールが深刻そうに頷く。
今が有事でなかったとしても、予告も無く王女が現れたら野次馬が殺到して大騒ぎになるだろう。
最果ての村でそれが起きないのは、単純に人口が少ないからだ。
実際に王女が一人で動く時は自然と子供達が集まって来ているが、子供の数が少ないので騒ぎにならないだけなのだ。
「彼等は街の状況を本隊に知らせるのが仕事だ。第二王女の出現を本隊がどう受け取るのかが分からない以上、下手に刺激しない方が良い」
「王女様が居るなら殲滅作戦なんて出来ないやー。帰ろ!ってならないかな」
イヤナは振り向き、逃げる振りをする。
そしてそのまま後ろ歩きする。
「万が一くらいの可能性は有るが、普通なら暗殺部隊を先行させる。大々的に宣伝した後の公式訪問ではないから、人知れず始末されるな。私ならそうする」
セレバーナの言葉を聞いて正面に向き直るイヤナ。
「そっか。偉い人って大変だね。でも、なんでそんなにしょっちゅう殺されそうになるの?なんで悪い人は王女様を殺したがるの?」
「とても良い質問だが、今はそれに答えている場合ではない。残り時間が少ないしな。細かい事は気にせずに二手に分かれてくれ」
黒髪少女の指示通り、イヤナとサコ、セレバーナとペルルドールで組を作る。
「私とペルルドールは魔法で姿を消し、街の裏手を進む。そして族長を探し、現在の状況を伝える」
淡々と言ったセレバーナは、もうひとつの組に無表情を向ける。
「イヤナとサコは、適当に観光でもしていてくれ。そしてさり気無く街の人に族長がどこに居るか訊いてくれ」
イヤナは胸を両手で押さえて困った顔をする。
「さり気無く、かぁ。出来るかなぁ。ドキドキする」
「観光しに来た旅行者を装えば良いんだから大丈夫だよ。多分。普通に初めて来た地だから不自然にはならない、はず」
サコも自信の無さが顔に出ている。
それを見たセレバーナが腕を組む。
「まぁ、君達は収穫無しでも良い。城や屋敷と言う物は、大体が街の中心か、近くの高台に有る物だ。そして良く目立つ。そうだろう?ペルルドール」
「セレバーナの言う通りかも知れませんね。例外も有るでしょうけど。川や湖の近くとか、重要施設の近くとか」
「二人はその例外だった時の保険だ。気にせず遊んで来てくれ。避難指示が出たら合流しよう」
イヤナとサコは目を合せて頷いた。
「そう言う事なら、気楽に行こうか」
「そうだね」
セレバーナとペルルドールも目を合せる。
「私達は魔法を使いながら進む訳だが、ここでシャーフーチの授業のおさらいだ」
人差し指を立てたセレバーナは、意識して聞き易い声を出す。
「街の境目、家の敷地の境目等には、侵入者避けの魔除けがしてある場合が有る。そこを跨ぐ時は特に集中しよう」
「そして、家の壁や垣根には絶対に触らない事。魔法返しを浴びてダメージを受ける場合が有る、でしたわね」
「うむ。人目の無い所は魔法を切り、休憩しながら行こう」
意思疎通の確認の為に頷き合う二人。
そして準備完了の合図として四人揃って再び頷く。
「では、行くぞ。何か有ったらテレパシーで知らせてくれ。危機が迫ったら、迷わずお守りの紙片を使う事。今回は冗談ではなく命懸けだ。良いな?」
「分かった」
懐に入っている紙片の存在を確認する少女達。
ここからは自分達と数十万人の命が掛かっているので、さすがのイヤナからも笑顔が消えた。




