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今日も朝から雨だった。
雨が続くと井戸のポンプから出て来る水が濁るので、早く天気が落ち着いて欲しい。
そう願いながら、巨大な水瓶の上澄みを水筒に汲むイヤナ。
濁っている井戸水は、一旦瓶に溜めて濁りを沈めないといけないので手間と時間が掛る。
使える量にも制限が掛かるし。
毎年の事だが、雨季は憂鬱になる。
「石の床だと薪が湿気るんだよなぁ。晴れたら干さなきゃ。早く晴れないかなぁ」
右手に水筒、左手にロウソクを持って薄暗い階段を上る。
そして一階廊下に出ると、すぐ脇にピンク色の物体が居た。
「うわぉう!って、セレバーナか。何が現れたのかと思ったよ」
「驚かせたか。済まない。まぁ、私も君の奇声に驚いたが」
ピンク色だったセレバーナのツインテールが黒に戻る。
早朝の薄暗い廊下に溶け込む漆黒の髪なので、存在感が段違いに薄くなる。
「おっと、魔法が切れたか。コツを掴めば色を変える事は容易いが、集中し続けないと維持出来ないのが辛いな」
「さすがセレバーナ。あっという間に魔法が使える様になるね。そのコツ、教えて貰えないかな」
「それは構わないが、シャーフーチの許可が降りたらだな。私の発想が正解かどうかが分からないからな」
「そっか。教えて貰うにしても、みんなと一緒の時が良いかな。私だけ聞くのはちょっと、だしね」
「そうだな。さて、トイレを済ませたら少し仮眠するよ。徹夜したから」
「寝てないの?」
「うむ。気になる事が有ると眠れなくなる質でな。では」
背が低いセレバーナが階段を降りて行く。
それを見送ったイヤナは、キッチンに行って朝食の準備をする。
忙しく家事をこなしていると、いつもの時間に四人の少女がリビングに集まって来た。
ペルルドールは今日も窓の外を見て溜息を吐いている。
「セレバーナ。凄く眠そうだけど、大丈夫?」
黒髪少女の睡眠時間は二時間ちょっとしか無かったはず。
それを知っているイヤナが心配する。
「慣れているから平気だ」
無表情のセレバーナが半目で応える。
微妙に前屈みなので、体調は万全ではない様だ。
「ちゃんと寝ないから背が伸びないんだよ?」
「余計な御世話だ。それはともかく、シャーフーチが来ないな。いつもの事だが、今日は確認したい事が有るのだ」
「私が呼んで来るよ」
サコがリビングから出て行って、階段の下で叫ぶ。
「シャーフーチ!朝ご飯ですよー!」
しかし二階に有るシャーフーチの自室からの返事は無かった。
「居ないみたい」
リビングに戻って来るサコ。
もしも居るのなら、呼ばれたらすぐに降りて来る。
「またですか。封印されているから自由に出歩けないと仰りながら、結構頻繁に居なくなりますわよね、彼。いい加減過ぎて信用出来ませんわ」
円卓に着いたペルルドールが不貞腐れた顔になる。
「彼には彼なりの事情が有るんだろう。居ないのなら仕方ない。先に朝食を頂こう。冷めたら勿体無い」
セレバーナは、円卓に並んでいる焼き立てのパンとソラマメのスープを前にして食前の祈りを始めた。
ペルルドールも同じく祈る。
「そうだね。食べよう」
祈りの習慣が無いサコが席に着いた事で、朝食が始まった。
今日もイヤナが作った食事が美味い。




