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円卓のヴェリタブル  作者: 宗園やや
第三章
105/333

34

少女達は日の出と共に封印の丘を降りた。

セレバーナとペルルドールはモンペ姿。

イヤナとサコはいつも通りの姿。

朝早いのでシャーフーチは起きて来ていない。

昨日の内に今日の予定を伝えておいたので、挨拶無しで外出しても問題は無いだろう。


「で、セレバーナ。何をするつもりですの?」


農作業の邪魔にならない様に金髪を編み上げ、丁度良いサイズの麦わら帽子を被っているペルルドールが訊く。


「畑仕事だ。特別な事は何もしない」


セレバーナも量の多い黒髪を編み上げ、日焼け防止の赤いスカーフでほっかむりをしている。

王女と二人で並ぶと恥ずかしいくらいの田舎娘ファッションだが、仕事に行くのでこれで良い。


「ウソ。何か企んでいるでしょう?」


「そう言われると否定出来ないがな。罰を受けているイヤナにはいつも通り作業して貰い、仲間外れにしてしまうが、構わないな?」


「うん」


一晩経って完全に涙が止まったイヤナの左手の薬指には、金色の指輪と銀色の指輪が二連で嵌っている。

銀色の方は魔力封じの効果が有るそうで、再び他人の心を覗かない様にとシャーフーチが嵌めさせた。

いつでも外せるが、イヤナの心が安定するまで嵌めておきなさいと命令されたので、数日はそのままにしておくつもりだ。

そして、赤毛の頭にも黄色のカチューシャが嵌っている。

外したら男達に怪しまれるかも知れないから。


「だが、イヤナ一人に仕事をさせるのも酷だから、サコにもそちらの作業を手伝って貰う。それでサコの暴走を完全に許すとしよう」


「分かった。で、何をするの?」


可愛い声で言うサコに澄ました顔を向けるセレバーナ。


「畑仕事だ」


農家に着いた少女達は、早速苗植えの準備を始めた。

建ち並ぶ巨大なビニールハウスの周りでは、手伝いに来ている人達がすでに作業を始めている。

苗植えは手早くやらないといけないので、親戚に助けを求めて人手を集める。

親戚の方の畑で手伝いが必要な場合はこの家の人達も向こうに出張るので、お互い様なのだと言う。

この助け合いが有るからこそ、広大な畑を維持出来るのだ。


「お忙しいところ申し訳ありません。内緒の相談が有るのですが宜しいですか?」


セレバーナがこっそりと農家夫婦、つまりウェンダの両親に事情を話し、今日の計画を説明する。

ただし全てを話す事はせず、若者達が少しだけレディーに失礼な行為をしたので懲らしめたい、と言う想いを伝えるのみにしている。


「誰が悪い訳では無いのですが、我々のプライドがちょっとだけ傷付いたのです。ですので、ご協力を願いたいのです」


「うちの子が妙な事をしたんですか?もしかして、イヤナちゃんに……」


申し訳なさそうな顔になる農家のおばさんに首を横に振って応えるセレバーナ。

ほっかむりをしているので頭が動かし易い。


「いいえ。その様な事実はありません。ただ、彼等の行動が少しだけ怪しいのです。事が起こってからでは遅いので、事前にお灸を据えて置こうかな、と」


セレバーナは視線を落とし、憂鬱そうな表情を演出する。


「私の心配し過ぎなのは自覚していますので、無理にとは言いませんが」


「分かった。お灸を据えるって計画の内容も、ウチの子に限っては、それをやって当たり前の事だからね。むしろこっちからお願いしたいくらいだよ」


おばさんの言葉におじさんも頷きで同意してくれた。


「ありがとうございます。では、彼等が起きて来るまで、我々は予定通り作業します」


セレバーナは深々と頭を下げる。


「苗と種、そして小さなビニールハウスを作る材料を遺跡の方に持って行きますが、お許しください。予定通りの量を持ち出す事を約束します」


「良いよ。どうせ余るしね。じゃ、あの子達を起こして来るよ?」


「お願いします」


根回しが終わったセレバーナは、無表情のまま巨大なビニールハウスに行く。


「おはようございます。私達が植える苗はどれでしょうか」


「アルバイトの娘さん達のはそっちに纏めてあるよ」


この家の親戚のおじさんが指差す方には、無数の木箱が並べて置いてあった。

その全てに野菜の苗がぎゅうぎゅうに詰まっている。

木箱のひとつを持って仲間達が待つ畑に向かうセレバーナ。

土作りが終わっている畑では既に苗植えが始まっている。


「あれ?他の人達は?」


イヤナは、一人だけでやって来たセレバーナを見て驚く。

この家の人達と協力して植える予定だったのだが。


「心配無い、すぐに来る。援軍が来るまでは我々だけで作業をしておこう」


「うん」

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