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円卓のヴェリタブル  作者: 宗園やや
第三章
104/333

33

「ところで、明日から夏野菜を植えるバイトが始まるとの事だが、きっと彼等も顔を出すだろうな。この一大イベントに出て来ない訳がない」


セレバーナの言葉に少女達の動きが止まる。

その様子を眺めながら続けるツインテール少女。


「彼等は、自分達は我々に好かれていると思っているだろう。実際、先程まではそうだった訳だし」


「まぁ、そうでしょうね」


苦々しく頷いたペルルドールが力強くラスクを齧る。


「はてさて。そんな彼等に対し、我々はどう接すれば良いだろうか。どう思われますか、シャーフーチ?」


セレバーナの金色の瞳に見詰められたシャーフーチは不思議そうな表情になった。


「どう、とは?」


「イヤナを泣かせた彼等を許して良いんですの?と言う事です!」


ペルルドールが形の良い眉を吊り上げる。

こう言う事態が許せない質の様だ。


「泣かせたのは真実を告げた私だがな。結果的にイヤナの精神を守った様だが。だが、我々の気持ちが収まらない」


セレバーナは、煮込んで少しだけ柔らかくなったウサギの干し肉を噛み千切る。


「そうですわ!わたくし、怒っています!」


「私もだよ」


拳を振り上げるペルルドールに同意したサコも拳を作る。

正々堂々を信条とする格闘家である茶髪少女も静かに憤慨しているらしい。

『あの事』を言わなくて良かった、と一人で頷くセレバーナ。


「ありがとう、みんな。でも、怒らないで」


鼻水を啜ったイヤナが健気に笑う。


「私がバカで勘違いしたのが悪いんだから。ね?悪いのは私なんだよ」


「誰も悪くない。敢えて悪い人間を定めるのなら、他人の頭の中を覗いたイヤナと、それを解析した私だ」


「セレバーナは悪くないよ」


「ならイヤナも悪くないな」


言い包められ、イヤナの涙が止まる。

反論したくて色々考えたので、気が反れたのだ。

しかし何も思い付かず、結局はまた涙が目に溜まる。


「問題は、ストレスを吐き出す対象が無いと言う事だ。イライラして何をするか分からないな」


金色の瞳が怪しく光る。

常に無表情なセレバーナが言うと冗談に聞こえない。


「何を考えているかは分かりませんが、妙な事をしたら破門も有り得ると言う事を覚えておいてくださいよ」


「破門、ですか」


セレバーナは、苦笑しているシャーフーチと視線を会わせながら自分のコメカミを人差し指で掻く。

意外にも鋭くその意味を悟ったシャーフーチがテレパシーを送って来た。


『これで良いですか?この思念は他に漏れません』


『感謝します。問題はこれです』


セレバーナは、肉体関係の計画イメージを送る。

圧縮されている元のイメージを送ると理解に手間が掛かると思われるので、セレバーナなりの解釈で再編集した物を。

それを受け取ったシャーフーチは、ラスクを齧っていた手の動きを微かに動揺させた。


『彼等は無茶をしないでしょうが、絶対は有りません。何らかの対策をしないと安心出来ないのです』


『なるほど……事情は分かりました。テレパシーを彼等に知られず、彼等と貴女達の身に何も起こらなければ目を瞑ります』


『寛大な判断に感謝します』


コメカミに当てていた指を下したセレバーナが大袈裟に溜息を吐く。


「破門は困ります。私には帰る場所が無いので、妙な事はしないと約束せざるを得ない」


「セレバーナ……」


ペルルドールとサコが不服そうな顔で黒髪の少女を見る。


「ならば、妙な事をしなければ良いのだ」


そう言って唇の端を上げるセレバーナを見て、ペルルドールとサコは視線を合わせた。

彼女は何か良くない事を考えている。

何をする気だろう。

彼等に痛い目を見せてくれるのか。

ペルルドールとサコは、期待しながら夕食を再開した。

イヤナは、ペルルドールのハンカチで思いっ切り鼻をかんだ。

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