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君と男爵、ときどきメイド  作者: みつ
第一章 ようこそ異世界へ
31/39

「帰化」

 ★★★

 都市や光物が崩れ去っても、自然だけは残る。

 ★★★



 ゼロとは何か。君の手元の情報端末で調べるとこういう情報が出てくる。

 ↓読み飛ばし可。


 0は1の直前の整数である。

 多くの数体系で0は負の概念よりも前に同定され、負の概念は0よりも小さいものとして理解される。

 0は偶数である。0は正の数でも負の数でもない。

 0を自然数とする定義もあり、その場合自然数と正の整数は同義ではない。

 0は数量が空っぽであることを意味する数である。

 兄弟が0人いるというのは兄弟がひとりも居ないことを意味し、重さが0であるというのは重さが無いことを表す。

 あるいは二つの砂山の砂粒の数の差が0であるということは、砂粒の数が同じであることを意味する。

 数を数えはじめるまえは、ものが0個であると仮定することができる。

 つまり、最初のものを数え始めるまでは0で、最初のものを持ってきてはじめて1個あると勘定することになる。

 ほとんどの歴史学者をはじめ世界中の人々はグレゴリオ暦やユリウス暦から紀元0年を除いて考えるが、

 天文学者などは計算上不都合があるため暦に紀元0年を含めて考える。

 また、(紀元)0年という文言は、時間における新しい起点となりうる、非常に意義深い出来事を記述する場合にも用いられることがある。


 ↑ここまで。


「ゼロ……か」


 マイルスからもたらされた驚きの情報だったが、男爵は別段驚いた様子は見せない。

 それどころかあからさまに不快そうに眉を顰めている。


「君はどう思う?」


 君は突然男爵に問いかけられた。

 あれほどの惨状で、無事な建物など見渡す限り皆無な現状で、死者がゼロという驚異的なまでの奇跡。

 当然、諸手を挙げて歓迎すべきだろう。人死にが出てないのだ、これ以上の喜ばしいことはない。

 答えかねている君を保留として、男爵はマイルスに同じ問いかけをした。


「まぁ……いいことなんじゃない?重傷者がいないとなったらあたしの手間も省けるし」


 だがそれによってロベルタの修復に時間がかかることになってしまったのだが、それを差し引いてもよいことだろう。

 男爵がちらりと町の郊外に視線をむける。建物の背が軒並み低くなったおかげでその先にある白い建物がよく見える。

 どうやら病院のようだ、赤十字のマークはない。あれは男爵の保健室のみにつけられているらしい。

 男爵の視線に誘われて君も病院を見る、外壁は白いがところどころ汚れが見える。

 この世界での建築材と言ったら、石を削って組み上げるか、木材を組み合わせるか、煉瓦を作って積み上げるか、

 病院は木材である、白い外壁はとある樹液を加工して塗った物だ。

 さすがに君の世界の大病院と言うほどではないが、中くらいの学校ほどの大きさはある。

 この町の住人はせいぜい三千人程度ではあるが、人間だもの怪我もするし病気にもかかる、医者はマイルスだけというわけでもないのだ。


「あそこも確認したのか」

「あぁ、もちろん」


 その病院を顎で指して問う男爵に、マイルスは即答する。

 むしろ病院は真っ先に確認に行くべき場所だ。今回の災害が出なくとも定期的に死者は出る。


「死者はいなかったのか」

「あぁ。骨折とか火傷した人は何人かいたけど死人はいなかったよ」


 ベルウッドによって、火の海から水の海に吹っ飛ばされたあの人達だろう。海に吹っ飛ばされたが生きていたようだ。


「そうかそうか……」

「男爵?」


 すると男爵は突然合点がいった様子で表情に笑みを浮かべた。


「クククク……ハハハハ………ハァーハッハッハッハッハ!」


 突然の大哄笑に誰もがぎょっとなる。


「男爵、一体なにを……」


 マイルスが問おうとしたのを男爵は片手を上げて制する、そして掲げられた手から膨大な魔力が放出される。


「喜べ諸君!この場全てを【私の知るあるべき姿】に戻そう! 拒む者はいるか!?」


 一瞬の沈黙、その直後大歓声が巻き起こる。

 絶大なる魔力を持ち、魔法使いでありながら魔術士である男爵ならば、町を元通りにすることなど容易いことだろう。

 男爵とマイルスの会話は聞こえていたはずなのに、さほど興味がない様子で、自分たちのすみかが直ることこそが最重要。

 人間は実に利己的で現金なものである。だからこそ発展と繁栄を続けて来られたと言えるのかもしれないけれど。

 男爵が宙に浮かぶ、右腕を頭上に掲げる、空に強大な魔法陣が構築される。


「一度直した物が気に入らないからと言ってさらに戻すと言うことは受け付けない、それでいいな。今なら間に合うぞ」


 意味深な男爵の言葉だったが、それに気付く町の人間はいなかった。


「男爵ーー早くやってくれー」

「私のお家を返してー」

「ごちゃごちゃ言ってないで早くやれよ」


 そして、男爵はその魔術を発動させる。

 その魔術の効果範囲は、この町の全て。


≪命無き物を滅するには、生かしてやればよい≫


 緑色のマナが町全体を包み込んだ。





 時は少し戻る。

 町の富豪、セイーヌ卿は町にいた。

 いや、富豪というには彼の財産は全て失われた、元富豪というのが相応しいだろう。

 肩で息をする彼の眼前にあるのは、こんがりと焼けた羊の形をしたメニー・メリー。

 男爵には遠く及ばないとはいえ、彼も魔術師だ。

 男爵が呼び出した魔獣に最初こそは驚き逃走したが、落ち着いて対処を行えば手こずるほどでもない魔獣だ。


「……くそっ、忌々しい……少し魔術の実力があるからって高く留まりやがって……」


 その言葉はそっくりそのままブーメランの如く彼に戻ってきそうな気もするが、中途半端に実力があると相手との実力差をなかなか認めたくないようである。

 ちなみにフルネームはアーテゥマー・カーマ・セイーヌという。

 アーテゥマーが名前だが、発音が少々難しい。

 ちなみに彼の魔術の実力はメイドで言えば中堅クラスである。

 さすがにヴァンデミールほどの実力はない、彼女の実力は世界的に見ても実はトップクラスである。

 客観的に見ても、食べ物を独り占めにしようとしたアーテゥ……富豪の行動が悪いのは確定的に明らかだろう。

 しかし彼にとっては、貴族であり富豪である彼の尊厳を傷つけられたことに腹を立てているようだ。

 完全な八つ当たりにしか思えないのだけれど、それくらいしか誇れる物がないやすいプライドの持ち主と言うことなのだろうか。

 彼は大陸に逃げようとしていたのを覚えているだろうか、大陸で再起を果たしたらおそらく彼は男爵に復讐を行うかもしれない。


「………?」


 元富豪の鼓膜に男爵の言葉が届いた。

「なんだ……?なにを言っている?全てを元に戻すだと?そんな事ができるはずが……」

 元富豪(笑)の視界にも男爵が写った。宙に浮き頭上に精密な文様の魔法陣を構築している。

 その魔術は、一見して特大な効果を発揮させる物とわかるものだったが、どうやら彼にはその魔術の効果が読み取れなかったようだ。

 中堅クラスではなくどうやら下の上程度だったようだ。

 その程度の実力で男爵に仇成そうと思うとは自殺志願と言わざるを得ないだろう。

 男爵の呪文の詠唱が放たれる。


≪命無き物を滅するには、生かしてやればよい≫


 魔法陣が、緑色の閃光を放ち、空中にはじけて消えた。

 はじけた光は町全体に降り注ぎ、地中へと消えた。

 そして、足下から姿を現す小さな小さなたくさんの木々の息吹。

 それは表すならばまさに『ぴょこっ』と言う擬音が当てはまるだろう。

 それほどまでにたくさんで、町の至る所から芽吹いてきている。

 だが、男爵の思惑に気付く者は誰一人していないようだった。

 むしろ魔術が発動したにもかかわらず、町は依然として瓦礫を抱えたままその場にあることをぼけっとしてみているだけだった。

 そして、それはマイルスも君ですらも一緒だ。

 男爵の意図がわからない。

 最初は双葉、その次は若葉、小さな草だった者は豊富なマナを体内に取り込み瞬く間に樹木へと成長していく。

 始めに誰かの叫び声が上がった、その時には既に遅かった。

 大地から姿を現すいくつもの木、木、木。

 瓦礫の下からも姿を現したそれは、生い茂る青葉と強靱な枝葉に瓦礫を抱えたまま大木へと成長していく。

 だから男爵は言ったのだ、元に戻すと。

 それは、ナパームの襲撃の前に戻すという意味ではない。

 男爵がこの島に来た、その時点の島の状況に戻すと、男爵はそう言う意味で言ったのだ。

 男爵の庇護にあやかろうとこの町に来た住人達は、今度はその男爵の手によって右往左往する羽目になってしまった。

 だから男爵は「それでもいいか」と尋ねたのに。

 理由はわからないが、笑っていたにもかかわらず男爵は妙に虫の居所が悪かったようだ。


「ふざけるな!これのドコが元通りだ!」


 パニックからなんとか立ち直った若者が男爵にくってかかった。


「宣言通りの【私の知るあるべき姿】だ、私がこの島に来たとき島はもっと緑に覆われていた」


 それは詭弁だ。


「だがお前たちは【私の知るあるべき姿】がどのような姿かを私に確認しなかった。だから私は君たちはわかっているものと判断した」


 それは戯言だ。

 男爵ほどの実力を持つ者が、この現状を町の人が望むわけがないと、わかっているはずだ。


 ……………………………


「不愉快だ。実に不愉快だ」


 男爵の両手に強大なマナが放出される。


「男爵、一体なにを……」


 男爵の意図がわからずマイルスは困惑する、何故男爵は町の人にさらに鞭打つような真似をするというのか。


「私は言ったはずだ、ナパームに雷を落とす能力は無いと。天山大剣は通り過ぎるのに時間がかかるだけでそれ以外は問題がないと」


 確かに言った。それでなにが正当化される?


「だが現状はどうだ、ナパームは油を吐き、家屋を燃やし、捕縛した鎖は落雷によって破壊された。

 落雷を回避するためにシャワータイムが放った天使の輪は、姿が酷似した悪魔の輪が無数に放たれた。

 それは、どこからだった?」


 男爵は君に問う。


 君は絞り出すかのように呟いた。


 ……天山大剣。


「忌々しい!あの漆黒の大剣は私の力でなすすべもないことを理解してこの町を蹂躙したのだ!

 そして君という観客を持ってその力を誇示した!ご丁寧にその力で死者が出ないよう調整して!」


 男爵は怒りをあらわに咆哮した。


「あぁ!わかっているくそったれの天山大剣め!人の頭の上に居座りながら人間が右往左往しているのを楽しげに見ているんだろう!

 けらけらけらけらと笑いながらな!」


 あぁ……





 ばれちゃった。





 けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)けらけらけらけらけら(けらけらけらけらけら)



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