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レッツサバイバル  作者: ノンノン
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方針

扇風機とコタツは三種の神器に加えていいと思う今日この頃

氷壁アイスウォール!」


 高さ2mほどの氷の壁が出現する。


「これも家にはできんな」

「察しはついてた」


 午後6時、住居作成は難航していた。

 今は女子が購入した食糧と調理器具で料理を作っているところだ。食糧は比較的安いとはいえ、30人分ともなると馬鹿にならない。そのうち魔物を調理して食べるようになるかもな。


「他は、植物魔法でも試すか?」

「んー、初級じゃ無理だよね。今までからして」

「……千華は料理に混ざらないの?」

「……料理できないって知ってて、そんなこと言うの?」


 料理音痴の千華の言う通り、初級魔法では大した威力は発揮できないようだ。

 中級を取得するには合計2000DRが必要になるが、それだけのDRを持っているのは俺と東樹だけ。ここは慎重に行かなければならない。


「やっぱ中級土魔法でも試してみるか」

「そもそも初級中級で家を建てようなんて言うのが間違っていたかもしれないね」

「野宿は嫌よ。女子もたくさんいるんだし」


 俺、東樹、千華は頭を悩ませる。

 他の連中は料理したり魔法の練習をしたり、泣いたり慰めたりしている。


 いっそ、魔法じゃなくて木材を買って家を建ててしまいたいが、手間もかかるし使い捨ての住居にDRを消費したくない。


「これでどうだろうか」


 土魔法を習得した土田がいかつい顔でやってくる。

 彼の背後を見ると大きめの穴が開いていた。


「この中で女子を寝かせ、植物魔法でクッションと屋根を作ればどうだ。男子が外を見張れば安全だろう」


 なるほど、あの大きさの穴なら女子が寝る分には問題ないだろう。

 初級土魔法「落とし穴」をいくつも結合させ、一つの大穴を作っていたのは遊んでいるとばかり思っていた。

 植物魔法を習得した津田野蒜つだのびるさんを呼ぶ。


植物乱生プラントプラントっ」


 太くて柔らかい、大きな茎が穴の中に生まれる。枕代りにはなるだろう。

 次に生まれた数本の茎が穴を覆っていく。先を削って尖らせた木の枝を指して固定し、洞穴住居が完成だ。


 暗くなってきたので炎魔法でたき火を起こし、みんなでカレーを食べた。

 結局俺と東樹、千華はDRを使わなかった。東樹は極端にMPが少ないので魔法を取得するのが厳しそうだ。


 食事を終え、明日からの計画を立てるべく話し合いを始める。

 司会は委員長である東樹と西妻聡里にしずまさとりさんが行う。


「そ、それではっ。今後の方針を決めたいと、思います」


 西妻さんは毎回司会をしているのに未だにぎこちない。


「か、帰るために、他の人を倒すか。人が減るまで隠れるか……ですかね」

「ああ、うん。いいと思うよ」


 東樹が適当な返事を返し、発言を引き継ぐ。


「えっとね、僕は、できれば争いたくはない。学友を殺して元の世界に帰っても、まともな生活を送れるとも思えないしね。他にも帰る方法はあるかもしれないし、人間同士の仲間割れは避けたい。それでも、帰るために俺達を襲おうとする奴ら……血気盛んな上級生たちかな。彼らから身を守る術を身に着け、この世界で生きよう。そうしていれば、いつか、きっと帰れるさ」


 こいつが言う「いつか帰れる」とは、魔物や人間に他の奴らが殺され、このサバイバルが終了するということだ。この環境で、皆が皆生き残れるとは限らない。このクラスの仲間も、誰かは死ぬかもしれないし、みんな死ぬ可能性だってある。


「そうだな!人間殺すのはよくねえや!」「他に帰れる方法が見つかるまで粘ろうぜ!」「東樹様に付いていきますわ!」


 結果、人を殺さず生き残るという方針に固まった。反対したくても、孤立しないために意見を伏せた奴もいるだろうが。

 女子達は基本的にイケメン東樹君のファンなので反対意見はでない。


「なら、明日から早速能力を強化しよう。この周辺の魔物を狩ってDRを溜めて、生活や戦闘能力向上にあてたい。ある程度力がついたら、ここから少し離れ身を隠し、そこで魔物を狩りながら静かに暮らせばいい」


 30人の命を1人で背負う東樹の発言に、文句を挟めるものはいなかった。責任を取りたくないから、反感を買いたくないから、他に方法が思い浮かばないから。各々の理由で、東樹の作戦で進めることとなった。

 彼の考えが正しいかはわからないが、責任感のある奴に従うのが利口か。狩りの方法は明日決めることにし、会議は終了となった。


「あ、あの高柳くんっ。ごめんね、全部やってもらっちゃって……」

「ああ、いいよ別に。疲れたでしょ、早く寝なよ」

「う、うん!ありがと」


 あまり仕事ができなかった三つ編み眼鏡の委員長は、東樹に礼を言うと寝床……落とし穴ハウスに駆けて行った。


「お疲れ。見事な司会だったぜ」

「十五。いや、僕もあの考えで本当に良かったのか、疑問なんだ……」

「それでも、誰かが引っ張ってかなきゃだもんな」

「ああ……頼られるのは辛いね」


 疲れた笑みを浮かべ、地面に座り込む東樹。積極的に指揮を取ったことで、これからもこいつに決定権が与えられるだろう。30人の命を背負うのに、彼の背中では小さすぎる。俺が、肩だけでも貸してやろう。


「見張りは順番でやろう。お前は先に寝とけよ」

「ああ、すまない」


 目を閉じて寝息を漏らす幼馴染に上着をかけてやり、見張りのローテーションを決める。

 女子が眠る落とし穴の中から、泣き声が聞こえる。帰りたいと、親に会いたいと。

 男子を見ても、明らかにテンションが低かった。女子の前だから格好を付けてはいたが、やはりこの状況は精神的に辛いのだろう。

 

 たき火を見つめらがら、長い夜を過ごした――。



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