VS集落
「ブヒイイイイイイン!!」
「っ、爆風!」
振り下ろされる斧を躱すため、爆風を喰らい後方に回避する。
吹き飛ばされるのも慣れたもので、空中で回転し滑るように着地し前を見据える。
前方にはオークの集団。最初にお目にかかったオークがリーダーらしく、それ以外のオークが囲むようにフォーメーションを整える。豚のくせに案外賢いんだな。
肩に乗っていた鳩は千華の元に逃げ帰っていった。
千華を連れて逃げなくてはならないが、体力の少ない彼女を連れてオークから逃げられるかどうか。
こいつらを連れて拠点に戻ればみんなが危険に曝されるので、ここでオークを撃滅するが、完全に撒いて帰るかの二択だ。
「千華、先に逃げてろ!後で追いつくから!」
草むらに向かって声をかけ、目の前のオークに集中する。
数は10。武器は斧、リーチは腕を合わせて3Mはあるか。
俺の武器は「爆拳」「小規模爆発」「爆風」。MPに限りがある以上、多数の相手は向かない。
「ブホッ!」
飛び出したオークが斧を振り上げ向かってくる。こちらの手のうちを把握するための捨て駒か。
のっそのっそと重い足取りで接近するオークの一撃を横に躱し、開いた腹に拳を叩きこむ。
「爆拳っ!」
衝突の瞬間に拳から爆発が起こり、オークを吹き飛ばす。
飛ばされたオークは斧を支えに立ち上がると、再びフォーメーションに合流した。
直撃したはずの爆拳では、薄皮一枚焼く程度の傷しか負わなれないようだ。
硬い皮膚に厚い肉、あれらを破って致命傷を与えなければ倒せない。しかし、相手は10、当たれば即死だろう斧も所有している。
構え、お互いに警戒し合っているとハットが肩に降りたった。
こくんと一度頷く鳩公、安全なところまで逃げたってことか。
オークに背を向け、一目散で退散する。
「ブヒュッ!ビュルヒュバ!」
豚の鳴き声が遠ざかるのを感じる、鈍足のオークでは追いつけないだろう。
オークが見えなくなると、草むらから千華が飛び出した。
「なんですぐに逃げないのよ!」
「いや、いきなりデカい豚が目の前に出てきたら固まるって」
ハットに確認させたところ、オークは追跡を諦めたようなので、一気に疲れを増した体を引きずり拠点へと帰還した。
「遅かったね。ちょうどお昼ごはんだけど、どうかした?」
東樹の食べているシチューを奪い、一口で飲み干す。
喉が焼けるように熱くなるが、これが堪らない。
「家があっから人がいるかと思ったらオークの集落だった」
「ゴブリン以外もいるんだね。怪我は?」
「平気。あいつら倒して家奪おうぜ」
「勝てそう?」
「そうだな。10匹しかいなかったしなんとかなるだろ」
みんなが昼食を食べ終わると、早速「対オーガ集落部隊」を編成し出発の準備を整えた。
「僕と十五、暑士と冷也……あと気山かな。案内役に千華、治癒に安藤さんの7人でいいかな?」
東樹の案に反対する理由もなく、嫌がる千華を引きづってオーク狩りに向かった。
ガサガサと草木を掻き分け1時間。藁の家の周りではオークがウロウロと徘徊していた。
「見張りか。炎と氷で遠距離からぶち込んで撃ち漏らしを俺と東樹で仕留める。OK?」
「十五。気山君の存在忘れてるよ」
「なんでもいいからあの気持ち悪い豚を早く片付けてよ」
オークに恐怖心を抱いたらしい千華と安西さんを安全な距離まで離し、作戦通りに攻撃を開始する。
家の周りにオークが3体、中にはおそらく7体。
腰を落とし、接近のタイミングを計る。
「炎球連射!」
「氷矢射出!」
大気を凍らせて作成した3本の氷の矢がそれぞれオークを襲い、炎の剛球が藁の家に着弾に中にいるオークごと燃やしていく。
「ちょっ、新しい住居が!」
「近くに来るとちょっと臭いキツイし、どっち道住めなかったよ」
「お、お前ら余裕だな……」
東樹と気山を後ろに飛び出す。
燃え盛る家の中から慌てて出てきたオークは少ない髪が燃えている。
冷也の攻撃が命中したオークラらも、出血はしているが致命傷には至らなかったらしく、斧を振り上げこちらを襲う。
前方には血を流したオークが3匹、その後ろに少し焦げているオークが7匹。
遠距離攻撃では硬いオークを一匹も葬れなかったか。
「ブヒィっ!」
腰の傷口から血を撒きながら、振り上げた斧が襲い掛かる。
斜め後方から爆風を起こし衝撃で斧を避け、そのまま傷口に拳をめり込ませる。
ドッ!!と皮膚の内側で巻き起こった爆発にオークはよろめく。
これでも死なないのかと驚きながら、抉れて肉が露出しているそこに左手で追撃をかけ爆発。
「ゴッヒュィィィィィッ!!」
「まだ死なないのかよ!」
グロテスクな内臓が浮き出たまま、尚も倒れぬオークの傷口に3発目の爆発を叩きこむと、ようやく目から光を消し倒れた。
『レベルアップしました』
やはり耐久力が高いだけあって経験値も多くもらえるようだ。
視界のテロップを消し隣を見ると、東樹がオークの首を両断したところだった。
どんなに生命力が強くとも首を離せば絶命するようで、頭を失った胴体は力なく倒れた。
「氷塊!」
「炎槍!……十五、気山危なそう!」
後衛から魔法を放つ暑士の言う通り、右方でオークと相対していた気山は苦しい表情で攻撃を躱していた。
「気山、頭狙え!小規模爆発!」
威力を抑えた爆発をオークの足元に発生させ、状態を崩す。
短い脚では肉の塊を纏った重い胴体を支えることができず、オークはそのまま転倒する。
「気合列弾ォ!」
下方の顔面に向け集中して放たれた気山の魔法が、醜い豚の顔面を更に歪に変形された。
「気合列弾!気合列弾!気合列弾!」
二発三発四発と、間隔を開けず顔面を集中砲火されオークは絶命した。
「っは、っは、くそっ!」
「気山、MP使いきったのか?後は任せて離れてろ」
「すまない……」
肩で息をする気山を後方に下げ、東樹に合流する。
すでに数は1体まで減っていたが、後方の暑士と冷也はMPを使い果たしてしまった。
MPの回復は秒毎0,1%。回復をまっている時間はない。
「ブルオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!」
一際大きい豚面の獣、リーダーと思われるオークは雄たけびを発し、地面を抉りながら跳躍し襲い掛ってきた。




