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レッツサバイバル  作者: ノンノン
1/13

サバイバル開始

 キーンコーンカーンコーン、間抜けな終業のチャイムを目覚ましに机から体を起こす。

 凝り固まった体を伸ばすとバキボキと気持ちのいい音が鳴った。これで6時限目終了、あとはHRホームルーム終えて帰るだけだ。


十五じゅうごさぁ、寝てばっかで大丈夫なの?来週テストだよ」


 腕を上げ伸びをしていると、隣に座る幼馴染の千華せんかに声をかけられた。肩まで伸ばした黒髪がさらりと揺れ甘い香りを運ぶ。


「前日になったら千華に土下座して教えてもらうから大丈夫だって」

「また……?少しは自分でなんとかしなよ……」


 前回のテストは、千華に泣きついて勉強を見てもらったおかげで赤点は回避できた。彼女は困った表情を作っているが、なんだかんだでいつも助けてくれる。


「頼んだら助けてくれるのが千華だもん、な?東樹とうき

「ああ、頼んだらヤらせてくれるのが千華だよ」

「そ、そんな軽い女じゃないよ!」


 前の席に座る、これまた幼馴染の高柳東樹が体を後ろに向け会話に混ざる。初っ端下ネタをぶち込む辺り、授業が終わって舞い上がっているのだろう。


「僕は下ネタを連発しててもモテるんだよ、何故かね」

「所詮女は男の顔して見てないってこった」

「その点、僕ら男子は女性の顔以外もちゃんと見ている」

「……顔だけじゃなくて、体も見てるとか?」

「うん」

「わかってんじゃん」

「否定してほしかったなー……」


 いつも通り、幼馴染ズとの他愛無い会話に興じていると、ふと異変が起きた。

 

 窓から差し込む光が白く輝き、拡大していく。

 

「なんだこれ……?」

 

 教室中を白い光が包む。

 

 突然の出来事でパニック状態に陥るクラスメイト達に向け、東樹が声を張り上げる。


「落ち着いて!騒いだって何も解決しない!今は落ち着いて状況を把握!」


 普段は大人しい東樹の声により、騒いでいたクラスメイトは落ち着きを取り戻し始めた。「東樹様カッコイイーっ!」など黄色い声援が聞こえる気がする、イケメンはずるいや。


「流石は委員長だな」

「茶化さないでよ、それよりほんとにこの光はなんなんだろ?」


 光は徐々に強くなっていき、視界が白に覆われる。

 クラスメイトの姿ももう見えない。煙……じゃないよな、尋常じゃないのだけは確かだ。


 下手に動くのも危険だろうと椅子に座ったまま視線をキョロキョロさせていると、不意に光が薄くなりクラスメイトや風景が見え始めた。


「お、やっと消えたな」

「ああ……だがここ、どこだ?」


 気づくと俺らは森の中にいた。

 さっきまでは教室にいたはずだ。周りには慌てふためくクラスメイト達、それに座っていた椅子が尻の下にある。


「さっきの白いのが催眠ガスで、寝ている間に森まで運ばれた?」

「椅子や、机ごと?見た感じ、クラスメイトと、クラスメイトが身に着けている物と触れていたもの……服や椅子やカバンなど、それだけが瞬間移動したみたいかな」

「集団転移、神隠し?そこらの花とか見るに、ここ日本かも怪しいよな」

「そもそも地球わからないよ」

「…………あなた達、なんでそんなに冷静なのよ」


 東樹と現状考察を行っていると、青ざめた表情の千華が小さい声で呟いた。

 彼女の様子を見るに、相当精神的ダメージが大きいようだ。クラスメイト達も辛いようで、泣き、叫び、喚いている。学校から解放されると思ったら樹海で迷子だもんな、荒れもするだろう。


「大丈夫かい?顔色が優れないようだが、横になっていたらどうだ?」

「はは、東樹。ナイスジョーク。横になれる場所がないよ」

「だからっ!あんた達、なんでそんなお気楽でいられるのよ!」


 真っ青だった顔色を真っ赤に変色させ、千華は森に響く声で叫んだ。その声に驚き、騒めいていたクラスメイトもピタッと静かになる。


「異常事態でしょ!もっと慌てるべきよ!もう家に帰れないかもしれないのよ!」

「家どころか土に帰れそうだよね」

「悪い東樹。それは笑えないわ」

「あれ、そう?ブラックジョークは受けがいまいちか」

「状況が状況だけにな」

「だ・か・ら!なんでふざけてられるのよーーーーーーっ!!!」


 腕を上げ髪を逆立て怒りを訴える千華。背後に噴火した火山が見えそうだ。

 千華はもう立ち直り、クラスメイトも彼女の怒りっぷりに我を取り戻しこちらの様子を窺っている。


 みんな普段のテンションを取り戻しつつある。今のうちに今後について計画を練ってしまいたい。

 東樹を見ると、軽く頷かれた。俺に仕切れと?


 嫌だよお前がやれよ、と視線でまとめ役を押し付け合っていると背後の草むらがガサガサと動く。

 千華の大声に釣られて獣が出たか?森だから、くまさん?それか猪に狼辺りならヤバそうだ。

 音源からじりじりと後退ながら草むらを見つめる。


 がさっ、草を掻き分ける音と共に出てきたのは予想外の生物だった。


 人間の子供のような図体だが、顔が明らかに人間のそれではない。細身の肉体は痩せているようで引き締まった筋肉を纏い、細い腕には50㎝程度の棍棒を持っている。

 こちらを睨みつける赤い瞳は明らかに敵対する意思を表明し、口元からダラダラと流れる涎からは異臭が漂う。


 俺はこんな生物を知らない。

 いや、正確には直接見たことだけで、知らなくはない。

 ゲームや小説で見たことのある、目の前の生物に合致する生物の名前を口にする。


「ゴブリン……?」


 創作物で見聞きした姿とは若干違うが、俺の知りうる限りの生物ではゴブリンに一番近い。


「ああ、十五もそう思う?ってことはさ、ここ……」

「異世界とか、言っちゃう?」


 異世界かはさて置き、地球外に転移された可能性は高くなった。

 東樹と二人して苦笑を浮かべていると、ゴブリンが棍棒を振り上げ飛び掛かってきた。飛距離、滞空時間、速度、どれもが人間の能力を超越している。

 地面に落ちる石ころを拾い、見知らぬ地にてゴブリンとの戦闘が始まった。

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