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決意固まる「転校生(木林灯)」(2)

 もうこのままの勢いで完結させるかなぁ…読み直しも書き直しもする気起きないし、このままコピペして改行するだけだし、いけそうな気がする

 放課後。

 いつも水月くんと凍梨さんがいる空き教室の前。

 その窓際に背を預け、座り込みながら一人考える。


 考えることは沢山ある。

 私がこれからどうしたらいいのか。

 水月くんを刺さずに済むにはどうしたらいいのか。

 凍梨さんが言っていた水月くんを刺した犯人が誰なのか。

 ……凍梨さんが、今の私なら止める、とはどういうことなのか。


「…………」


 昨日凍梨さんは、クラスの皆の前で、私と皆との間の緩衝材になってくれる役割を引き受けてくれた。

 だから私は、凍梨さんに迷惑をかけないためにも、自分を変えないといけない。

 私のために骨を折ってくれたのに、私のせいでクラスから迫害されてしまうのは、私の望むところじゃない。


 ……本人は元々孤立していたから気にしないで良い、とか昨日の帰り道で言っていたけれど、そこで本当に気にしないでいたら……私が今まで回りに押し付けてきた正義を、自分自身で否定してしまうことになる。

 ……いや、でも自分を変えないといけない訳だし、ここで正義を振り回して自分自身を否定して回りに迷惑をかけたほうが……。


「…………」


 水月くんを刺さずに済ますための方法……私が『前人間』で、人を殺せると言う噂を信じている彼が、諦めるための方法……。

 凍梨さんが私に殺してほしくないと頼むから、それを果たすために何か手は無いのだろうか……。


「…………」


 そして、水月くんを刺した犯人……。

 知れば私が凍梨さんを止めてしまう人間で、その凍梨さんが始めて見た時から違うと思っていて、水月くんに怪我をさせられる可能性があって、そして……噂は本当だと言っていた、その言葉の真意。


「……………………はぁ」


 一向に考えはまとまらない。

 刺した犯人に至っては授業中にも度々考えていたのに、全くアテが出てこない。

 こうして放課後になって、凍梨さんをこの空き教室で見かけないということは、とっくにその犯人の下へと向かったと見て間違いない。

 犯人が分かれば止められる、と言っていた以上、早く知って止めてしまった方が良いとか考えていたのに……見事に先を越されてしまった。


 いや、そもそも凍梨さんは先を歩いていたんだ。

 越されたんじゃない。

 私が追いつけなかっただけだ。


 ……思えば、凍梨さんが私を助けてくれたのだって、全部水月くんのため。

 彼女の行動のその全てが、水月くんのためだった。

 私を助けたのも。

 水月くんを刺した人の下へと向かったのも。


 その全てが、彼のためという、一貫した行動だった。


 それだけのことをしておいて好きという自覚が無かったというのだから驚きだ。


 本人曰く、周りから孤立しているみたいだけれど……それでも、本人は至って満足そうだった。


 対して私は、全く満足できていない。

 一貫した行動は同じでも、周りから孤立しているのも同じでも、満足できていない。


 ……好きな人のために頑張っているという違いだけで、そこまで違うものなのだろうか……?

 ……ものなのだろう。

 たぶん。


 きっと凍梨さんは、水月くん一人が傍にいてくれればそれで良い。


 対して私は、沢山の友達がほしい。


 そこに大きな違いがある。


 だからこそ、凍梨さんは満足できているし、私は満足できていない。


 一人に好かれたいか。

 沢山に好かれたいか。


 だったら、一貫した行動を取らなければ良いのだろう。

 周りに合わせて流されるように生きていけば、きっと友達も沢山出来るのだろうと思う。


 でもそれを、私は出来ない。

 私は自分の中の正義を曲げて、砕いて、踏み締めて、殺して……存在しないように振舞えるほど、器用じゃない。



 ――あなたはとっくに、取り返しがつかないぐらい、皆に嫌われてるよ――



 いつか言われた凍梨さんの言葉。

 一貫した行動を取り、周りに押し続けた結果、私はもう、嫌われてしまっている。

 きっとそれは本当のことだと思う。

 じゃなければ、水月くんのための行動しか取らない凍梨さんに助けてもらうなんてことは無かったはずだ。

 他のクラスメイトが先に助けてくれたはずだ。

 それが無かった時点で……。


 だから間違いなく、私の友達の作り方は、間違えていた。


 でも、どうしたら良い?


 私はこの方法しか知らない。

 自分の正義を掲げることしか知らない。

 捻じ曲げずにいることしか知らない。

 そうすることでしか、友達を作る方法を、知らない。


 自分を変えなければいけないのは分かっているけれど、この己の中の“正義”までは、変えられない。


 だからと、凍梨さんのように、誰か一人のために、なんて生き方も、まだ出来ない。


 私は、沢山の友達が欲しい。


 でもでも、他に友達を作る方法なんて、私は分からないし……。



 ――だから今~、木林さんが止めないといけないのは、他人のためと偽った他人の矯正だよね~――



「……………………あ」


 ふと、脳裏を過ぎる言葉。


 階段で呼び止められたときの、その言葉。


 何か大事なことを言われた気がする、その言葉。


 心の中で引っ掛かる。

 何かが。

 大事な。

 自分を変えるための。

 自分のための。

 何か。

 手繰り寄せれば変えられる。

 何か。


「…………」


 もうすぐ。

 掴める。

 いや。

 いかないで。

 掴めると、捕まえられると思った途端、どこかへいく。

 垂らされた糸を掴もうと躍起になっても掴みきれないような。


 必要なのはそう。

 焦りを持たず、繊細に。

 正確に、その糸を摘み上げるように。


 ……そう。

 考えろ。

 思い出せ。

 さっきの言葉。

 「とっくに嫌われている」「取り返しがつかないぐらい嫌われている」。

 その後の言葉。

 スッと横切った、その大切な言葉。


「……………………」


 私が、変えないといけないと言っていた、凍梨さんの、言葉……。


「……………………他人のためと偽った、他人の、矯正……」


 そう……確か、そんなことを言っていたはずだ。


 誰かのためだなんて大義名文を掲げた、実際はそうじゃないと言っていた、私のソレを止めろと……確か、そんなことを……。


 でも……そんなこと言われても……私には、その方法しか友達を作る方法は分からないし……。


 それに、皆を正したいと言う気持ちにだって、ウソはない。


 友達が欲しいと言うのも本当で……――


「――……あ」


 友達が欲しい。

 その方法が私には回りを正す方法しか知らない。

 周りに合わせた話題を出すことも、仲良くするために愛想を振りまくことも、友達のためにと目を瞑ってあげたり一緒になってあげたり庇ってみたりの線引きも全く出来ない。


 でも、だからって、“正しい方向へと行って欲しいということだけを相手に伝え続けるのは違う”。

 そんなのはウソだ。

 バカ正直に“その方法しか知らない”と言うならまだしも、“相手のためにだなんて言って、友達が欲しいと言う自分を隠すのは、間違えている”。


 その間違いにも気付かず、ずっといたから、私は「とっくに嫌われてしまっている」。

 だから友達を作りたいのなら「他人の為と偽った自分のための他人の矯正を止める」しかない。

 でも私が他人と関わる術はまだ、「他人を正そうとすることだけ」。


 他の方法はまだ、身に付けられていない。


 その方法しか知らず、ずっとその方法を続けてきた私は、まだまだ子供で、バカだから。


 それだけを続けていけばいいと勘違いを、続けてきたから。


 でも……凍梨さんは言った。

 「とっくに嫌われている」と。


 だったらもう、開き直れば良い。


 これ以上、嫌われることが無いのだから。


 こっから先はバカ正直に、自分のためと――友達が欲しいからと、正しくなって欲しいのも本当だと、両方とも明かしていけばいい。


「とっくに嫌われているのだから、バカ正直に自分の気持ちを打ち明けて、それで他人も正していけば、それでいい」


 とっくに嫌われているのだから。

 もう自分を変えても仲良くはなれないのだから。


 だから、そのままの自分で……。


 そもそも、ここはたった一年しかいない場所でしかない。

 一年経てば、上辺だけでも慕ってくれる人がいてくれるだろう高校へと行けばいい。

 また、賢い人のいる場所へといけばいい。


 だから、自分らしさをそのままに……バカ正直に、自分のためと打ち明けながら、他人を正していけば、それで良い。


 ……いや違う。

 上から目線なのもダメに違いない。

 それはきっと鼻につく。

 ソレは高校に行っても変わらないことになる。


 正そう、じゃない。

 そんな上から目線は間違いだ。


「お願いしよう、だ」


 これからは、自分のためにと身勝手さを振り回して、バカ正直に自分の気持ちを打ち明けて、正そうとはせずに正しくなって欲しいとお願いして、他人のためだなんて言い分を傘にかけないで、「相手のため」だなんて考えを持って、本当は相手のためになっていないことをしようとするのは止めて、「自分のため」という本音でぶつかって、いこう。


 それでウザがられたって構わない。


 だって自分はもう、とっくに嫌われているのだから。

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