一歩近づくために
陽菜は何度かうなずき、
「なるほどなるほど。 つまりお姉ちゃんがこの間話していた話が合う人っていうのは秀くんのことだったわけか。」
と理解した様子だ。
それにしても似ていない。落ち着いていて美しい柚月さんに比べて、ギャーギャー騒がしいこの陽菜は何なのだ。本当に妹なのか? まぁ悪い奴ではないし先ほどのようにやさしく気遣いができる人間なのだが……
長い間お邪魔しても申し訳ないし、夕飯を作らなければならないのでそろそろ帰ろうと思い、
「それじゃあ、そろそろ帰るね。傘、借りて行ってもいいかな?明日返しに来るよ。 また明日。」
「うん、また明日。」
二人に手を振られ僕は鳴海家を後にする。
家に帰ると姉さんがごはん以外の家事をしてくれていて、明日も雨の予感がする。
さすがに二人の食卓にも慣れたが、やはり少し寂しさを感じるときもある。姉さんは明るいし会話も弾むのだが、それだけでは補うことのできないなんともいえない気持ちがこみ上げてくるときがある。
こんな顔をしていると決まって姉さんは、僕を笑わせてくれる。本当にいい人だよなぁ。
そういえば陽菜の家も父親だけだと聞いたことがある。今度誘って四人で食事でもできないかな……
柚月さんにも会えるし……
思ったら即行動が僕のモットーで、とりあえず姉さんに今日のことと食事会の提案を話してみたところ、ものすごくうれしそうに賛成してくれた。陽菜にはメッセージを送っておこう。
陽菜から間髪入れずに返信が来て、
『おっ、いいねいいねぇ。いつにする?』
『金曜か土曜がいいかなぁ。 陽菜や柚月さんの予定は?』
『私は基本いつでも大丈夫だけど、お姉ちゃんはバイトがあるから…… 土曜日でいい?』
『じゃあ今週の土曜日で。』
翌日、学校に行く前に陽菜の家に寄り、傘を返して一緒に登校することにした。
2日後のの食事が楽しみでならない僕たちは一日中その話で盛り上がっていた。
部活のない日は陽菜は女子の友達と遊ぶことが多く一緒に帰らないので、図書館に寄ることにした。
いつものように背表紙を見ながら物色していると肩を叩かれた。僕はウキウキしながら後ろを振り向いた。やはり。柚月さんだった。
「こんにちは、今日はいいの見つけた?」
「こんにちは、まだですね……よかったらおすすめとか教えてもらえませんか?」
柚月さんはいつの間にか敬語じゃなくなっていて話しやすかった。
「そういえば土曜日楽しみだね!」
「そうですねー。でも僕たちは作る側ですよね……」
ん? これはもしかしてチャンスなんじゃないのか?
「よかったら一緒に買い物に行きませんか? 食事の買い出しやいろいろと。」
「私でよければ喜んで。 土曜日の午前中がいいかな?」
僕はうなずき、心の中でガッツポーズをした。多分表情にも喜びがにじみ出ていただろう。