全然似てないじゃないですか!
今日も帰りは図書館によろうかな。あの人、またいるかな?
そんなことを一日中考えながら授業を受けていると
「月見里、集中しろよー。話聞いてるかー?」
と注意されてしまった。先生こそだらけきった声で授業するのはやめてくれよ。
放課後、荷物をまとめていると声をかけられた。
「秀くん! 部活一緒にいこ!」
「ん? あぁ、そうだね。」
この子は鳴海 陽菜。僕と同じく演劇部の部員だ。
そういえば今日は部活があったな。図書館へはいけないか……
「どうしたの? 早く行こうよ。」
近くにイベントが控えていない時の演劇部ほど暇なものはないと思う。発声練習をしたり、脚本を考えたりするだけである。
メインで脚本を考えるのは僕だが、みんなが少しづつ意見を出し合って一つの作品にするのがうちのスタイルだ。
今日もいつもと変わらず、少し話を考えて、あとはみんなで談笑していた。
「おっ、そろそろ時間だね。じゃあ今日はお開きにしよっか。」
陽菜がそういうとみんなが返事をして片づけを始める。
先輩たちが引退してから部長になった陽菜も、だんだんらしくなってきた気がする。もともとリーダーに向いていたのかもな。
「秀くん、帰ろっか。」
「そうだね。」
「今日も一緒に帰るんですか、お熱いですね。」なんてヤジが聞こえたが「そんなんじゃない。」と適当に流して部室のドアを開ける。
校門を出て一緒に電車に乗り、一緒に降りて駅から歩く。部活ある日はいつもこんな感じだ。
高校に入ってきてから引っ越してきた陽菜とは一年前、入学式で出会った。なんでも親が離婚したとかで、母親の地元に戻ってきたらしい。
家が近くて部活もクラスも同じ。自然と仲良くなったが、いろいろと知らないことが多い気もする。
「なんだか雲行きが怪しくなってきたね、ちょっと早歩きにしようか。」
そういわれた僕は空を見上げた。頬に水滴が当たる。雨が降り始めた。
僕たちは近くで雨宿りをしながら
「あちゃー、降ってきちゃったね。 そろそろ家だし走っちゃおっか!」
「僕はそれでいいけど、陽菜はいいの?」
もちろん!と言わんばかりに親指を立て鞄を頭に乗せる。
「秋の夕立はナメちゃだめだね……」
くしゃみを連発しながら陽菜に入れてもらったココアをすする。
結局本降りになった雨に打たれて肩を震わせていた僕を見て、「ちょっと寄っていきなよ。」と陽菜は家に入れてくれた。
「そういえば陽菜の家に来るのって初めてだよね。」
「そうかもねー、手前の分かれ道でいっつもバイバイしちゃうし。」
ガチャ。と玄関のあいた音がすると
「ただいまー」
と聞き覚えのある声がする。
「お帰り、お姉ちゃん。」
「雨、急に振り出しちゃって。折り畳みのカサ持ってて正解だったよ…… あれ、お客さん?」
リビングに入ってきたその人を見て、驚いた。図書館のあの人だ。
「あ、私の彼氏の月見里 秀くんだよ。 でこっちは私のお姉ちゃんの柚月ね。」
僕は慌てて
「彼氏じゃない! 先日はどうも、改めまして月見里 秀です。」
と挨拶をした
「ビックリした! 陽菜の知り合いだったんですね。 鳴海 柚月です。 よろしく。」
陽菜は困った様子で僕と柚月さんを交互に見て、
「えっ? 知り合い?」
「まぁこの間ね……」