最終回
俺は激しい自己嫌悪に陥る。
噛んだじゃ済まされない、痛すぎるミス。壇上に立って、後悔している僕を笑いたてる声はしかし一つもなかった。先程までの流れが、よく聞いているのだろう。司会の火凛さんも、流石にここまで大胆な告白になるとは思っていなかったのだろう。目を丸くして驚いている。一番驚いているのは僕だが。この間に、僕は壇上から、辺りを見下ろす。日が完全に落ちて暗いが、それでも人の顔を識別出来るぐらいの明るさは、保っている。だから、皆が何も言わない間に、舞を探そうと思ったのだが。
「何処にも……いない……!?」
見つからない。何処にも舞が見つからない。俺は必死で首を動かし、見渡すがやはり何処にも舞がいない。嘘だろ?この和宮 二心一世一代の告白だったんだぜ?それをあんな言葉で締めくくって、しかも聞かれてないとか、笑い話にもならない。恥だ。黒歴史以外の何者でもない。赤面できるレベルじゃない。俺(僕)は、火凛さんに促され、壇上から降りた。
誰も何も言わないのは、僕を気遣ってなのか。僕が、あんな恥をかいたから誰も近寄って来ないのだろうか。僕は、キャンプファイアのそばにいた。そう言えば、キャンプファイアを一緒に過ごした男女は恋人になれる的なお決まりような七不思議の一つがうちの学校にもあった気がする。まだ、炎は灯っていない。最後の一人が告白を終えたとき、つけるそうだ。まぁ、僕には関係のない話だ。
その時、聞き覚えのある声が聞こえてくる。
『和宮……二心!!』
「……!?」
どうして、彼女が壇上に立っているのだろう。どうして、彼女が俺の名を呼んでいるのだろう。
どうして、彼女はその芯の通った瞳で、僕だけを見据えているのだろう。
『二心君、君は悪くない。』
違う、俺がすべて悪いと、そう言いたくなるのを我慢する。
『二心君、貴方のせいではないわ。』
その会話を何故知っているのか舞が知っているのかを教えてくれ。
その会話は、俺と、お前の両親の間だけで交わされた会話のはずだ。お前がその内容を知っているはずがない。どうして、俺の記憶をいじくり返して、トラウマを呼び起こそうとしている。
『そんなに自分のことが許せないかい?』
彼女は、マイクを持ったまま、俺にだけ語りかけている。俺は、彼女の言葉から耳が離せない。そうすることによって、一生後悔する。そんな気がするからだ。
『なら』
今までは思い出せなかった記憶。思い出したくなかった、彼女を傷つけたときの、忌々しい記憶。なくなってしまえば、やり直せるならやり直したい、俺の過ち。けれど、思い出さなければならない。彼女の言葉とあのとき聞いた彼女の父親の言葉が重なる。
『娘を貰ってくれないか?』
『私を貰ってくれないか?』
そして、その言葉を聞いて完全に思い出した。
彼女の傷をつけたから。だから、その責任を取るために、婿に来てくれと言われたっけ。その言葉を聞いたからこそ、俺は僕になった。僕は彼女を遠くから見る。いつものように凛とした空気を醸し出す彼女はどこから見ても、正々堂々としていた。
会場の空気が、僕の返事を待っている気がした。多くの人間が僕に視線を送る。返事なんて最初から決まっている。意趣返しされるとは予想外だったけれど、そんなに堂々と受付してるなんて知らなかったけれど。けれど、僕の答えはたった一つだ。
あのときは、舞の両親には返事をする前に、口先だけで反故にして、都合のいいように忘れていたけど。その時の続きを自分の言葉で続けよう。
「俺に、舞を――刃羽 舞の、全てをください!!」
言い切った。あのとき言えなかった分も全部。パラパラと、拍手がまばらに起こり始める。それは、広がっていき、大きな歓声へと変わる。それは、俺と舞のなかを祝ってくれているものであり、あのストーカー予備軍の舞の親衛隊でさえ、それは例外ではない。彼女が壇上を降りて、俺のもとへと近づいてくる。俺の前まで彼女が来るのと同時に、キャンプファイアが灯る。炎の原始的な明かりに照らされている彼女は、幻想的で、全てが美しく感じる。それはさながら女神のようで――――いや、女神など目ではないほどに美しい彼女を言葉で表現するなど無理なのだ。好きな人を言葉で評価するなど俺には出来ないのだ。
「ふむ。やってみると、意外と恥ずかしいものだな」
「俺は、今。とっても緊張しているよ」
「そうか。やはり二心はその喋り方の方が似合っている。……知っているか?キャンプファイアを一緒に過ごしたら、恋人になれるらしいぞ?」
「知ってる」
俺は彼女の方を恥ずかしすぎて見れない。大勢のまえでどうしてあんな恥ずかしいこと言えたんだろう、俺。思い返すだけで赤面ものだ。
「ふふっ。私を幸せにしてくれよ? 二心」
「こんだけの大勢の前で大見得切ったんだ。後には引けねぇし、引く気もねぇよ」
彼は、彼女の両手をとり、語りかける。そして、彼女の手を引っ張り彼女の体を自分の体に引き寄せる。彼女の唇に、俺の唇を会わせ――
「……はっ!!」
多くの人間の視線を背中に感じ、俺は途中で制止する。キスできなかったその代わり、彼女の体を思いっきり抱き締める。彼女は不満げだったが、なんとか寛容してくれた。
「これからよろしく頼むぞ、私の夫」
「……あぁ、よろしく、俺の奥さん」
俺は、彼女と手を繋ぎながら、キャンプファイアの炎に最後まで揺られながら、二人で星空を眺めていた。
読んでくださり有り難うございます。
一応、これで本編終了……。
有り難うございました。一応、外伝?的な何かを書こうとは思っているので(一応夏休みぐらいまでは書いといた方が……?)もしかしたら、ここに投稿するかもしれません。
これまで、有り難うございました!!




