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生徒会副会長の受難  作者: 紫緑
生徒会副会長の至難
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副長

「はぁ。あれじゃあ僕の出番はないかな。」


目の前で繰り広げられる舞さん対翼街くんの戦いは、一方的なものだった。


「くっそ……!!なんで?なんでお前は俺のことを分かってくれないんだ!?」

「……分かるも何も、君は私の大事な後輩に暴力を振るおうとしただろう?」

「だって、そいつは、そいつは!!俺を風紀委員から追い出した和宮の後輩なんだぞ!?なんで、分かっ てくれないんだ!!」


訳の分からない理論を展開する翼街くん。どうやら、僕に風紀委員から追い出されたことを相当根 に持っているらしい。逆恨みも甚だしいところだけど、 舞さんの行動に一切の手加減がないのが怖 い。ただ、暴力を振るうのではなく、翼街くんの全ての攻撃を見切って、回避する。相手を傷つけ ずに無力化する。それが出来るのは風紀委員の中でも、舞さんぐらいである。圧倒的な実力者だか らこそ出来る技であり、それはつまり副風紀委員長だった、翼街くんですら話にならないほど差が 開いているということに他ならない。


「ふくかいちょーは行かないんすか?」

「僕が行っても邪魔になるし。それに、火に油を注ぐだけだから。」


以外と状況把握出来ていないのか素直に僕に聞いてくる、商村。どうも、何か彼を見て自分に見直 すところでも見つかったのか、ややぼやっとしており、いつものおちゃらけた雰囲気は感じない。 何か、辛いことでもあったのだろうか、その表情からは僅かな苦痛の感情が伺える。……僕には、 どうしようもないな。


そういうのは、もう一人の一年生である、彼女に任せるべきだろう。


「……本当に良かった。」


無愛想で無口な少女から出たその言葉は、その声色を微かに震えており、心の底から、出た言葉だ と思える。しかしながら、生徒会には、火凛さんといい、積本といい、こう感情が分かりにくい人 が多いのだろうか。火凛さんと言えば、あの作戦は実施してくれただろうか。あとで楽しみだ。


「べ、別に心配される程のことじゃないっすよ!」


慌てて出た彼の言葉も普段の余裕綽々といった様子からはかけ離れた言葉で、人を小馬鹿にした感 じがしない。あれも、幼馴染みだから気を許してる証拠なのかな。他人の推察なんてどうでもいい 。舞さんだ。


「俺は、お前のことが好きなんだよ!!」


感情が分かりにくい高ぶったのか、彼はついに自分の胸の奥底にしまっていた気持ちを吐き出す。しかし、舞さんは、その言葉には一切動揺せず、少しも感情を揺さぶられず、冷静に彼の動きに対処する。一方の、翼街くんは動揺しないことに、動揺したのか動きが鈍くなる。


「どうして……、どうして、どうして、どうして!!なんで、俺の恋心に答えてくれない!?」


彼女は、そこで後ろに下がり、彼と距離を取り静止する。翼街くんはそれにつられて動きを止める。否、返事を聞くまでは動かないだろう。舞さんが距離をとったのは、返事をするためなのだろうから。


彼女は、意を決したように頷き、大きく息を吸い込む。そして、告げる――


「――悪いが、君の気持ちには答えられない」


彼女が言った一言が彼の耳に届いた瞬間、彼は膝から崩れ落ちる。あれだけで、彼女のことを諦めるのだろうか。潔いと思う反面、情けないと思う。ああやって、すぐに諦めることが出来るのは、美点であると同時にケッテンでもあると僕は思う。いきすぎなければ、アタックするのは自由だと――僕は思うのだ。


「さてと、終わったみたいだし?僕らは模擬店の屋台に戻ろうか。」

「……あぁ、そうだな二心。」


翼街くんの落ち込みっぷりを見るに、もうなにも出来ないだろうし、処分も軽いものになるだろう。僕は膝から崩れ落ち、地面に手を着いている彼をちょうど到着した他の風紀委員の子に処分などを任せて、模擬店の屋台へと向かった。


――――


――組素高校文化祭三日目――


組素高校の文化祭もいよいよ最終日。一日目、二日目は時間帯が早く切り上げになり終わるが、三日目、つまり最終日だけは、違う。


最終日には、最も盛り上がる終わり――キャンプファイアが用意されているのだ。そして、そこでは、僕の兄が考えた、馬鹿馬鹿しいにも程があるイベントがある。斬新だが、どうして今まで思い浮かばなかったのだろうとい案だ。


ただ、叫ぶだけ。それだけのために運動場に作り上げられた特設ステージを見て、僕は呟く。


「好きな人……か……」


ステージの上の宙に吊るされた看板には、ピンク色の文字で、書かれている――好きな人へと思いを届けろ。と。

読んでくださってありがとうございます。

少し短くなりました……。

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