浮いた噂
組素高校生徒会室にて、俺と火凛は二人で仕事を行っていた。二心はまぁ、舞と一緒にいるし、一年二人組も、何だかんだでいちゃついているようだ。ちっ!!リア充くたばれ!!
「くしゅんっ!!」
「可愛いくしゃみですね、生徒会長。」
「う、うるせぇ!!」
くしゃみをしただけで、火凛にからかわれた。最近、火凛はこういう態度が増えてきたように思う。いや、別にそれが問題な訳じゃない。むしろ、人間に近づいてきたって言うか、喜ばしいことである。生徒会の会計に指名したときは、声に感情もなかったし、あの二心にさえ、心を開くことがなかった。あの二心にも、である。親しみを込めて、二心と呼ばれているかどうかは定かではないが、しかし、組素高校親しみやすさランキングで上位に位置すら心を開かなかった火凛がである。その火凛が、少しでも感情を取り戻したというならば、それは喜ばしいことだ。ちなみに、組素高校親しみやすさランキングの下位には、俺や、舞が位置している。何故だ。俺は親しみやすさMaxの生徒会長のはずなのだが。
「いや、副会長がいますからね。それに、貴方は存在が遠いですからね。それもあるのでしょう」
俺の心中を読んだかのようにスラスラと答える火凛。仕事をしながら、無表情で答えるその姿には、正直何度見ても、驚きを禁じざるおえない。自分で選んどいてなんだが、どれだけ有能なんだよと。まぁ、思ったりもする。そういえば去年も、文化祭の成功が最初の仕事だったんだよなぁ……。今思い返して見れば、前生徒会長以外は無理矢理追い出したようなものだし、根に持たれてなきゃいいけど。いや、でも一年たってるし、そんなことする分けないか。大体、二心には舞もついているのだし、今年も風紀委員が模擬店と見回りをしてくれているはずだ。先生方もやってくれているし、心配することはないよな。平和に終わるのが一番。去年は色々あったが、まぁ今年はないだろう。
そして、二心の言葉を借りるなら、やはりそれは出来事の台詞を立てたに過ぎなかったのだ――
――――
組素高校の文化祭は、全部で三日間である。そして、最終日つまり三日目には、キャンプファイヤーを行う予定である――とはいえ、それは例年の生徒会の催しもののようなもので、そこで告白し、誕生するカップルも多いときく。もっとも、俺自身にそんなことが起こりうることはないと自覚しているのだが。なんと言うか、女子を好きになれないのだ。かといって、男子が好きなわけでもない。言うなれば、興味が湧かないのだ。俺の弟は確かにモテるが、付き合っているのを見たことがない。あいつ曰く、『全員生徒会長狙いだから』らしい。自分を足掛かりにして、俺に近づかれると思ってるのか?などと、俺はそのとき思ったし、今でもその思いは変わらない。それに、あいつが全て本心で言ってたわけでもないことに気付いた。つまり、あいつの心の波長のようなものに合う女子生徒がいなかったのだろう。だってそうだろう。俺に紹介して、フラれたところを優しさにつけこんだら、あいつの顔なら懐柔なんて楽勝だろう。もしかしたら、俺と似たような顔を持っているが故に、俺と同一視されるのを嫌って、やらないのかもしれないが。まぁ、もとよりそんなことしなくても、あいつには心の波長がぴったりのやつがいる。正確にはぴったりと言うか、二心が合わせているところはあるのだろうけど、それでも、二心と並び立った上に、その側に付き添い続けると言うのが、素晴らしい。それに、舞が二心以上に親しくしている人間と言うのを俺は見たことがない。あいつのなかでの人のものさしの下限は人によって代われど、上限だけは二心。それだけは変わることが無いように思えてくる。……愛が重すぎる気がしてきた。それならそれで、かわいそうな愛され過ぎる二心に心の中で合掌。――爆ぜろ、と。
閑話休題。
話がずれた。何故、弟を爆ぜろと俺は言っているのだろう。訳が分からないよ。そんなことよりも、今大事なのは、二日目も中盤、居ない二心の分の仕事も二人でしなければならない。え?商村と、積本?あいつらは外部の仕事に言っているので手伝えないのである(きっと、と言う名のデートのようなもの)。
「全く、これも全部、あいつが翼街をあんな条件をつけてぶっ潰すからだぜ。」
「それは仕方がないのでは無いのですか、生徒会長?副会長だって、それぐらいしか方法がなかったと言うことでしょう。」
「いやーー、それはどうかな……?あのときのあいつは感情的だったからな。つーか、その翼街はどうしたよ?プライドズタズタにされてさぞ辛かったろうに。副会長の職譲ってやっても良かったんじゃねぇか?」
俺は火凛にそう訪ねてみる。最近、確かに翼街のやつを見ない。まぁ、俺的には、別にどうでもいいんだが。あいつからふっかけてきたんだからな。しかも、今代から仲良くなった生徒会と風紀委員の仲を引き裂こうとしたんだから。火凛は渋い顔になって
「それは――無理ですね。あの人では副会長は務まらないでしょう。」
「ほう?それはなんで?」
俺をジト目で眺めながら、彼女は口を開く。
「純粋な能力の問題に、風紀委員長との関係でしょうか。副会長を推薦したのは他ならぬ彼女ですから。」
俺は火凛が想像通りの答えを導き出したことに満足する。やっぱ、舞と繋がってると言うのが、二心のいいところだ。 実際、舞が二心を副会長に推薦していなかったとしても俺はあいつを副会長に選んだだろう。それは、今年の指名からでもわかるだろう?ちなみに、他の委員長は、俺の生徒会に推薦者を送ることができる。だから、舞はその権限を使ったわけだな。
「はぁー。それにしても、二心にも春がねぇ……。いや、あいつはいつか来ることが分かってた。問題は商村だ!あいつ、いつの間に?」
「生徒会長……。彼らはまだそういう関係ではないようですよ?」
「それでも、俺には浮いた噂の一つくらいくれぇぇぇ!!」
「――では、私ではどうですか?」
「……はぁ?」
完全に驚くタイミングを見失った俺は、けれどただ驚くしかなかった。俺を混乱へと陥れた火凛のその顔には、普段は浮かべないような、悪戯っぽい笑みが浮かんでいた。
読んでくださり有り難うございます。
さて、今回の文章を読んで気付いた方もたくさんおられると思いますが。
こ い つ ら、悪 戯 っ ぽ い 笑 み 浮 か べ す ぎ だ ろ。
と、そんな読者様の声が聞こえてくるような気がします。まるで、以心伝心したかのように、行動していますが、文化祭なので、普段は残念な美形の生徒会長にも少し花を持たせてあげようと。……それにしては豪勢な気がしないでもないですが。おーい、火凛さん、君のキャラはそうじゃないよね?などと、自らの責任を他人に押し付けるほど文章が書きにくいのです。
いつになく口数(後書き量?)が多くなってしまいましたが、これも二日連続投稿という、すさまじいオーバーワークのせいです。へ?テスト勉強?なんですかそれ?
というわけで次回、分かりきった伏線は回収されるのか!?




