強制連行
人生とはままならないものである。
などと言えば、例えいった本人が、どれだけ理系であっても文学的少年少女風に見えると思うのは僕だけであろうか。僕だけか。僕だけですね。ふと、そんなことを考えて、けれども考えたことに深い理由などないし特に意味なども考えないし考える必要がない。何故なら、僕は、現実逃避出来ればそれで構わないのだから。だって、現在の僕は。
「~~~♪」
体調が好調で快調な舞さん、いや、舞さまに後ろの襟を握られて絶賛引きずられ中であるからだ。泣いていいですか?駄目?そう、残念。勿論、心に余裕がなければ、脇目もふらず、泣き喚き泣き叫ぶのだけれど、今日から、僕が向かう場所は風紀委員室。前回行ったときは、THE・針のむしろという感じだったけれど、今回は舞さんがいるので少しばかりは和らぐだろう。なお、これはあくまでも僕の想像であり、理想であり、願望であることをここに記しておく。by二心
「は、離して舞さん!!僕は、あそこには向かいたくない!」
先程から僕は、必死の抵抗をしているのに。
「む?副風紀委員長が来ないわけにはいかないだろう?というわけで、却下だ。離すことはできない。」
先程からずっとこの調子である。相手が、生徒会長ならば、暴れるなりなんなりをして、逃げ出すこともやぶさかではないんだけど……。舞さんだからなぁ……。諦めの境地である。そろそろ悟りを開ける。もはや抵抗が形だけのものになってきてしまっているのは気にしない。世の中には気にしたら負けという言葉がある。つまり、気にしなければ最低でも引き分けには持っていけるはず。僕は、それを信じる。だって、本当にそうなんだもん! きっと、針のむしろなんだもの! 絶対、なんだこいつ? みたいな目で見られるの分かりきってるもん! 僕の文句ありげな(実際にはありまくりなんだけど、彼女にはあくまでも『文句ありそう』にしか見えていないと思うのでこう表記した。)態度を受け流し。彼女は、花が咲き乱れるような美しい笑顔を浮かべた。
「ふふっ、まぁ、よいではないか二心。私と一緒に居られるんだから。」
彼女にしては珍しい、そんな僕のことを全く気遣わない、自信満々にして自信過剰なことを言うのは僕としても想定外で、一瞬呆けた顔をしたあと、そのまま呆けた顔を維持してしまう。状況が読み込めないというか。脳が理解していないというか。そのまま、呆けた顔をして、後ろ襟を引き摺られながら、考えること十秒。僕は、彼女のことを、悪大官!?と頭の悪い、昨今ではテレビどころか、記憶にすらわずかしか残っていない、そんなあからさまに悪そうな名前をした人物にしか置き換えることが出来なかった。
――――
「僕が想像していたよりもずっと酷い。」
僕が今いるのは勝手知ったる我らがホームの生徒会室――ではなく、例え舞さんがいたとしても、いや、むしろ居るからこそ完全アウェーになるだろうと予測していた皆様ご存じ、風紀委員室とかいて、僕的に地獄と読む、負の領域である。なんで、死んでもいないのに、地獄に来なければならないんだ。解せない。というか、風紀委員って、生徒たちの風紀を守ることが使命であり、決して、僕を打ち解けさせない、と言うのは活動内容に入っていない気がするんだけど。もしかして、僕だけ特別? 外国では個々の能力を尊重するから特別は良いことだけれど、日本はどちらかと言えば、集団に重きを置くから特別扱いなんて良くないんだよ。ましてや、スペック的にはわりと普通なんだよ、僕。だからさ。皆、僕との距離をもう一歩だけ近付けてくれないかな!?
「距離が離れすぎてて辛い……。」
はい。生徒会副会長にして、何故か副風紀委員長を勤めることになったこの和宮 二心、風紀委員の皆様に全力で、本気で引かれております。このままだと、僕、目から朝飲んだ、ココアが流れてきちゃうよ? いいの? 自分で言うのもなんだけど泣いたら僕、めんどくさいよ……。因みに、僕が今現在、辛うじて泣いていないのは、舞さんだけが僕に構ってくれているからだ。僕と、風紀委員の面々では距離が離れすぎなのだ。心の距離も、実際の距離も。僕は、風紀委員の人のことをほとんど知らない。知っているのは、最近舞さんに頼み込んで風紀委員に入れてもらったらしい、一年生の後輩だけだ。どこかで見たことある子だなーと思ってみていたら、翼街くんと剣道をしたときに審判してくれた、名も知らぬ後輩くんだった。やっぱり、この前の剣道で引かれてるのかなーと思ってたら、僕を見つけたら、犬が尻尾を振り回さんばかりに近寄ってきた。凄い目をキラキラさせていたのを覚えてる。そして、何故か握手を求められた。
「先輩、とてもかっこよかったです!」
商村と同じ一年だと思えないほどすらすらと喋り、俺のことをとても慕ってくれていた。一年に慕われたのは何気に始めてである。商村も積元も僕のことをあんまり労ってくれてない……。勿論、僕よりも仕事量が多いと言うのは理解しているつもりではあるんだけれどね。どうも、最近扱いが生徒会長とにたものになったてきた気がするんだよね……。そういえば、商村って何部なんだろう。以外と知らなかったので、こんど聞いておこうっと。
「まぁ、取り敢えずは、今日の仕事はこれで終わりでいいのかな」
量が多くて困る。これだけの量を翼街くんはやっていたというのなら、尊敬に値する。僕なんて二時間もかかってしまったのだから。途中で舞さんに仕事の一部を投げてしまった。それでも二時間。あのときに、安直な考えから副風紀委員長の座を降りろなんて言った僕の低脳さが伺える。周りの人も、僕が時間をかけすぎたせいか、驚いたような表情をしている。うわっ、なにこいつ仕事おっせ! みたいなこと考えられているに違いない。うわ、泣きそう。もう、泣いてもいいよね僕。頑張ったのに! よし、仕事も終わったし帰るかな。試験も明日に迫っているし。そう考えると、試験数日前の貴重な時間を剣道に使った僕の低脳さが伺える。
「さて、二心仕事が終わったのなら、私の家へ行こう。」
「!?ど、どど、どうして!?」
いきなり舞さんの家に行くことになって、驚く。驚きすぎて、超どもってしまった。恥ずかしい。勿論、私用だと分かっていても、副風紀委員長である僕に風紀委員長である彼女の命令に逆らえる訳もなく。そもそも、逆らう気力すら仕事して切れていたため、僕はあっさりと刃羽家へと連行された。
読んでくださって有り難うございます。
修学旅行行ってたので少し遅れちゃいました。次の投稿は頑張るぞ、と意気込んでおきます。別に二章辺りからネタがなくて気合いいれないと書けないとかそういのではなくて。これは、文章力の向上を目指すぞと言う、戯れ言です。